第22話 青春の勲章なんていりません。
体育館の半分を使って行うドッジボールは、勝ち抜き戦なので、すぐ負けちゃえばいいんじゃない、と、私は気がついた。
敗戦し悔しがる、え~と、第41期の皆さん、ドンドン床を叩いて悔しがる元総長?さんのそばで直立不動しているおじさん軍団をしら~っと見ながら気がついた。
相手は現役の4組軍団、ドンマイだよ、おじさん軍団。
仲間のおばさんに頭はたかれてるけど。
顔から血を流したままの人をひっぱたくって、41期は女性の方が強いとみた。
しかし、本当に、こんなので熱くなるなんて信じられない、兄なら喜びそうだけど。
そして、次はいよいよ我がチームの出番になった。
何で15人でやるんだろう、10人だったら応援でいられたかもしれないのに。
相手は、おととしの卒業生チーム、緑のTシャツには「疾風怒涛」とある、四字熟語も嫌いになれそうよ、おかげさまで。
ギンギンに燃え上がっている2チームが試合前の整列する、もちろん私を除いて、だけど、その熱さ。
お互い面識があるようで、あの時はよくも、みたいな言いあいがはじまった。
ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ、ぎゃあ、低レベルの言いあいに、ここって小学校?って、思わず体育館の天井を見上げちゃったわ。
さてと、試合がはじまったら、何とか真ん中あたりにいて、適当に負けるように誘導すればいいわね。
私は、私っていうおいしいエサはここですよ、っていうアピールをさり気なく、かつ敵チームには目立つようにやった。
それでカモみっけ、って感じで、私めがけてくるボールを寸前でかわしながら、誰かの背中に隠れるっていうのを繰り返した。
数回に一度は、私の代わりに誰かがボールに当たる。
ここで大事なのは、あまり機敏には動かない事、あれ?いつのまに、くらいが一番いい。
うんうん、いい感じに味方が減っていく、痛そうだけど、ボールの当たる音凄いけど・・・。
残った味方や外野に出た味方チームの皆さんには、いたって害がない、怖がりの女の子です、って感じの雰囲気を醸し出しながら、犠牲者を確実に増やしていく。
オッケー、オッケー、いいんじゃない、うちのチームどんどん減ってる。
後はあまり痛くない感じのボールを見つけて、見つけて・・・・、何で見つからないのよ!。
何でそんなドッジボールに命かけるのよ!当たったらまずいじゃないの、私が。
残りは現在4人になった、向こうはあまり変動がない。
うん、考えなし、と言われてもいいよ、私にこんな単純な事に対する対処方法を求めちゃいけないんだと思う。
私の知ってるのは、陰険な腹の探り合いに、笑顔での嫌味の応酬だもの、あぁ後は経済関係でのパワーゲームもね。
こんな熱い体育系のノリでの権謀術策は無理、そんなものはない!とわかったわ、今さらだけど。
あっ、バカ、おバカですか!何で味方の中で一番体の大きいあなたが、当たっていち抜けしてるのよ!
それでもって、そんな悔しくて雄叫びあげるくらいなら、石にかじりついても、ここに踏みとどまるべきじゃなくて?違う?違わないよね。
その後、どう収拾を心の中でつけたのか、残った男の子の肩を叩いて、「頼んだっ!」って、笑顔を見せながらキラリンとして退場していくけど、笑顔やめてくれない?口から血がすごいことになってるわよ、ひどい顔になってる自覚ある?。
私はこの使えない上級生がいた足元を、血が滴り落ちている足元を見た。
・・・・歯が落ちていた。
残り3人ね、ええ、えぇ、なんだかわからないけど、私に喧嘩を売っているのかしら?
こんなカワイイ私に向かって、手加減しようとしないなんて。
普通、どことな~くわかるものよね、それを、それを!
いいわ!繊細な心をどこかに落として生きてきたあなた方に、小さな頃から闘ってきた私が相手してあげる。
私は敵の陣営をしっかり観察した、逃げながらよ~く観察した。
問題はあいつか。
ピアスじゃらじゃら茶髪の男、あの男が敵の中心だ。