通じない
好きだよ
幼馴染にそう告白したのは、中学二年生のとき。
しかし、マヌケな幼馴染はオレの告白を普通にスルーしてきやがった。
オレの部屋で、オレの好きな音楽を流して、いいムードで実来に告白したのに…
手汗かいて、頑張った
「好きだよ」
の一言がやっと言えたのに…
実来ってば…
「わかるー、けしごむパスタってバンドわたしも好きー」
って返してきやがったんです。
「あー…実来も好きなんだ。ライブとか行きたいな」
「それなー、行きたい‼︎」
「じゃ、行きな?」
「え、一緒に行こうよ。」
「ヤダね」
「ケチー」
実来は、むくれた。
いやいや、そもそも告白してんのにスルーされたオレの方が心がむくれてんだかんな?
言わないけどさ…
そのあとも、告白したんですよ。
スルーされた五分後くらいに。
「好きなんだ」
って。
そしたら、
「あー、唐揚げね。わたしも好き〜。今日、理玖夜の家唐揚げだね。めっちゃいいにおいが台所からするー」
って言い出してさ…
実来が食いしん坊なのは、昔からだけどさ…
今のは、気づけよって思いません?
むしろわざとはぐらかしてんのかな?って感じるのは、オレだけ?
ならば、このまま抱きしめてみたらわかるかな?って、抱きしめようとしたら
「わたしもお腹すいたから、かーえろっと」
っていきなり立ち上がるもんだから、オレはすっ転んだよね。
で、実来に
「ギャハハ、なにしてんのー?足痺れたんだぁ?ギャハハ」
って大笑いされた。
くっそ‼︎
絶対リベンジしてやるってことで、数年後…
高校生になったオレたちは、一緒に実来とオレの部屋で映画をみていたんです。
そこで、オレはこの二人っきりのときに
「実来、ずっとオレのそばにいてほしい」
って、言ってみた。
すると実来も
「うん、わかる。じゃ、行こう」
って、手をひかれた。
え?
実来は、なにを言ってんの?
「いや、どこいくんだよ」
「トイレに決まってんじゃん」
…
あー…オレたちは、今ホラーをみていたことを忘れていた。
ずっと一緒にって…こわいからトイレ一緒に行こうじゃないんだよ…
タイミングを間違えました。
仕方なくトイレに行き、無事に映画鑑賞も終わった。
「あー、怖かったけど面白かったね」
「うん…そうだな」
「ね、それよりさ!この前わたし、朝通学の満員電車で、イケメンに助けられて壁どどんされて、がっちり両サイド守られて、そのまま事故キスよ?いや、あれは事故でなく意図的な気もする…でね、もういきなりの展開すぎてヤバくない?」
壁どどん?両サイド守られ…ってさ⁉︎
え、違う‼︎今は、そこじゃない‼︎
実来って、チャリ通だよね?
電車乗らんやんって…
そこじゃないっ‼︎
キス⁉︎
キスだと‼︎
「はあ?何してんの⁉︎」
「え、キス」
‼︎
ズドーン‼︎ばコーン‼︎ドスーン‼︎
脳内が噴火した。
「それって…助けたフリした悪魔じゃん」
「いや、天使でしょ?満員電車から守ってくれたんだよ?」
「だからって、いきなりキスはないだろ」
「まあまあ、先越されたからってそう怒りなさんなって」
「いや、そいつぶん殴ってやるよ」
「なぜ?」
「だって、初対面でキスとかありえねーって!」
「イケメンだから許す」
…
イケメンって、最高やんけ。
「てかさ、そもそも夢だし」
「は?それを先に言えバカ」
「バ… あー、すみません。先生」
「いや、オレは先生じゃない」
「あ、一般人すみません」
…
一般人…
「でもさあ、前髪が目にかかるあの横顔ってば、最高じゃない⁉︎イケメン現れないかなぁ。夢かける夢イコールゴール♡」
…
おいおい
オレも前髪、目にかかるけど?
こいつ、絶対オレのこと眼中にねーな。
告白しなくてよかった。
てか、したけどスルーでよかったー。
それにしても、実来は完全にまったくオレに興味がないことがわかった。
なぜだろう?
オレって、実はかなりモテるんです。
いや、てか…ちまたではイケメンって騒がれてるけど?
なぜオレになびかない?
前髪もそこそこ長いから、いけてるはずなのに…
「あ、そういえば理玖夜この前学校で告白されてたよね。」
「あー、うん。断ったけど」
「なんで?もったいない」
…
もったいないって…
そりゃ、目の前にいらっしゃるあなたが好きだからに決まってんでしょ…
でも、言わない。
「それより、自分だってこの前デート誘われてたじゃん」
「えっ?だれに?」
「田谷に、今度映画行かない?って言われてたでしょ。」
「あ、そうなんだ?あれってそういう誘いなんだ?でもあの映画好きじゃないからねー」
…
好きな映画なら、デートするんだ?
てか、アプローチしてくれてんの気づけよ…
実来は、昔からそういうの鈍感だからな…
この鈍感おバカは、どう攻略すればいいのやら…
「あ、実来のみたい映画今度やるよ?来週行く?」
「行くー」
…
デートは、簡単にクリア。
しかし、実来にとったら…ただの映画鑑賞会なんだよなぁ。
あっという間に来週がやってきた。
来週が来襲…
…
本日は、実来とデート〜ではなく、映画鑑賞会。
…
でも、それでもいい。
実来と一緒ならそれでよし‼︎
「支度できたぁ?」
「おう」
⁉︎
「えっ…かわ…」
「ん?なに?」
「あの…いつもと違う雰囲気っていうか…」
「あ、このワンピかわいいでしょ?もしデートするならこのワンピ着て行こっかなってね!予行練習」
…
オレで練習かよ…
「あー、そうなんだ。コーヒーでもこぼしてやろうかな」
「は?やなヤツじゃん。ならわたしは、コーンスープぶちまけてやる」
…
「なんでコーンスープ?」
「好きだから♡」
ドキッ‼︎
おいおい‼︎
いきなり笑顔で好きだからとかさ…
やめろしっ‼︎
「オレも好き」
あごくいして言ってやった。
すると実来は、至近距離で吹き出した。
「ブッ‼︎わたしコーンじゃないからっ‼︎そんな好き宣言いらな〜い」
って笑い転げた。
だれがコーンの粒に告白すんだよ…
「おいコラ、笑ってねーで行くぞ。コーンつぶつぶが」
「だれが粒よ‼︎失礼な」
「お前だ」
「お前いうなし。せめてキサマにして」
「じゃ、行くぞ。粒キサマ」
「変な名前ー」
「自業自得ー」
こんなデートの始まり…のはずじゃなかったのに…
ま、いいか。
どうせ、デートじゃないし。
…
続く。