第2話 笑える話し
私は御稽古事の帰りなので、綺麗な若草色の着物に黒の地の帯姿だった。
運転手である吉住さんは、未だ入退院をする母を思い続ける純な人で、幼い時から祖母にねちねちやられていた私のシンパでもある。
私の気配を全身で伺う吉住さんは、私の指示を今か今かと待っている。
私はその期待に応えるべく、電話で指示された住所に向かうよういった。
途中、祖母に電話をかける吉住さんの声がした。
「お嬢様は稽古の居残りをするよう師範から、お声がかかりましたようで。はい、飛んでもございません。何か粗相があってとかいうものではなくて、興ののられた師範直々のお声掛りのようでして。はい、終わり次第に。」
そう電話のやりとりが聞こえる。
可哀そうなおばあ様。
今や屋敷中、おばあ様付きの人間以外、皆私の味方よ。
それにしても、いつも油断するなと言っているのに、うちの兄はどちらかというと一度懐に入れてしまえば甘い所がある。
私がもし兄のチームを潰そうと思えば、何度でも潰せたくらいには、だ。
兄は大物なのか、ただの間抜けなのか、かの織田信長も真っ青なんじゃなかろうか。
吉住さんが、もう少しでそのクラブにつくと声をかけてきた。
さてさて、しょうがない兄を持った妹の宿命とあきらめよう。
そう言えば、お気に入りのデザイナーの新しいワンピースがもうじき発売になる。
それで手を打とうと、私はそのクラブのドアを黒服の従業員に開けてもらいながら思った。