第21話 目くらましって大事よね。
やってまいりました。
バレーボールや卓球など良い汗かいて、ついでに子供達や先生方とおいしいカレーを食べましょう、って保護者との懇親会デー。
ほら、ここワルばっかの学校でしょ、まさか保護者の皆さんがやってくるとは思わなかったのよ。
普通の高校でさえこういう企画やって保護者がくると思う?思わないよね。
前いた名だたる名門学園なら、いろいろな企画に保護者が、ビジネスもかねて集まったものだけど、まさかの悪名高きこの高校に、これだけ保護者が集まるとは思ってもみなかった。
何でもこの高校の伝統的な行事らしく、さすがというか、この学校の卒業生も多いという父兄の皆さんのテンション半端ないんですけど。
私はただその無駄な熱気に、あいた口がふさがらないんですけど。
ドッジボールで血が、本当に血が飛び散るなんて思わなかったわよ。
楽そうだと思って、参加競技にドッジボール選んだんだけどね、私。
チーム決めの段階から熱かった、そりゃあもう、やけどしそうなくらい。
この学校をしきったあと卒業された方たちは、それぞれ一目でわかるように、Tシャツの色をそろえて参加してるの、いわゆるチームTシャツってやつね。
その背中には〇〇期総長誰々と一番上に大きく名前が入っていて、その下にずらずらと数十人の名前がプリントされた、それはそれは派手なTシャツに身を包み、どこの体育系のノリだというくらい、どこどこには負けんじゃねーぞー!の大合唱があちこちで繰り広げられているの。
中にはどう見ても、あなた達保護者の年齢じゃないよね、のグループも大量にいたりする。
その青年と言っていい人達は、同じようにお揃いのTシャツに身を揃えたいわゆる卒業生らしい。
何でもこの行事は卒業生にとっても外せないらしいの、意味わかんない。
で、肝心の生徒といえば、縦割りのクラス対抗でそれぞれが球技に参加する。
恥ずかしい事に、やはりTシャツはお揃いの色で、背中には大きく1組と書かれ、スローガンが大きくプリントされているやつ。
「黒龍乱舞」とか・・・・。
ねぇ、これって泣いていいよね、どうよ!って感じに誇らしくするクラスメートには悪いけど、無理、私の心がこれは無理って泣いてる。
ピンクのTシャツ、それもペラペラの、なの。
うん、せめて可愛らしいピンクならいいけど、何かね、色落ちしたピンクって感じの変な色、なのに「黒龍乱舞」・・・・。
どよーんとした気分で、体育館にいった私を誰も責められないと思う。
もちろんさぼれるならさぼるわよ、こんな行事、間違いなく。
だけどね、この行事、生徒全員参加なの、参加しなけりゃ体育の単位なし、だって。
1年間真面目に体育出ても、この行事でない時点でアウト。
さすが、わけわかんない高校なだけあるよね。
仕方なくドッジボール参加の為体育館に行った私が見たのは、変にテンションが高い皆さまの姿。
ありえない。
何でドッジボールで血が飛び散るの?
腕が変に曲がっちゃうの?
何で雄叫び?
無理、無理、こんなのありえないよ。
普通さ、え~い、ってボール投げて、きゃっ、当たっちゃったぁ、そんなもんでしょ、ドッジボールっなんて、女子的に。
それが決死の覚悟でやるって何?
男も女も大人も子供も関係ないって何?
皆さんの背後にゴゴゴォ~って見えない炎が噴き出してます。
私、逃げていいですか?