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7.上位種

 クーゲルがアンノウンの後を追って屋上に着いた時には、アンノウンと資産家の決着はついていた。

 アンノウンが不利かと思われたが、話を聞くと資産家は眷属だったらしい。

 怪盗アンノウン。ヴァンパイアハーフでダンピールのロウは、ヴァンパイアに対して耐性が強くヴァンパイアハンターという異名がある。

 純血のヴァンパイアの能力が使えない代わりに、ヴァンパイアを素の力で滅ぼせる唯一の存在だ。


「クーゲルのためにアイツの持ち物も盗んでおいた。この指輪とナイフがあればアイツを倒した証拠になるだろう。それに灰も」

「随分気が利くな。こっちはガードマンを始末するのに時間をかけすぎた。奴らの中にはお尋ね者もいたようだから、後で警察からハンター協会を通して小遣いが入るだろう」

「それは良かった。さて、じゃあさっさとこの場を離れて……」


 アンノウンが言いかけたとき、クーゲルの身体が本能的に危険を察知する。

 慌ててアンノウンを地面へ伏せさせると、アンノウンの頭があった位置に何かが飛んできていた。

 その何かは地面に落ちると、ジュウと嫌な音を立て地面を溶かす。


「この匂い……まさか、ご主人様登場?」

「面倒なことになった」


 二人の目の前には、銀髪の長い髪の男が一人立っていた。

 彼の瞳は血の様に紅く輝き、見た者を(とりこ)にしてしまうような魅力がある。

 彼の背には大きな黒い羽が生えており、バサリという音と共に地へと降り立つ。

 羽は黒のマントへ変わり、華麗な仕草で二人へ向けて丁寧な礼を示した。


「私の可愛い駒を台無しにしてくれたのは君たちかな? なるほど、そっちはまがい物。そっちは……厄介だが血は薄いようだ」


 アンノウンとクーゲルを順番に見遣り、優雅に頷いて見せる。

 彼の服装もアンノウンと似通っており、白の美しいレースのシャツに黒のビロードのパンツを身に着けている。

 動きは洗練されているが、放つ空気は氷の様に鋭い。

 普通の人間ならば、その魅力に惑わされて動けずにいるところをあっさりと仕留められていただろう。


 一目でアンノウンの正体と、クーゲルが神の子孫であることまで見抜く観察眼を持つ存在。

 目の前に立つ男は眷属よりも上位種である、純血のヴァンパイアのようだ。


「これはこれは。僕はあくまで身を守ったまで。貴方様の駒に命を奪われる訳にはいかなかっただけですよ。非礼はお詫びいたしますが、どうか見逃していただけませんか?」


 ロウが同じく丁寧な仕草で頼んでみるが、銀髪の男は額に手を当てておかしそうに笑ったあとに低く唸る。


「バカにするのもいい加減にしろ。私の食いぶちを稼ぐ駒を台無しにされ、私自らが動くことになったのだ。まがい者如きに命令される言われなどない」

「……だそうですが。どうする?」

「どうもこうもない。やるかやられるか、それだけだ。奴にも賞金はかかっているはずだ。やるぞ」


 クーゲルは弾をサッと入れ替え、目の前のヴァンパイアに銃口を向ける。

 ロウも諦めたのか背中に手を回して銀の鞭を取り出すと、鞭を地面に打ち付けた。


「で、クーゲル。作戦は?」

「同じだ。お前が(おとり)役。だが、トドメはお前が刺せ。俺の銀の弾丸じゃダメージは与えられるが決定打にはならない」

「人使いが荒いな。でもクーゲル。純血は厄介だ。弾を当てられる?」


 短い会話の中、一応紳士的に待っていたヴァンパイアだったが(しび)れをきらしたのかまた羽を生やして両手を広げた。

 銀髪が月の光を受け、不気味に輝くのと同時に先にヴァンパイアが動き始めた。

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