あくやく幼稚園の可愛い天使たちの日常観察
お読みいただきありがとうございます。 今回は小ネタです。
ここは『ものがたりの国』にある、なろう国立あくやく幼稚園。
そこでは、日々明日の悪役令嬢、令息達を養成するために様々なカリキュラムが施される!
だが、ちょっと待って欲しい、さすがに幼稚園児に悪い影響を与えるような教育をするのは道徳的に許されないとお考えではないだろうか?
確かにその通りである。
実はこの世界から、各世界にある派遣先の物語のストーリーにそって、その期間だけ疑似人格がインストールされるので、個人の記憶や体には一切問題ないように保護されるのだ。
なので戻ってきた後は、自分がどんな役柄だったのかは覚えてはいないのである。
だが、インストールされた疑似人格達がその役柄をうまく演じるためには普段からの努力が必要なのだ、令嬢が突然高笑いで
「おーーーっほっほっほっ」
などとしようものなら咳き込んで喉を傷めること間違いなしだし
「お前を愛することなどない」
とスビシッと指さす時だって美しい姿勢じゃないと「映え」ないからだ。
そこで登場するのがこの「あくやく幼稚園」である、今は引退したOB、OGの先生達による細やかな演技指導を幼少時からみっちりと学べるのだ。
そんな幼稚園の、ちょっとした毎日を覗いてみるとしよう……。
〇悪役令息科、ばらぐみのとある一日〇
「はーい、みなさーん! 今日はこのうさぎさんのヌイグルミに向かってお芝居をしてもらいまーす! 最初にやりたいひとー?」
先生の言葉に今日もカワイイ子供たちが一斉に「はーい!やりたーい」「ぼくもーー」と元気にお返事をする。
「でも、今日はすこーしむずかしいお芝居ですよー? お題はー 『おまえなんてだいきらいだー!』です」
「え……うさぎさんにキライっていわなきゃだめなの?」
「いやだー」
「かわいそう……」
「うん、うん。みんなうさぎさん大好きだもんね。 大丈夫!これはただのお芝居だから、うさぎさんがみんなのことを嫌いになんてならないよー! ねーうさぎさん?」
『ウン、ミンナダイスキダモン! ボクデ、イッパイレンシュウシテー』
「ほら! うさぎさんもこう言ってるから大丈夫だよ!」
OBの先生にしては大根芝居ではあるが、カワイイ生徒を励ますためにうさぎさんを演じる先生。
「えーでもー……」
あまり乗り気ではない子供たちの中で
「ぼくがやります!」
そう名乗り出たのは、一昔前にトップオブトップと言われた悪役令嬢役と悪役令息役が、引退後に大恋愛の末生まれた生粋の悪役令息候補!
アークくん5歳であった。
「アークくん、だいじょうぶ?がんばれる?」
「うん!ぼくもおとーさんみたいにかっこいい『あくやくれーそく』になるからやる!」
闘志を燃やす五歳児のかわいさに内心もだえつつ先生は
「……よし、ではアークくんやってみようか!」
と、教室の真ん中に置いた椅子にうさぎさんを座らせる。
アーク君は普段の練習の成果を発揮するように、子供とは思えないような優雅な動きで歩み寄りながら
うさぎさんを指さし、イザ台詞を……
「…………………。」
言えなかった……その目にみるみる涙があふれて、声も出さずにポロポロと涙をこぼす……。
「わぁぁぁぁぁっ! はいおわり――っ! アーク君よく頑張ったねぇ!偉かったよぉぉぉ」
そう叫びながらアーク君を抱きしめて背中をポンポンながら、通りすがりに掴んだうさぎさんを抱っこさせて
「アーククン、スゴイ!ヨクガンバッテ、エライネー」
とうさぎさんも褒めたたえる。
「ちゃんといえなかったぁ……」
ぐすぐすと泣きながら先生に訴えるアーク君。
「頑張ってお芝居しようとしただけでエライ! ねーみんなそう思うよねー」
「うん、ぼくもできなかったもん」
「アークくん、てをあげたからすごいっておもったよ!」
とみんなが元気づけようと声をかける。
「ほんと……?」
「うん、うん! じゃあ今日はお芝居のセリフの発声練習をうさぎさんとみんなでやろうか!」
「「「「はーーい」」」」
「とっても良いお返事でした!じゃあうさぎさんと発声練習だよー!せーの!『おまえなんてだいきらいだー』」
「「「「おまえなんてだいきらいだー」」」
「よくできました! はなまるあげちゃいます!」
両手で大きく〇を描いた先生を見て
「わーいやったーー!」
と喜びはしゃぐ子供たち、アークくんもさっきの涙はどこへやら、満面の笑みでだっこしたうさぎさんと
みんなで飛び跳ねてキャッキャとはしゃぐのでありました。
「うちの天使たちマジかわいい!」
その様子を見て先生もご満悦、次はうさぎさんじゃなくてゴツくて可愛くないやつにしようと思いました。
おしまい
次に持って来た、いかついゴーレムもかっこいいーーーと子供たちに大人気になりましたとさ。
※この世界当然ひーろー幼稚舎も存在します。
・連載が終わって一休みしてたのにネタが頭にこびりついて離れなかったので、特急仕上げです。




