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序章

   



「…以上だ。今日はこれまで」


 教師の口から本日の終了を告げられると、教室内はそれまでの静寂が嘘のように賑やかになった。帰宅を口にする者、そのままおしゃべりを始める者。静かに話を聞いていた分、開放された学生たちの口は軽くなる。

 そんな級友に混じってラスアも帰り支度を済ませると、友人たちに別れを告げた。


「ラスア」


 教室を出ようとしたところでよく知った声が彼女を呼び止めた。振り返ると級友の男子が笑いながら歩み寄ってくる。

 太陽のように明るい金の髪、髪と同じ色の瞳は力強く輝いている。性格も太陽のように明るく、その笑顔は周囲を惹きつける不思議な魅力を持ち彼は学年を問わず慕われ、教師たちからも気に入られていた。


「もう帰るのか?」

「うん。シェラクは?」

「これ」


 シェラクが右手を伸ばして軽く上下に振った。


「ああ、そういえば校庭を借りてやってるんだっけ?」

「ああ。だけど正直なところサボりたい。俺には性に会ってないんだよなぁ」


 剣を振る仕草を見てラスアが納得すると、シェラクがぼやいた。

 自衛のため武器を携帯するのが一般的なコッズウィーン国では、学校で学生たちに基本的な武器の扱い方を教えている。

 二人が通うウルドット高等学校にも武術の授業はあるが、それでは物足りない学生たちが集まり放課後教師が一緒であることを条件に、自主訓練をしていた。シェラクは彼を気に入った先輩に無理やり引きずり込まれ、断りきれずに苦手な剣を振るっているのだ。

彼が参加しているということでその自主訓練に参加する学生の数は男女問わず倍近く増えた。それだけでなく毎回見物人もいるという。それを聞いた時ラスアは彼の人気振りに思わず呆れてしまった。

そんな人気者であるシェラクとは違いラスアはそれほど目立つほうではない。白銀の髪と髪より少し濃い銀の瞳。まっすぐな髪は腰まであり無造作に一くくりにしている。どちらかといえば美人といえるが、騒がれるほどでもない、どこにでもいるような少女だ。

それに、彼女はいつも授業が終わるとすぐに帰ってしまう。自主練に参加することもなかった。接点と言えば同じクラスだということくらいだ。

 それでも二人が一緒にいる様子はよく目撃されている。授業中や休み時間などともに行動することが多かった。

入学当初にたまたま席が隣になり、馬があったというのがきっかけだ。それ以来二年に進級しても変わらない友人関係を築いていた。


「でも身につけといて悪いものでもないでしょ?嗜みよ、嗜み」

「嗜みであの訓練はないと思うぞ……。下手な剣術の訓練よりよっぽどきつい」

「いいんじゃない?しっかり体に叩き込まれて」

「お前はあれを見たことないからそんな風にいえるんだ。…今度連れてってやるよ。一回見ればそんな風に笑えないぞ」


 恨めしそうに見てくるシェラクを彼女は可笑しそうに笑った。どれほど人気があろうとシェラクも同級生の少年たちと変わらないとラスアは思っている。


「本当?楽しみにしてるっと、まずい、そろそろ行くわ」


ふと見上げた時計の針がが思ったより進んでいてラスアは慌てた。


「ああ、じゃまた明日な」

「ん、また明日」


 軽く手を振って別れを告げるとと、ラスアは急いで教室を出る。

 駆け足で廊下を抜けるラスアの姿はあっという間に小さくなって見えなくなった。




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