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エンマ大王の座、おろされました  作者: 華河イリカ
2/2

2話

第2層 極寒の間

ひたすら寒い吹雪が私たちに降りかかる。


「さ、寒い…エンマは平気なの?」

ゆずがあまりの寒さに座り込み凍えている。


「ワシは体全体に熱が循環してるから、そこまでじゃないぞ。ま、人間にはキツイのも当然じゃな。」

ワシは着ていたコートを脱ぎゆずに被せた。


「どうじゃ?だいぶマシになっただろ。」


「ほんとだ暖かい、なんでコート1つで?」

咄嗟にワシは目を晒せた。


「ひ、秘密じゃ…」

──言えない、そのコートはワシの血でできてるだなんて…


「とにかく、1層ほどじゃないけど、ここも化け物は出るし気おつけるんじゃ。」

そうしてワシたちは手錠を開けられる人を探しにいった。


しばらくして…


「ふー疲れた。エンマ、今日はもう休みにしようよ。」

──たしかに、人間にはもう辛い時間になってきたな…

かれこれ、3時間は歩き回った。


「そうじゃな、かまくら作るからまっとけ!!」

数十分後


「できたぞ、こんなもんじゃろ。」

初めて作ったにしてはうまくできたつもりだったが


「え、でもなんか小さくない?2人はきつい気が…」


「あぁ、ワシはこの後も探す予定じゃから、ゆずはしっかり休んどけ!!」


「良くないよ!!沢山戦ってるわけだし、ちゃんと疲れはとらないと…」


「で、でもぉ…まだ探索しきれてなくないし...」


「でもじゃないよ!!」

ゆずはかなり声を荒らげ必死だった。結局、ゆずの根気に負け渋々休むことにした。


「ねーエンマ起きてる?」


「起きとるぞ、どうした1人じゃ眠れないのか?」


「実はさ、私、前世では小学校の先生だったんだよ。でも上司からのパワハラとか凄くてね、そのまま過労死しちゃったんだ…」

──過労死か…あ、それでワシのことをあんなに真剣に…


「あ、ごめん重い話になっちゃったね。不思議だよね、死んだのはつい最近なのにもう遠い昔のように感じれちゃうんだよ。そういえば、エンマも前世とかあったの?」


「残念だが、ワシはこの地獄で何千年も過ごしてる内に忘れてしまった。まぁ正直…今の私には…関係がない話…」

そうして眠りについた。


◼️◼️◼️

久しぶりにぐっすりと寝た気がした。とりあえず次の階に行くため、ゆずを起こした。


「ゆず、起きろ。行くぞ。」


「は、はーい。」

かなり寝ぼけていた。ある程度準備が終わりかまくらを後にした。


そして次の階へ登る階段を上がりきったその時、


「うふふ、こんばんはー♥」

そこに白いドレスを着ている女性が待ち受けていた。

──な、なんでいんだよ

わしは咄嗟の判断でゆずの着ているコートを引っ張りゆずごと投げた。

その瞬間、女性は手から氷の槍を作り出し私の心臓目掛けて突いてきた。

何とか刀で受け身をとれたため最低限の痛みで済んだ。しかし、それと同時に刀は折れてしまった。


「ゆず!!ここは任せて行け!!こいつは雪女、ここの門番だ!!」


「でもっ...」


「いいから早く!!鍵を見つけてきてくれ。お前ならできる!!」

ゆずは渋々その場から離れていった。

──まずいな、手錠開けてから門番と戦う予定だったんだが…それに寒すぎて体の熱が回りにくくなってて、力が上手く出せない…


「不意打ちとは卑怯じゃないか…てか、門番は門番らしく10階で待っとけよ。ここ2階だぜ。ルール守ったらどうだ?」


「あら、ごめんなさいね、我慢できなかったのよ。寝込みを襲うかよりは幾分とマシでしょ?それより、あの人間の心配より自分の心配をした方がいいと思うのだけど。」

その瞬間確信した、間違いなく今の状態では勝てない。

──ワシにできることは時間稼ぎ程度か…ゆず、頼んだぞ…


◼️◼️◼️


「ぎゃああああーーー」

私はゆず。絶賛わけわかんない鹿のような巨大さ化け物に追っかけ回されていて超絶ピンチ。


「はぁはぁここまで来れば…」

なんとかデカい木に隠れ何とかあの化け物を巻くことができた。

──とりあえず、ここで休憩しよう。

その途端地面が揺れ始めた。


「ぎゃぁぁあ!どうしよどうしよ」

私は何とか木に捕まりその場に留まれたが今度は急に地面が上昇し始めた。

──なんなんだよ、これ…

なんと、私が立っていた場所が巨大な鹿の頭だったのだ。

──デカすぎるだろ。さっきの鹿の数100倍あるじゃん。

辺りを見渡していると、煙突から煙がでている一軒家を見つけた。しかし、見つけたところで降りることが出来ない。

私はおもむろにペシペシと鹿の頭を叩いてみた。すると鹿は私に気づいたのか振り下ろそうと頭を振り回しやがった。

流石に耐えられずそこまま勢いよく飛んで行った。幸いにも飛ばされたのは一軒家の方面だった。


「ぎゃぁああああァァァ、これ絶対死ぬやつだァァァ!!」


上空300m

──やばいやばい、せめてあの家の近くに落ちないと…


上空100m

──あれは人か…髭が生えた爺さん…特徴的にあの人のことだ!!


上空30m

──あ、気づかれた。めっちゃ驚いてる。


「ひ、人?!なんでこんなところに?!」


「ごめんくださぁぁああい」

──終わった…確かエンマ、死ぬことはないって言ってたっけ?でもこれ、絶対痛いやつじゃん。くそっ南無三…

落ちる覚悟をした途端、下から強い風が吹いた。そのおかげで落下の速度は殺され、何とか痛い思いはせずにすんだ。

だが、それに気づかず私は地面に着地しても


「あー死ぬぅううう!嫌ァァァァ!」

と言いながら手足をバタバタとしていた。


「あのう、大丈夫ですか?」

爺さんの一言で我に帰ったと同時にとんでない羞恥心もやってきた。

──あーもういっそのこと殺してくれぇえええ


「はい大丈夫です…」


「とりあえず家に入るか。」

爺さんは暖かいコーヒーを出してくれた。


「そのコートを羽織ってるってことはお前エンマ大王様と同行してたのか?」


「おじいさん、エンマさんのこと知ってるんですか?!」

──というかエンマ大王ってやっぱ本当だったんだ。


「あぁ、戦乱の時は世話になったからな。」


「えーと戦乱って何ですか?」


「あーそうかお前、新参者だったか… 戦乱とはな、我々の黒歴史で閻魔大王の玉座をかけた戦争だ。何千年にも渡って続いたんだよ。当時はかなり悲惨な状態だったね。」

──それに終止符を打ったのがエンマってことか…

私が考え込んでいると


「まぁ、それは置いといてわざわざここに来たんだ。エンマ大王様に何かあったのか?」

──そうだ、今もエンマは戦っている…早くしないと。

私は事の経緯を全て話した。


「なるほどね、つまりその手錠を外すための鍵を用意してほしいということか。だが、恐らくその手錠っていうのはエンマ大王様だけを封じる専用の手錠だな。」

おじいさんはコーヒーを飲み、続けて言う。


「だとすれば、エンマ大王様本人の血が必要となる。それが無いんじゃ…」

そうしておじいさんは私をじっとみた


「すまない、そのコートを貸してくれないか。」

コートを渡すと「やはりな」と言い手元にあるハサミでコートの端をきった。


「え、ちょっと何やってるんですか?!」


「何って血を取ってるんだが…」

──え、血!!コートから?

そして私はエンマが言ったことを思い出した。


『ひ、秘密じゃ…』


──あの時、目を逸らして言ってたのはこのことか…


「ちょっと待っとれ急いで作ってくる。」

おじいさんは棚から工具を取り出し制作を始めた。


「そういえば、お嬢ちゃんはこの無間地獄をでたら何を叶えて貰うんだ?」


「え、叶えるってなんですか?」

すると爺さんの手が止まった。


「は?エンマ大王様から教えてもらってないのか?!」


「は、はい。」

おじいさんは深いため息を吐き


「はぁ…次、エンマ大王様に会ったら問いただしてみるといい。」

そうして数分後、遂に鍵は完成した。


「ありがとうございます!なんとお礼を言えば…」


「いいよ、エンマ大王様の近況をしれただけでも良かった。そらより、嬢ちゃん。ここからエンマ大王様の所まで結構距離があるんじゃないか?」


「え、まぁそうですね。」

──たぶん、歩いていこうと思うと相当の時間がかかってしまう…


「じゃあ、飛ばしてあげようか。安心して大丈夫、落下死する危険性はないので」

──飛ばすってまさか…


「は、ちょっと待っ…」

私が言い終わるよりも早く


「じゃあ大王様をよろしくしますぞ、1名様ご案なーーーい」


「ぎゃぁあああ」

そして、あっという間に元のいた所まできた。

だが

──これ地面にぶつかって死ぬんじゃ…

しかし、地面にぶつかるすんでのところで勢いが止まり無事死ぬことなく着けた。

──もしかして、落ちた時吹いた突風も爺さんの能力だったのか…いや、今はそんことよりも…

私はすぐにエンマを探した。

すると


「え?」


そこには氷漬けにされたエンマがそこにいた。


「あらら、残念ね、もう少し、早かったら良かったのに。」

後ろに雪女がいたが、それを見向きもせず私は急いで氷漬けにされたエンマの元へ駆け寄った。


「エンマおきてよ!!」

──大丈夫、落ち着け。この空間で死ぬことはない。手錠が外れれば起きるかもしれない。

鍵を刺そうとしたが鍵穴が氷らされており上手く刺さらなかった。

──どうにかして溶かさないと、あ、そうだ!!

私は咄嗟にエンマから貰ったコートを歯で噛み破った。破れたところから血が出てくる。その血を鍵穴に注ぐと予想通り熱で氷は溶けて言った。


「必死な所悪いけど次はあなたの番ね。」

彼女は手から冷気を出してきた。私の足から徐々に上半身へと凍っていく。

──くっ、間に合えぇぇえええ

私はかじかんだ手で鍵穴に刺した。

その瞬間、手錠は外れ、とんでもない熱風がエンマから出てきて、氷は一瞬で溶けた。

──エンマが目を覚ました!!


「待たせたな、ゆず」


「な、何故だ!?」

雪女は困惑していたが、何か嫌な予感を感じたようで本気を出してきた。


氷河盤丈(ひょうがばんじょう)


雪女がそう言うとここ一体を多い尽くせるほどの大量の氷柱が降り注いできた。


「こ、これどうするのエンマ!!」


「安心しとれ、ゆず。」


エンマは掌を空に向け落ち着いた様子で


赤血万開(せんけつばんかい)…あ、やべ出しすぎた。」

私は直感で悟った。

──あ、これ滅ぶやつだ…

さっきまであった氷柱は跡形もなく、あるのはこの世の終わりみたいな炎だけだった。

相手は戦意喪失したのかそのまま気絶をしててしまったようだ。

──これで終わりか…

と思ったつかの間だった。


「あっっつ!」

今度はエンマの撃ったあの絶対の炎から火の粉が落ちてきた。


「やばい逃げるぞ!」


そう言いエンマは私をおぶり次の階へと向かっていった。

その道中私はあのじいちゃんの言ったことを思い出いした。


「そういえば聞いたんだけど無間地獄を出ると願いが叶うってホントなの?」

するとエンマはしばらく黙り込み話始めた。


「爺ちゃん、言ったのか...あー叶うよ、なんでもね。それでワシは反乱を止めるつもりじゃ、お前もよく考えとけよ。」

何故かエンマは不機嫌に言っているように感じた。


◼️◼️◼️

極寒の間 3階


「よーしここら辺だな」


「え、どうしたの?次の層の入口なんてどこにも…」

エンマは足に力を入れ顔を強ばらせた。

──ま、まさか?!いやそんな脳筋な…


「せー"の”!!」

私の予想は的中しエンマは上の階を目掛けてさっきの技をぶっぱなした。エンマの真上に見事なまでの巨大な穴をできていた。


「ははっ…核じゃねえか、これ」

エンマのルール無視により一気に上階への道が現れた。


「よーし、じゃあ、おぶってやるから一気に飛ぶぞ。」


「え、ちょっとまっ、ぎゃぁぁあ」


そうして最上階、願いが叶えられる部屋に到着した。

エンマのジャンプで…


部屋の真ん中には祭壇のようなものがあった。

──あれで願いが叶うのか…


「結局、ゆずは何を願うかは決めたのか?」


「私は天界に返してくださいって願おうかなって…」

下手にこれが1番いい安全策だと思った。


「まぁいいさ、何でも。どのみち記憶は消えるんだ。」


「え、記憶が消える?一体どういうこと。」

エンマ落ち着いた口調で


「私の願いは今起きている戦争をなかったことにすること。そうなると、世界は再構築され私たちがここにいた記憶も消えて、本来の平和な世界に帰るんだ。」

エンマの顔は少し寂しそうに見えた。


「ここでさよならってこと?」


「あぁ、また会ったときは仲良くして欲しい。じゃあな。」

そうしてエンマは祭壇に手を伸ばした。


「ちょっと待ってよ。どうにかできないの?エンマと過ごしたこの時間も何もかもが無くなったことになるのは嫌だよ。エンマの力なら反乱くらい止めらるんじゃないの?」

するとエンマは今まで感情を抑えていた感情が爆発したのかのように声を荒らげて


「たとえこの力があったとしても被害がゼロで完璧に止めることはできない。必ず誰かが死ぬ。だからこれが1番安全策なんだ。もう二度とあんな…すまない、少し冷静さを失ってた。」


私はその声に圧倒され何も言えなかった。そしてエンマは祭壇の前でブツブツと何かをいい、消えていった。

──エンマ…待ってよエンマ!!

その瞬間頭に激痛が走った。


そこで私は1つ疑問が出てきた。

そして呟く。


「あれ、エンマって誰だ?」

──私はこの無限地獄を"1人”で乗り切った。で、今から天界に返して貰うよう願う、それだけじゃないか。

何か引っかかるが私は祭壇へと手を伸ばし念じた。


『私を天界に戻して』


そうして私はその場から去った。


◼️◼️◼️


ワシの名前は…遠い昔に忘れてしまった。だがみんなからは地獄の"エンマ大王”と呼ばれている。見た目は10歳くらいの幼女なのは気にしないでほしい。コンプレックスだから。


ここ数日でとてつもないことを経験した気がする。

──まぁ、気のせいだろう。

すると部下が


「エンマ大王様、今日は天界からの使者が来る日です。もう既にあちらの部屋で待機されております。」


「分かった、挨拶をしに行こう。」

現在、天界とのいざこざを無くすため話し合いを進めている最中だ。

──このまま平和にいくといいな。

ドアを開けた。

そこには1人の少女がいた。

初対面のはずなのにどこかで見たことがある。何故かこの少女と一緒なら窮地を脱せることが出来ると感じた。

少女は私を心配するように


「あの、どうかしましたか?」

どうやらワシの目から涙が出ていたようだ。

そして名前も知らない、全く見たこともないその少女に言った。


      「私たちどこかで会いました?」


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