第14話 新しい学校
お久しぶりです。
三島桜として、新しい高校に転校することになった。
あの、といえる幼稚舎から大学までの、犬で言えば血統書つきばかりの、あの学園から、この三島が経営している高校へと転校する。
こちらはこちらで、いわゆる「ワル」ばかりの、いずれ見込みがあるものは、そのまま三島にトレードされるという濃い噂あふれる高校に。
なんでって?
あの自称イトコの三島慎二のさしがねだ。
猫がばれようが、爪の先ほど気にしない私に、目ではおもしろそうに笑いつつ、口調はあくまで申し訳ない風に奴は言った。
「うちの経営する高校に移ってもらう事になりました。本当に申し訳ないんだが、叔父もはじめて一緒に暮らすカワイイ義娘に、ぜひ自分が経営する学校にいってほしいそうですよ。」
「なあに、三島の義娘として、桜さんには堂々と通ってもらえるように手配は完璧です。若干ヤンチャが多い高校ですが、安心して過ごして下さい。」
そう、おもしろそうな気配も隠さず、それも来週の頭には転校するという。
最近ゆるゆるの私とて、私を何かの道具に使おうとみえみえなものに、簡単にうなずくわけがない。
ここは、しっかり面倒が一番嫌いだと言ってやらねば、そう思ったのに、その先手を打たれた。
「ああ、あちらの学園の手続きは先ほど全て終わりました。このまま中退でも別にいいですけど、私はこうみえて、本人の自由な意志を尊重するタイプなんです。ええ、本当に。」
そう言ってにっこりとこちらを見て笑う。
私は心の中で、罵詈雑言を言えるだけ言い、それを奴を見るまなざしに、きちんとそれをわかるように乗せて、口から出る言葉では、ゆるく微笑みながら、
「わたくし、ずっと女子校でしたのよ。共学のふ・つ・う・の高校になんて不安ですわ。」
普通をちゃんと強調して言ってるそれを遮り奴は、さも当たり前のように言った。
「魑魅魍魎の跋扈する所ではなく、本当に普通のひ・と・さ・ま・が通う所です。良かったですね。一安心です。」
私がそれに答える前に、奴は秘書と呼ばれる名前が絶対に会わない、そのまんま暴力の権化のような男に呼ばれて、こちらの正式な返事もきかずにいこうとする。
私が嫌いなものは、沢山ある。
中でも、都合よくつかわれるなんて大嫌い。
兄は自分でここを選び、力を選びここにきた。
私は?
私は兄の対であり、枷だ。
だからと言って私をいいように動かすなんてありえない。
私にちょっかいかけるなと、あれほど心の中で願っていたはずが、まるで冬眠から覚めたケモノのように、身のうちに駆け巡る凶暴なそれに、ニンマリと笑う自分を自覚した。
一度強く目をつぶって、自分の立ち位置を冷静に確認する。
自分のものは欠片でも動かすのは、兄以外許さない。
ひっそりとエモノを狙うケモノは、自分の存在をどうすればいい?
その時まで綺麗に隠れていればいい、簡単な答えだ。