想定外の支援者
アマゾナイトノベルズ様より2026年1月6日配信開始!
『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』
悪役令嬢が現代日本に逆転移!?
戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。
しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。
男性にも女性にも読んでほしい作品です。
ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!
非公開メッセージが届いたのは弁護士相談から三日後の夜だった。
その頃にはもう、私はパートを辞める連絡を一方的に店長に送りつけ、自室に引きこもっているだけになっていた。
知らないアカウント。
英語混じりの日本語。
『あなたと、少しお話がしたいです』
『誤解のない形で』
最初は無視するつもりだった。
もう誰も信用できない。
そう思っていたはずなのに、その文面は奇妙なほど“落ち着いて”いた。
『今の状況を、把握しています』
『あなたに不利な形で終わらせたくありません』
――把握している?
その一文で背中に冷たいものが走った。
私は、慎重に、短く返した。
「どういう意味ですか」
返事はすぐに来た。
『直接お会いしてお話ししたい』
『場所と時間は、あなたに合わせます』
普通ならここでブロックして終わりだ。
でも私は、もう普通じゃなかった。
警察。
訴訟。
前科。
それらの単語が頭の中で渦巻いていた。
『少しだけなら』
そう打ち込んだ指が、震えていた。
待ち合わせは都内のホテルラウンジだった。
場違いだと思った。
自分の服装も、所作も、全部が。
それでも約束の時間ぴったりに彼は現れた。
艶のある髪をきれいに整え、仕立てのいいスーツをさらりと着こなしている。
姿勢がよく、目線が高い。周囲を気にしていないのに、自然と視線を集めるタイプの男だった。
年齢は三十代後半くらいだろうか。
外国人。
金髪ではないが日本人ではないと一目でわかる。
「アカネさん?」
穏やかな声。
彼の日本語は少しだけ抑揚が違う。
「はい……」
彼はにこやかに微笑んで私の向かいに座った。
「お会いできて嬉しいです」
その笑顔に下心や焦りは感じられなかった。
むしろ、“余裕”。
それが一番不気味だった。
「突然で、驚かせましたね」
「……正直、はい」
「当然です」
彼はそう言ってコーヒーを一口飲んだ。
「まず安心してください。私は、あなたを責めに来たわけではありません」
その言葉で少しだけ肩の力が抜けた。
「あなたが置かれている状況も、理解しています」
「……どこまで?」
彼は少しだけ首を傾げた。
「警察に行かれる可能性、示談の打診、金銭的な負担」
私の心臓が、強く脈打った。
「なぜ……?」
「情報を集めるのが仕事なので」
仕事。その言い方が引っかかった。
彼はなんの前置きもなく、鞄から封筒を取り出した。
分厚い。
ありえないほど、分厚い。
「これは、私からの提案です」
彼は封筒をテーブルの中央に置いた。
「中を確認してください」
周囲の視線が一斉にこちらに向く気がして私は一瞬ためらった。
それでも封を開けた。
中にはきれいに揃えられた紙幣。
――三百万円。
数えるまでもない。
私は言葉を失った。
「これで、当面の問題は解決できるはずです」
「……どうして、私に?」
声が、かすれていた。
彼は少しだけ楽しそうに笑った。
「あなたは、特別だからです」
その言葉に、胸がざわついた。
「何が……?」
「あなた自身が、まだ気づいていない価値です」
彼は、私をまっすぐ見た。
逃げ場がない視線。
「あなたの“能力”」
その瞬間、世界が一拍遅れた。
「……なんで、それを」
「あなたは、浮く」
淡々と、断定する。
「重力に逆らう。それは、再現性のある現象です」
私は、喉が鳴るのを感じた。
「偶然じゃない。錯覚でもない」
彼はそう言って、再び微笑んだ。
「もし、それが遺伝するなら?」
その一言で、空気が変わった。
「あなたの子どもが、同じ能力を持つなら――」
彼は、ゆっくりと言葉を選ぶ。
「世界は、放っておきません」
頭の中で、今まで点だった出来事が、線でつながっていく。
なぜ、このタイミングなのか。
なぜ、ここまで知っているのか。
「誤解しないでください」
彼は、手を軽く上げた。
「私は、あなたを利用したいわけではない」
――嘘だ。
そう思った。
でも彼は続けた。
「あなたが困っているから、手を差し伸べる」
「そして、将来の可能性について、話をしたい」
それだけ。
「無理に今、決める必要はありません」
彼は封筒を指で軽く叩いた。
「これは、あなたの“時間”を買うためのお金です」
時間。
それは、今の私に、一番足りないものだった。
「私は、マシュー・クロフォードです」
男の名。
世界的な成功者。
その名前を、私はあとから何度も検索することになる。
「今日は、これだけです」
彼は立ち上がり、にこやかに言った。
「また連絡します」
私は、何も言えなかった。
封筒の重みだけが、現実だった。
助かった。
そう思ったはずなのに、胸の奥では別の感情が蠢いていた。
――私は、今、買われた。
追い詰められた足元を、正確に見抜かれて。
それでも、拒否できなかった。
それが、何よりも、怖かった。
お読みいただきありがとうございます。
拙作『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』
2026年1月6日 アマゾナイトノベルズさま より電子書籍化!
悪役令嬢が現代日本に逆転移!?
戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。
しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。
男性にも女性にも読んでほしい作品です。
いくつか下のほうに表紙とリンク貼っておきます!
ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!











