表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/38

産む機械女


 アマゾナイトノベルズ様より2026年2月3日配信開始!

 『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』 第2巻!


 ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!



 最初にその言葉を目にしたとき、意味が理解できなかった。


『結局あいつ、産む機械としての価値しかないじゃん』

『しかも保ってあと数年』


 一瞬、誰のことかわからず、続く投稿を読んでようやく自分だと気づいた。


『金で男を選んで、子どもを商品みたいに扱って』

『浮けるだけの産む機械』


 ……産む、機械。


 私はスマホを持つ手が震え、画面を伏せた。


 胸の奥がぎゅっと締めつけられ、息が詰まる。


 言い返したい。


 否定したい。


 そんな言葉で片づけられるほど、私は単純じゃない。


 なのに、頭の中で反論を組み立てようとすると何も出てこなかった。


 代わりに浮かんだのは自分がこれまで書いてきた条件文だった。


『親権は不要』

『金銭的支援が前提』

『能力の価値を理解していること』


 ……言葉だけ切り取れば、たしかに。


 私はベッドに腰を下ろし、スマホを胸に押し当てた。


 涙が出そうになるのを必死で堪える。


 違う。


 私はただ生き残ろうとしているだけだ。


 浮遊能力を得て、注目され、持ち上げられて、落とされて、叩かれて。


 もう普通の婚活には戻れない。


 戻ったところで誰も手を差し伸べてくれない。


 それなら自分の武器を最大限に使って何が悪い。


――私は、私の人生を選んでいるだけ。


 そう思おうとした瞬間、また別の投稿が目に入った。


『本人は主体的なつもりなんだろうけど、完全に足元見られてるよね』

『可哀想だけど、同情はできない』


 可哀想。


 その言葉が妙に刺さった。


 怒りよりも先に情けなさが込み上げてくる。


 私はスマホを放り投げ、膝を抱えた。


 部屋は静かで、時計の音だけがやけに大きい。


「……なんで、こんなことに……」


 誰に向けたともわからない呟きが虚しく空気に溶けた。


 泣いたところで何も変わらない。


 慰めてくれる人もいない。


 刀理にだけは知られたくなかった。


 刀理にだけは、惨めな姿を見せたくない。


 私は顔を拭き、スマホを拾い上げた。


――開き直るしかない。


 そう決めた。


 産む機械?


 上等じゃない。


 価値があるから、求められる。


 何もない人間は最初から誰にも呼ばれない。


 私は自分に言い聞かせるようにアプリを開いた。


 条件を下げるつもりはなかった。


 むしろ、さらに明確にした。


『条件に合う方のみご連絡ください』

『曖昧な提案には返信しません』




 そして、数日後。


 ようやく、現れた。


――ルーカス・グレイソン。


 合理的で、感情を表に出さない。


 プロフィール写真も、無駄な演出がなく、淡々としている。


 最初のメッセージも簡潔だった。


『条件を読みました。合意できます』


 やり取りは驚くほどスムーズだった。


 愛だの、運命だの、未来の夢だの、そういう曖昧な言葉は一切ない。


 代わりに数字と契約の話だけが並ぶ。


『対価は2億円』

『結婚という形は取る』

『子どもは一人』


 2億円。


 胸が、どくんと鳴った。


 2億には届かない。だが現実的なラインだ。


 会ってみると写真とおりの男だった。


 落ち着いていて、無駄な愛想笑いもない。


 私を見る目は値踏みするようでいて、同時に迷いがなかった。


「あなたは自分の価値をよく理解している」


 彼はそう言った。


 褒められているのか、評価されているのか、わからない。


 でもその言葉に私は妙な安堵を覚えた。


 この人は私を幻想で見ていない。


 だからこそ、裏切られる心配もない。


「あなたと結婚をするつもりです」


 彼の口から出たその言葉を聞いたとき、私は不思議と胸が静かだった。


 嬉しいわけでも、舞い上がるわけでもない。


 ただ――これでいい、と思った。


 ネットで何を言われようと構わない。


 産む機械?


 そう呼びたいなら呼べばいい。


 私は、自分の条件で、自分の人生を選んだ。


 そう思い込むことでしか、ここまで来た自分を肯定できなかった。


 結婚の話が進むにつれ、周囲の声はさらに騒がしくなる。


『結局金か』

『最後は買われた』


 私はそれらを見ないようにした。


 見ても、もう泣かない。


 これは敗北じゃない。


 妥協でもない。


――生き残るための、選択だ。


 そう信じて、私はルーカスと結婚しようとしていた。


 その選択が本当に自分を救うものなのかどうか、考える余地をもう持たずに。



 お読みいただきありがとうございます。


『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』 第2巻!

 2026年2月3日 アマゾナイトノベルズさま より配信開始!


 悪役令嬢が現代日本に逆転移!?

 戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。

 しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。


 ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 ▲▲高評価もお願いします!!▲▲
 ▼▼ついでにポチっと投票も!▼▼
小説家になろう 勝手にランキング




■■■■■■ 書籍化のお知らせ ■■■■■■


『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』
☆電子書籍化☆

hyoushi

▲▲画像タップで【kindle版】へジャンプ▲▲

 配信日:2026年1月6日
 アマゾナイトノベルズ様より



hyoushi
    ▲【ブックライブ】▲

hyoushi
   ▲【ブックウォーカー】▲

hyoushi
    ▲【楽天Kobo】▲







■■■■■■


『異世界トラック』
読みやすく地文も整え、新たにシナリオも追加しました!
アンリミテッドならタダで読めますので、よかったら読んでください!
hyoushi
▲▲画像タップで【異世界トラック(kindle版)】へジャンプ▲▲


■■■■■■ 書籍化のお知らせ(ここまで) ■■■■■■




 ▼▼なろうサイト内のリンク▼▼
超リアリティから超ファンタジーまで!
幅広いジャンルに挑戦しています!
よろしくお願いします! ↓↓

▼▼画像タップで【FBBA】へジャンプ▼▼
hyoushi
馬場 茜イメージ



▼▼画像タップで【バスバスター】へジャンプ▼▼
hyoushi
セオンとナトリのイメージ



▼▼画像タップで【異世界トラック】へジャンプ▼▼
hyoushi
運と久遠……そしてトラックはHINU?



▼▼画像タップで【リビングデッド】へジャンプ▼▼
hyoushi
備前正義と笹石加奈子のイメージ




― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ