12話 安請け合いだけど大丈夫!
「……で、三刻の内に最下層まで地図を作ったと」
「いやー、何か、カイリが暴れちゃって」
「んな訳ねぇだろ! 絶対にお前だよな!」
おお……ブルドーザー二人目、いや、二台目か。
間近で唾を飛ばされるのは嬉しくないんだけど。それでも話を区切るのは良くないよな。一先ずは話の流れを折らないように小声で綺麗にしておくか。俺は兎も角としてクロムは……うん、割と潔癖気味だもんね。
「洗浄……いえいえ、俺ではありませんよ」
「……くっそ、煽ってんのかよ!」
「いえ、汚れが酷いままでは話せませんので」
んだよ、小声だったのに聞こえてんのかよ。
アレだ、ブルドーザー兼聴音機なのかもしれない。耳に通る声は全て聞こえてしまうとなれば無詠唱で魔法を行使する方がいいか。さすがは聴音機、この俺の手を煩わせるとは褒めてやるしか無いようだなぁ。
「……悪ぃが俺様は唾を飛ばされるのが大嫌いなんだ。それに尊き主様と対等に話せるだけ御の字なんだがな。普通なら俺様だけを残して自由に話なんて出来やしねぇよ」
「かもしれねぇがな……はぁ、いい。詳しく聞いても勇者は何も変わらねぇ。んで、こんな大層なものを叩き付けてきて何を求めるや。前に提示した報酬では」
「え、要らないですよ。俺が好きに出来る代わりに対価は払う。最初から言っているじゃないですか」
別にダンジョンマップとか価値無いしなぁ。
ハッキリ言えば、こんなものは俺が入るだけで簡単に作れるものだ。ステータスに関係しない部分に関してなら幾らでもやれる事があるし。ってか、バーサーカー四人の時点で支援出来る存在がいないと駄目だろ。連れ回された甲斐が生きているね! うるせぇよ!
「……んで、二人から見てダンジョンランクはどれくらいだ」
「俺様に聞くな。そういうのは苦手なんだよ」
「なら、そうですね……一から六までがC級上位相当、七から十五までがA級相当……十六から二十まではS級上位は必須かと思います。ハッキリ言ってダンジョンとしての価値は薄いと思いますよ」
「ハッキリ言い過ぎだが……忖度がねぇ方が考えやすいか。現に攻略した奴等が目の前にいるんだからな」
嘘をついて人が死んでも責任は取れないからね。
なら、そんな事が起こる前に対処すればいい。そうじゃないと初手からダンジョンマップを見せる必要も無いだろ。アレは完全踏破したという事実と交渉材料の一つとして見せたに過ぎない。最初から冒険者ギルド側に価値があるものだと思って見せてはいないからね。そう、価値を感じるのはどちらかというと……俺達の方だ。
「……アレ、俺にくれませんか」
「悪くない話だが……いや、何かあるのか」
「俺が新しいダンジョンを用意します。ランクとしてはD級が平均、A級上位で攻略出来る程度……場所は街の中心とかはどうですか。多くの人間が行き交えば成長するともなれば価値は大きく跳ね上がるでしょう」
要は商品価値の高い観光名所が欲しいのだろう。
なら、攻略出来る人間が限られたダンジョンよりも、利便性の高いものがあった方が食いつきやすい。特に冒険者や商人が潤いやすいように、となると弱い冒険者でも腕試しに行ける空間の方が良いだろう。
「お前……いいや、聞かねぇ。でも、本当にそんな事をしていいんだな。俺達は何も返せやしねぇからな」
「俺の友人らしくないですね。そういう時は馬鹿みたいに大声で笑うべきだと思いますよ。その上で交渉に励むべきです。だって……俺が何も望まない事は理解しているでしょう」
「……なら、そうさせてもらおうか。クロム殿も同じく許してくれるな」
「ああ、それが主様の願いだからな」
クロムに聞くのは無意味なんだよなぁ。
だって、イヴリンを除いた三人は俺がしたいという事には全肯定を通す。許さないのは戦闘関係か女性関係くらいだ。前者は兎も角として後者は言われる筋合いも無いというのにさ。人権侵害反対! この哀れな主様に権利を! 百人の俺でプラカードでも抱えてやろうか、コノヤロウ!
「頼む、どうか、この街に……加護を失った街に力を貸してくれ。もう、とっくに……尽きかけているんだ」
「ええ、その点は……俺に任せろよ」
「分かった。その内、詳細は出す。結果は勇者達によってもたらされた恩恵だとでもしておけば大概の奴等は黙るだろう」
と、冗談は言っていられなさそうだな。
まぁ……そこら辺も薄々と感じていた事はあったからどうでもいいんだけどさ。どこまで意識して言ったのかは知らないけど、今の言葉は俺がある程度は自由に動いても文句は言われないと言質を取ったようなものだ。取るのならユッコからの方が嬉しかったのに……ああ、ユッコと結婚したい……!
「俺様としては主様の名声の方が欲しいがな」
「クロム、何度も言っているけど俺には過ぎたる事だよ。この世界に俺が求めるのは平和な世界、それ以上の何かがあるのならば幸福な空間でしかないよ。名声なんて……ただの足枷だ」
「だそうだ。悪ぃが俺はアランのダチだからな。勇者の一味だとしても許せねぇ事がある。それ以上を求めるのなら俺も……やれるからな」
「それはそれで面白そうだな。とはいえ、それを主様が求めていない事は分かる。その高揚は何時かの機会に取っておこうじゃねぇか。鈍っちまったら先が見えるぞ、ジジイ」
はぁ……俺以外が相手だと口が悪くなるな。
こういうところは直せと何度も言ったというのに意識すらしていないのかもしれない。別に罰を与える程では無いにしても小一時間は説教をしてやった方がいいか。一先ずは今ある一触即発の空気感くらいは変えてやらないと。
「いっつぅ……!?」
「俺の友達を馬鹿にするな。さすがに許せる事と許せない事があるぞ。ジジイがどれだけ俺達に尽力してくれたと思っているんだ」
「あ、アラン……って! 誰がジジイだ!」
いやいや、アンタは明らかジジイだろうがい。
事実を言ったのに怒るなんておかしな話だ。怒るべきなのは周りの事を考えずに喧嘩を吹っ掛けたという事実だけ。それに……今の言葉でようやくアンタらしい顔になったからな。俺は今の顔を見て友達になろうと思ったんだぜ。
「やっぱり、アンタにはその顔が似合っているよ」
「……ちっ、ガキの癖にガキらしくねぇな」
「まぁな、ガキのまんまではいられねぇだろ。こんなクソみたいな世界で生きるためには、な」
そう……俺は、知っているんだ。
世界はただ生きる人達に厳しいものだって。だから、俺達は自分の中の守らなければいけないモノのために生きている。仮にそれが守れない程に大きなモノであろうとも生きている限りは逃げられないんだ。やらないで死ぬよりは、やり切って死んだ方が少しは自分の人生も受け入れやすいだろ。
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