表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/30

8話 入学試験

 3日後、王都に到着した。

 男の襲撃を心配していたけど、それは問題なく、無事に移動することができた。


 さっそくココアと一緒に冒険者学校に向かう。


「「おぉー」」


 塔のような巨大な校舎。

 手前は綺麗な花が咲く庭が広がり。

 奥は広大な訓練場が見えた。


「ここが冒険者学校……」

「すごいな! ワクワクしてくるな! な!?」

「うん、そうだね!」

「給食とかあるかな? 学食でもいいな! お肉いっぱいだと嬉しい!」

「ご飯は大事だね」

「途中のリアンのご飯も美味しかったし、あぁ、最高だ! お肉パラダイス、カモン!」


 とてもテンションが高いココアだった。


 でも、たぶん、俺もテンションが高くなっていると思う。


 小さい頃から夢見た冒険者になれるかもしれない。

 そう思うと自然と笑顔があふれた。


 ここで1年学んで、立派な冒険者になって……

 いや、気が早いか。

 まずは入学試験に合格しないと。


「いこうか」

「ああ!」


 さっそく受付に移動して、二人で試験の登録をした。

 少しして試験開始の時間となり、校舎の裏手にある訓練場に移動する。


「これより、第七十七期、新規生の入学試験を行う」


 試験官が前に出て、受験生がビシリと並ぶ。

 数は……三十人くらいかな?

 それぞれ剣や斧などで武装している。

 歴戦の戦士という風貌の者が多く、そこそこの圧を感じた。


 そんな受験生に向けて、試験官がニヤリと笑いつつ言う。


「試験内容は単純だね。どのような方法でも構わないから、俺に一撃入れること」

「……は?」


 受験生の誰かが間の抜けた顔をした。

 あるいはそれは、俺達を除いた受験生全員の心の声を代弁したものだったかもしれない。


「剣で戦うもよし。魔法で戦うもよし。もちろん、二人でかかってきてもいい。三人でも四人でも、それもまた自由だ」

「おいおい、面白い冗談だな」

「本気だぞ」

「……舐めてるのか?」


 一部、血気盛んな受験生がいるようだ。


 ただ、気持ちはわかる。

 三十人を相手にして、試験官は余裕たっぷりに笑い、「お前達なんてまとめてかかってきても敵じゃない」と言っているのだ。

 それはまあ、怒っても仕方ない。


 そんな受験生に向けて、試験官は火に油を注ぐ。


「なに、心配するな。これは俺の趣味のようなものだ。ここで落ちたからといって、即落第ということにはならないよ。負けても問題はないから、安心して負けるといい」

「そっか、わかった。お前、バカなんだな? なら望み通り、一撃を食らわせてやるよ!」


 挑発に耐えかねて、一人の男が大剣を手に斬りかかった。


 風を叩き潰すかのような重い一撃。

 しかし、試験官の姿は幻のように消えていた。


「はい、終わり」

「……」


 試験官はいつの間にか男の背後に回り込んでいた。

 男はなにをされたかわからない様子で、そのまま気絶して倒れてしまう。


「さて……次は誰だい? ほら、早くかかっておいで」

「こ、こいつ……いや、今のはまぐれに違いない!」

「てめえら、一気にかかるぞ!」


 数人の冒険者がまとめて突撃して……

 そして、まとめて吹き飛んだ。


「やれやれ、数人がかりでこの程度か? もっと俺を楽しませてくれ。おじさん、ヒマしているぞ?」

「てめえええ!」

「ふざけやがって!」


 受験生達が次々と挑んで。

 そして、次々と空を舞う。


 試験官はとても綺麗なカウンターを決めていた。

 その場から一歩も動くことはない。


 この人……強い。


 気がつけば、受験生のほとんどが壊滅状態に。

 残っているのは俺とココアだけだ。


「さて、残りは君達だな。来ないのかい?」

「あ、あたしは……」


 ココアは小さく震えていた。

 試験官との力量差を感じ取ってしまったのだろう。

 猫耳と尻尾がしゅんと垂れてしまっている。


 ここで負けても落第ではないらしいけど……

 でも、どうせなら勝ちたいな。


「大丈夫だよ、ココア」

「リアン?」

「俺が前に出る。隙を作るから、ココアはそこを攻撃して。ココアの武器は、普通の剣だっけ?」

「あ、いや……小剣を二つ。双剣使いなんだ、あたし。正確に言うと、獣人の忍者。略して、猫忍」


 初めて聞く職業だった。


「なら攻撃が速くてよさそうだね。タイミングは任せるよ」

「で、でも……」

「大丈夫、俺を信じて」

「……うん。そうだな!」


 ココアの瞳から迷いが消えた。


「リアンのことなら信じられる。だからあたし、がんばるよ! よーし、やるぞー! 勝って入学して、学食で美味しいお肉料理を食べるんだ」

「そこ、大事なんだね」

「お肉は正義!」

「うん。美味しいものを食べるためにも、一緒にがんばろう」

「作戦は決まったかい?」


 試験官は律儀に待ってくれていたみたいだ。

 剣を肩に乗せてぽんぽんと叩いている。


 余裕たっぷり。

 でも、見てろ。

 すぐにその余裕を崩してやる。


「いくよ」

「おう、こいこい」


 俺は剣を抜いて、構えた。

 集中して、それから地面を蹴る。


 そして……


「なっ!?」


 試験官の剣が宙に舞う。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


「面白い」「続きが気になる」「長く続いてほしい」と思っていただけたら、

『ブックマーク』や『評価』などで応援していただけると嬉しいです!


評価などはモチベーションに繋がるので、どうか応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=246729578&size=135
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ