夜、貴方の隣で
国王に即位してから三年が経ち、目まぐるしい毎日が当たり前となっていた。
(はあ、肩がバキバキだわ)
執務を終えた夜、寝室の扉を開くと、ベッドに座って本を読んでいたカルロスが慌てて本を閉じて私に向き直った。
「きょ、今日もお疲れ様、ティファリー」
「まあ、なあに?見られてはいけないものなの?」
「そんなんじゃない」
「そんなんじゃないなら見せて頂戴」
「本当に何でもないんだ。ほら、今日も疲れただろう?」
私を膝の上に座らせると、肩を揉んでくれる。程よい指圧に気持ちまで解れていった。いつもこうしてマッサージをしてくれるけれど…
「……そんなことで騙されないわ!隙あり!」
しかしカルロスは、思い切り手を伸ばして本を抱え込んだ。
「ダメったらダメだ!」
「なにをそんなに頑ななのよ!」
「良いから諦めろ!」
「ちょっ……!あっ…!!」
その時、取り上げようと手を伸ばした私の、湯上がりのローブが解けてしまった。
「き、きゃああぁぁ!!!」
必死に前を合わせて、両手に力を込める。カルロスがそっとその手に触れた。
「…ティファリー」
「あ、あの。その…」
私はこういう時、今だにカルロスに触れられるたびに硬直して、恥ずかしさから泣いてしまうのだ。良い雰囲気というやつなのだろうが、恥ずかしくて死んでしまいそうになる。
なのに、カルロスはそういう時ほど容赦がない。
「好きだ」
「っ…」
「ずっと、ずっと好きだった」
「ぅ……」
「ミレーネだった時も、ピオニーだった時も、ティファリーである今も」
する、と髪を耳にかけて、囁く吐息がくすぐったい。ジタバタと足を動かして僅かな抵抗を図る。
「…君といる時、こうして僕のものにしてしまいたい衝動を抑えるのに必死だったんだ」
「カルロス……あの…」
「言い訳は聞かない。君はいつもそうやって、すぐ逃げようとする」
「そんなつもりじゃ…」
「じゃあどんなつもりか言ってみろ」
「っ…」
唇を喰まれる。言葉を奪われる。そうするともう、抵抗できなくなる。
「……カルロ……」
「僕を求める言葉以外、聞くつもりはない」
「カルロスの…身体が…心配で」
「ふぅん?だったら尚更、昨日よりも遅くまで付き合ってくれなくては」
「そ、それよりも!話を……聞いて欲しい話が……」
「…ほう?それは急用なのか?」
「ええ!最重要項目にして、早く貴方に聞かせたい話…」
「そうかー…。うむ、じゃあ、それは早速明日聞くこととしよう」
「カルロス…!!」
再び塞がれた口は呼吸すら許してくれそうになく、優しく這う指に、どうしようもない切なさが込み上げた。
「カルロス」
「なんだ?話なら聞かないぞ」
「愛しているわ」
潤んだ瞳が私を見つめた。その瞳に映る私もまた、涙を浮かべていることに気がつく。
「僕も、君を愛している」
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