表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/38

調子に乗る


 アマゾナイトノベルズ様より2026年2月3日配信開始!

 『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』 第2巻!


 ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!



 境目はたぶん自分でも気づかないほど曖昧だった。


 最初は「条件を整理しているだけ」だった。


 次は「相手の本気度を測るため」。


 そして気づけば、それは「ふるいにかける快感」にすり替わっていた。


 私は、条件を書き換え続けていた。


『年収〇〇以上』

『将来の生活水準は維持できること』

『精神的に自立していること』

『私の能力に過剰な干渉をしないこと』


 それらは一見、もっともらしい。


 だが、行間に滲んでいたのは明らかな選民意識だった。


――私には、それだけの価値がある。


 そう思わなければ、ここまで来た意味がなくなる。


 メッセージのやり取りは減っていた。


 以前のような殺到はなく、反応は鈍く、慎重になっているのがわかる。


 それでも私は条件を下げなかった。


 むしろ、少しずつ釣り上げていた。


 金持ち男性――マシューの提示した「3億」という数字が、どうしても頭から離れなかった。


 あのときは、拒絶された側だった。


 見下されたとすら感じた。


 だからこそ、私は自分に言い聞かせていた。


――あれは特別だった。


――あれほどの条件を出す男が、もう一人くらいいるはずだ。


 だが、現実は残酷だった。


 3億どころか、1億を明確に提示してくる男は現れなかった。


 多くは曖昧な言葉で包み、将来性や可能性で誤魔化してくる。


『今はそこまで出せないけど、将来的には』

『一緒に事業を考えたい』

『君の能力を活かせば……』


――それ、聞き飽きた。


 私は、返事をしなくなった。


 あるいはわざと冷たい文面を返した。


『具体的な数字は?』

『それで私に何のメリットがありますか?』


 すると相手の態度はすぐに変わる。


『思ってた人と違いました』

『ちょっと打算的すぎませんか?』


 私はその言葉に苛立ちながらも、内心で嘲笑していた。


――今さら、何を言ってるの?


 最初からあなたたちが見ていたのは私の能力でしょう?


 今になって純粋さを求めるなんて都合が良すぎる。


 だがネットは容赦しなかった。


 匿名掲示板、まとめサイト、SNS。


 どこかで誰かが私の発言や条件を切り取って晒し始めていた。


『調子に乗りすぎ』

『ただの一般人が何様』

『能力ガチャ当たっただけで人生勝った気になってる女』


 私は、それらを見ないふりをした。


 見れば心が削れる。


 でも完全に無視もできない。


 エゴサーチをやめられない自分がいた。


 スクロールするたび、胸の奥がざわつく。


『3億拒否したってマジ?』

『自分の立場わかってなさすぎ』

『そのうち誰にも相手にされなくなるぞ』


――うるさい。


 私の人生、あなたたちに何がわかる。


 私はスマホを強く握りしめた。


 たしかに後悔がないと言えば嘘になる。


 マシューの顔。


 あの余裕のある微笑み。


 交渉を切り上げたときの、冷えた視線。


――あのとき、3億で飲んでいれば。


 そう思う夜は一度や二度ではなかった。


 だが同時に、そんな考えを必死で打ち消す自分もいた。


――違う。


――私は、もっと上に行ける。


 そうでなければ、これまでの失敗も、炎上も、孤立も、すべて無駄になる。


 私は自分の価値を信じ続けるしかなかった。


 だから条件はさらにエスカレートする。


『海外生活も視野に』

『私の意向を最優先できること』

『干渉しないが、支援は惜しまないこと』


 それはもう対等な関係ではなかった。


 支援者を求め、保護者を選び、スポンサーを探している。


 それでも私は、それを認めなかった。


――私は、選んでいる側。


 ネットでは反感が積み重なっていく。


『典型的な勘違い女』

『結局、金しか見てない』

『能力がなきゃ誰も見向きもしないのに』


 私は画面を閉じ、深呼吸をする。


 胸の奥で、小さな不安が蠢いている。


――本当に、まだ私は選ぶ側なのだろうか。


 だがその問いに向き合うには、私はもう引き返せないところまで来ていた。


 条件を下げることは、負けを認めることだ。


 私はマシューによって金銭感覚を吊り上げさせられたのか? いいや違う!


 身の丈を認めることは、マシューの判断が正しかったと認めることだ。


 それだけはできなかった。


 私は今日も、誰とも会わず、誰とも触れ合わず、条件だけを磨き上げていく。


 まるでそれが自分自身の価値そのものだと信じるかのように。


――調子に乗っている?


 そう言われるたび、私は心の中で答える。


 違う。


 これは生き残るための交渉だ。


 そう思い込まなければ、私はきっと、ここで折れてしまうから。



 お読みいただきありがとうございます。


『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』 第2巻!

 2026年2月3日 アマゾナイトノベルズさま より配信開始!


 悪役令嬢が現代日本に逆転移!?

 戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。

 しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。


 ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 ▲▲高評価もお願いします!!▲▲
 ▼▼ついでにポチっと投票も!▼▼
小説家になろう 勝手にランキング




■■■■■■ 書籍化のお知らせ ■■■■■■


『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』
☆電子書籍化☆

hyoushi

▲▲画像タップで【kindle版】へジャンプ▲▲

 配信日:2026年1月6日
 アマゾナイトノベルズ様より



hyoushi
    ▲【ブックライブ】▲

hyoushi
   ▲【ブックウォーカー】▲

hyoushi
    ▲【楽天Kobo】▲







■■■■■■


『異世界トラック』
読みやすく地文も整え、新たにシナリオも追加しました!
アンリミテッドならタダで読めますので、よかったら読んでください!
hyoushi
▲▲画像タップで【異世界トラック(kindle版)】へジャンプ▲▲


■■■■■■ 書籍化のお知らせ(ここまで) ■■■■■■




 ▼▼なろうサイト内のリンク▼▼
超リアリティから超ファンタジーまで!
幅広いジャンルに挑戦しています!
よろしくお願いします! ↓↓

▼▼画像タップで【FBBA】へジャンプ▼▼
hyoushi
馬場 茜イメージ



▼▼画像タップで【バスバスター】へジャンプ▼▼
hyoushi
セオンとナトリのイメージ



▼▼画像タップで【異世界トラック】へジャンプ▼▼
hyoushi
運と久遠……そしてトラックはHINU?



▼▼画像タップで【リビングデッド】へジャンプ▼▼
hyoushi
備前正義と笹石加奈子のイメージ




― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ