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しっかりした男ほど、女としての価値を求めていない


 アマゾナイトノベルズ様より2026年2月3日配信開始!

 『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』 第2巻!


 ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!



 結婚の話が現実味を帯び始めた頃、私はある違和感を覚え始めていた。


 ルーカス・グレイソンは、私にまったく触れようとしなかった。


 デートという名目で会っても、エスコートは合理的で、会話は必要最低限。


 レストランの選択も、席の配置も、すべてが「効率」で組まれている。


 不快ではない。


 むしろ洗練されている。


 だが、どこにも「男としての熱」がない。


 最初は文化の違いだと思おうとした。


 外国人だし、価値観も違うのだろう、と。


 だが、ある日どうしても聞かずにはいられなくなった。


 ホテルのラウンジで向かい合って座っていたとき、私はカップを持つ手を少しだけ強く握りしめて口を開いた。


「……私のこと、どう思ってるの?」


 我ながら、女々しい聞き方だと思った。


 でも、この先を決める前に確認しておきたかった。


 ルーカスは一瞬だけ私を見て、それから視線をテーブルに落とした。


 考える素振りすらなく、淡々と答えた。


「誤解があるなら、正しておこう」


 その前置きだけで、胸がざわついた。


「僕は、君を女性として評価していない」


 頭が、真っ白になった。


「……どういう、意味?」


 声が震えないようにするだけで精一杯だった。


「言葉どおりだ。君の外見や愛嬌、性的魅力に価値を見出していないという意味だ」


 残酷なほど、はっきりと。


 怒りも、蔑みもない。


 ただ事実を述べるだけの声。


「僕が求めているのは子どもだ。正確には、君の浮遊能力が遺伝する可能性だ」


 予想していなかったわけじゃない。


 むしろ、薄々わかっていた。


 それでも、実際に言葉として突きつけられると、こうも重いのか。


「……じゃあ、私と結婚したいと言ったのは?」


「法的な枠組みが必要なだけだ。社会的な安定と、契約の履行のために。それと、結婚したいではなく、結婚すると言ったんだ」


 私は笑おうとして、失敗した。


「私って……ただの、器ってこと?」


「表現が感情的すぎるが、概ね正しい」


 その瞬間、胸の奥で何かが音を立てて崩れた。


 産む機械。


 ネットで投げつけられたあの言葉が、頭の中で反響する。


 違うと思いたかった。


 少なくとも、ここでは。


 金で選ばれてもいい。


 条件で測られてもいい。


 でも――女として完全に不要だと言われるのは、想定していなかった。


「……私、魅力ないってこと?」


 子どもみたいな質問だと、自分でも思った。


 でも、口が勝手に動いていた。


 ルーカスは少しだけ首を傾げた。


「魅力という概念自体が、僕には重要ではない」


 そして決定的な一言を放った。


「しっかりした男ほど女に“女としての価値”を求めないのは、君ももうわかっているはずじゃないのか」


 言い返せなかった。


 彼の言葉には、一貫した論理があった。


 感情で動かない。


 幻想に期待しない。


 リスクとリターンだけを見る。


 その結果として、私は――


 子どもを産むための、最適な選択肢。


 それだけだった。


 ふと、過去に出会ってきた男たちの顔が浮かぶ。


 優しくて、口説いてきて、でも責任からは逃げていった男。


 条件を並べて、値踏みして、最後は私を「ヤバい女」扱いした男。


 そして今、目の前にいる男は違う。


 逃げない。誤魔化さない。


 ただ、最初から私を女として見ていない。


 ……皮肉だ。


 一番まともで、一番信用できる男が私を一切求めていない。


「……じゃあ、私が老けても?」


「問題ない」


「太っても?」


「支障はない」


「私が誰にも求められない女でも?」


「むしろ、そのほうが都合がいい」


 その言葉が刃のように胸に刺さった。


 私は、椅子に深く腰を沈めた。


 これが現実だ。


 幻想を捨て、条件を積み上げ、ようやく辿り着いた“最適解”。


 そこに、恋も、欲情も、女としての肯定も存在しない。


 それでも――。


 私は立ち上がらなかった。


 怒って帰ることも、涙を見せることもできなかった。


 なぜなら、彼の言うことがあまりにも正しかったから。


 私はもう、誰かに女として大切にされる立場ではない。


 価値があるのは、能力と条件だけ。


 それを受け入れたからこそ、ここまで来たのだ。


 私は、静かに頷いた。


「……わかった」


 その返事を聞いたルーカスは、初めてわずかに満足そうな表情を見せた。


「理解が早くて助かる」


 その瞬間、私は悟った。


 私はもう、女ではない。


 選ばせる条件でもなく、愛される存在でもない。


 ただ、目的のために使われる存在。


 それでも前に進むと決めたのは、ほかでもない私自身だった。


――これが大人の選択なのだと、自分に言い聞かせながら。



 お読みいただきありがとうございます。


『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』 第2巻!

 2026年2月3日 アマゾナイトノベルズさま より配信開始!


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 配信日:2026年1月6日
 アマゾナイトノベルズ様より



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