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17話 実技試験

「さっそくだけど、今日は実技試験だ」


 翌日。

 授業が始まると、俺達は外に出た。

 訓練場のさらに奥にある人工ダンジョンの入り口に集合する。


「ここは、他所から取ってきたダンジョンコアを使った人工のダンジョンでねえ。本物とそっくりな機能を持つ。今日はここで実技試験を行う」


 二日目で実技試験が行われるとは思わず、みんな、軽くざわついた。

 その反応は想定済みだったらしく、ライズ先生は笑みと共に言う。


「はいはい、静かにー。試験といっても、特に点数を競うわけじゃない。どちらかというと、お試し感覚といったところだな。今後の課題を見つける、自覚してもらうために試す、という感じさ」

「このダンジョンを踏破すればいいんですか?」

「そうだね。おっと、不安に思うことはない。難易度も調整できるからね。初心者用に調整してあるよ。それに、他の教師がいくらか中で待機しているからね。いざという時は彼らが助けてくれるはずさ」

「助けてもらった場合、減点とかは?」

「ないよ。言ったろう? 試験じゃなくて、君達の力を測る意味合いの方が強い。だから、仮に失敗して撤退したとしても問題ないよ」


 なるほど、安全面はしっかりと配慮されているみたいだ。

 これなら不安に思う人も少ないはず。


「そんなわけで、ペアを作ってもらうよ」

「ペアですか?」

「二人一組で攻略してもらう。ソロで活動する冒険者もいるけど、大抵はパーティーを組んでいるからね。そういうのに今から備えておく、っていうことで」

「リアン、リアン。あたしと一緒に……」

「ちなみに、ペアはくじで決めるよ」

「なんで!?」

「慣れた相手と組まれても、その人の真価は測りづらいからね。まあ、冒険者には運も必要なのさ」


 ココアはしょんぼりしつつ、ちらちらとこちらを見た。

 どうしたんだろう?


「運……よし! あたしはやればできる女。絶対に掴み取ってみせるぞ!」


 かと思えば、尻尾を立てて燃えていた。

 どうしたんだろう?


「じゃ、順番にくじを引いてくれ。ほい」

「空よ、大地よ、あたしに力を貸してくれ! あたしのくじ運を見せる時だぁあああああ!!!」

「ほい、七番ね」

「七番! 相手は……!!!?」

「私だよ、よろしくね」

「……」


 女子とペアになり、なぜかココアは絶望的な表情に。

 どうしたんだろう?


「ほい、シュバルツァーも引いてくれ」

「あ、はい」


 俺の番が来たのでくじを引いた。


「三番です」

「えっと、三番のペアは……」

「……私よ」


 ジェイルストームさんが苦い顔をしてこちらにやってきた。


「……なによこれ。こんなものがプレゼントなんて……」

「えっと……ジェイルストームさんがパートナーなんだ。よろしくね」

「ふんっ」


 握手を拒否されてしまう。


 やっぱり嫌われているのかな?

 俺は仲良くしたいんだけど……


「全員、ペアを組んだな? じゃ、試験を始めるぞ」




――――――――――




 ペアになった生徒が10分おきにダンジョンに突入する。

 合格条件は、最下層にある『証』を取ってくること。


 とても単純な内容だけど……

 実力を測るためのものだから簡単なのか。

 あるいは、なにか裏が隠されているのか。


 色々と気になるものの、根拠のない推測を重ねても仕方ない。

 ひとまずは目の前のことに集中しようと、ジェイルストームさんと一緒にダンジョンへ突入した。


「……学校が作ったっていうわりに、おどろおどろしい雰囲気ね」


 中は薄暗く、湿気が高い。

 壁を蔦が張っていて、正体不明の茶色の染みがところどころに広がっていた。


「確かに不気味だけど、害はなさそうだし、いいんじゃないかな?」

「判断基準、そこなの?」

「生きているダンジョンとかもあるからね。探索していたらいきなり天井が落ちてくるとか、壁が迫ってきて挟もうとしてきたりとか。あ、そうそう。床が変形して刃になって襲ってくる、っていうのもあったなあ」

「……なにそれこわい」


 ジェイルストームさんは引いている様子だった。

 なぜ?


「……あんた、そんなダンジョンに行ったことがあるの?」

「うん。家にいた頃、自己流で訓練をしていたんだけど、その時に」

「しかも、一度や二度じゃない?」

「えっと……そうだね。何回行ったかは覚えてないや」

「……だから、あれだけの強さを? 私はそこまでの訓練は……だとしたら私の方が……」

「ジェイルストームさん?」

「……なんでもないわ。ほら、先に進むわよ」

「あ、うん」


 二人で探索を進める。

 一層は迷路になっているだけで、なにも問題はない。


 二層に降りると魔物と遭遇した。

 最低ランクのスライムだ。


「私に任せなさい」

「え? でも、ジェイルストームさんは……」

「拳だろうが、いくらなんでもスライムには負けないわよ。はっ!」


 ジェイルストームさんは一気に距離を詰めて、スライムに拳を放つ。

 すると、打撃に耐性を持つはずのスライムが、ぱぁんっと弾けた。


「ふふん、どう? これが私の実力よ!」

「なるほど……インパクトの瞬間、さらに力を入れることで衝撃を伝えているのか。打撃ではなくて、衝撃を伝えることのみを目的とした技……確かに、それならスライムでも簡単に倒すことができるね」

「な、な……なんでわかるのよ!? 私、まだなにも説明していないのに!」

「え? 見えたから」

「……」


 ジェイルストームさんが絶句していた。


「こ、これで勝ったと思わないでよぉおおおおお!!!」

「えっ、ジェイルストームさん!?」


 なぜか駆け出してしまう彼女を慌てて追いかけるのだった。




――――――――――




 一方、その頃のココアは……


「はっ!? なんか今、おもしそうなことが起きたような気がするぞ!」

「アールグレイさん?」


 妙なことを言い出して、パートナーによくわからない顔をされていた。

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