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1話 剣聖と賢者

 剣聖ティアハート・シュバルツァー。

 十八歳の少女でありながら、剣を極めた者に贈られる『剣聖』の称号を持つ。


 彼女に斬れないものはない。


 曰く、鉄をバターのように切り裂いた。

 曰く、家のように大きな岩を一瞬で両断してみせた。

 曰く、その剣圧で海を二つに割ってみせた。


 普通に聞けば、どれも眉唾ものの話だ。

 しかし、彼女の場合は違う。

 目撃者が何人もいて、全ての逸話が『本物』と証明されている。


 その証拠というべきか、ティアハートは単独でドラゴンの討伐を果たしていた。


 世界最強の生き物と言われているドラゴンは、カテゴリーSにランクされている。


 その爪は鋼鉄を紙のように切り裂いて。

 その炎は岩すらも溶かして。

 その鱗はどんな刃も魔法も傷つけることは敵わない。


 ドラゴンに狙われた場合、死を覚悟するしかない。

 神に祈り、身を隠すことしかできない。


 天災と同じだ。

 どれだけ努力を重ねても自然災害に抗うことはできない。

 ドラゴンはそれと同じ驚異なのだ。


 しかし、ティアハートはドラゴンを討伐してみせた。

 たった一人で。


 その日、彼女は『剣聖』の称号を授かり……

 そして生きる伝説になった。




――――――――――




 賢者フィアムーン・シュバルツァー。

 わずか十二歳で、魔法を極めた者に贈られる『賢者』の称号を持つ。


 彼女は叡智を極めていた。


 曰く、千を超える魔法を使うことができる。

 曰く、彼女が使う初級魔法は上級魔法並の威力を持つ。

 曰く、彼女は常人の百万倍の魔力を持つ。


 普通に聞けば、どれも眉唾ものの話だ。

 しかし、彼女の場合は違う。

 目撃者が何人もいて、全ての逸話が『本物』と証明されている。


 その証拠というべきか、フィアムーンは単独で魔王軍の幹部を討伐していた。


 生きとし生けるものの天敵。

 秩序と平和の破壊者。

 即ち、魔族。


 独自の進化を果たして人類と敵対する魔族は、それぞれ強大な力を持つ。

 それこそ、カテゴリーSにランクされるドラゴンと同等の力を持つ。


 魔族と戦い、生き延びた者はいない。

 全て皆殺しにされていた。

 やはりドラゴンと同じく、人間にとって魔族は天災そのものなのだ。

 なにをしても抗うことはできず、ただただ蹂躙されるしかない。

 奪われるだけで、奪い返すことなど不可能。


 しかし、その不可能を覆してみせたのがフィアムーンだ。

 彼女は自慢の魔法を使い、やはりたった一人で魔族を討伐してみせた。


 それがきっかけとなり、魔族と停戦が結ばれることになって……

 その功績と力を讃えられて、フィアムーンは『賢者』の称号を授かった。


 彼女もまた、生きる伝説になった。




――――――――――




 剣聖ティアハート・シュバルツァー。

 賢者フィアムーン・シュバルツァー。


 世界最強の姉妹。

 彼女達の機嫌を損ねれば国なんて簡単に吹き飛ぶだろう。

 まるで、全てを吹き飛ばして猛毒を撒き散らすという古代兵器だ。


 ただ、そんな姉妹にも弱点があった。

 たった一つの、どうしても逆らうことのできない弱点。

 それは……




――――――――――




「ふんふーん♪」


 家のキッチンに立ち、鼻歌を歌いながら鍋のおたまをかき混ぜる。

 その度に香ばしいスパイスの匂いが広がり、ちょっとお腹が空いてしまう。


 軽くおたまですくい、味見。


「うん、良い感じだ」


 自分で言うのもなんだけど、100点満点の出来だ。

 これならきっと……


「「ただいまー!」」


 家の扉が開いて、元気な声が響いてきた。

 それからドタバタと元気な足音が近づいてきて……


「リアン君、ただいま!」

「リア兄、ただいまです!」

「おかえり、ティア姉。フィア」


 勢いよく抱きついてくる姉と妹を受け止めて、笑顔を返した。


 銀色に輝く髪を腰まで伸ばしているのが、姉のティア姉。

 本名は、ティアハート・シュバルツァー。

 『剣聖』の称号を持つ、超一流の冒険者だ。


 ただ、同時にとても綺麗な女性だ。

 背は高くスタイルも良い。

 こうして抱きしめていると、ふわりと甘くいい匂いが香る。


 もしも姉弟じゃなかったら、恋をしていたかもしれない。


 そしてもう一人は、妹のフィア。

 本名は、フィアムーン・シュバルツァー。

 『賢者』の称号を持つ、同じく超一流の冒険者だ。


 綺麗というよりは可愛い。

 そんな容姿を持つ妹は、とても庇護欲をそそられる。

 ティア姉と比べると、ちょっと残念な体型だけど……

 そこはこれからの成長に期待。

 まだ十二歳なので十分に未来はある。


「今日はカレーだよ」

「やった、リアン君のカレーだ!」

「おかわりはありますか? あと、トッピングが欲しいです」

「大丈夫。十人前は用意しているから。あと、トッピングも十種類は用意してあるよ」

「さすがリア兄、妹の心を掴むのがとても上手です」

「とりあえず、二人共、手を洗ってきて。それからご飯にしよう」

「「はーい」」


 俺はのんびり、穏やかに暮らしている。


 剣聖の姉。

 賢者の妹。

 二人共、とてもすごいのだけど……

 でも、家族だ。

 隣にいるのが当たり前。


 そう思っていたのだけど……

 ここ最近、色々と思うところがあるのだった。




――――――――――




「「いただきます、あむっ!!」」


 さすが姉妹というべきか。

 ティア姉とフィアはまったく同じタイミングでカレーを頬張る。

 そして、キラキラと目を輝かせた。


「「んーっ、おいしい!!」」

「あはは、よかった。気に入ってくれて」

「やっぱり、リアン君の作る料理は絶品ね」

「はい。いくらでも食べられます」

「えっと、いくらでも食べたら困ったことになるよ?」


 太る、という言葉は避けておいた。


 女性はとてもデリケートなのだ。

 そのことを姉妹と一緒に暮らすことで身を持って知った。


「うっ、それは困ります。でも、こんなに美味しいと抗うことができません」

「うんうん、本当に。リアン君の料理は美味しすぎるから罪だわぁ」

「ティア姉は大げさだなあ」

「本心よ?」

「私も、ちょうど同じことを思っていました」

「それなら嬉しいけど……」

「リアン君は、これからもずぅーっと、私達のために料理を作ってね?」

「あと、ずっと一緒にいて、隣で笑っていてほしいです」

「……」


 姉と妹の言葉を受けて、しかし俺は、すぐに頷くことができないでいた。


「リアン君?」

「リア兄兄?」

「……ごめん。俺、それはできないかもしれない」


 二人が驚いた顔をした。

 それも当然だ。

 今まで、こんな話をしたことはない。


 でも、俺はもう限界だ。

 二人の冒険者の話を聞いているうちに、色々な想いが膨れ上がり、我慢できなくなってしまったのだ。


 その想いというのは……


「俺……ティア姉やフィアのような冒険者になりたいんだ!」


ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 弟くんの自立を姉妹たちはどう見守るのか楽しみですね〜。
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