Sequence56:初心者は意外に思う
フィールド上にマリンブルーとレッドブレイズの面々が並んでいく。
マリンブルーは先程のキングスフィールド戦からAとBのロングを守っていたメンバーそれぞれ二名を交代させた布陣。
試合が連続する場合に、主軸となるミッドを交代要員から省いた上で、主な攻守を行って消耗の激しいレーン二人を交代候補とするのはデュアルフットにおけるオーソドックスなローテーションの一つだ。
実際、次にキングスフィールドがレッドブレイズとの試合に臨む際でも、ロングを固めていたサフィアスとエリオットが、そもそもまだ初心者でスタミナ不足の問題があることも重なって、交代要員となっていた。
とは言え、メンバーの二人が交代するとはいえ、どのチームも基本的には方針を大きく変えるということは少ない。
マリンブルーはこの試合でも、先程と同じく堅固なディフェンスを基礎とした上での多彩な魔術を軸にしたスタイルを貫くだろうと、エリオットはウィリアムから事前に説明を受けていた。
それに対するレッドブレイズの面々は、合同練習への参加が飛び入りだったこともあり、エリオットにとっては完全に未知数のチームだった。
「レッドブレイズのスタイルは、どういうものなのだろうか?」
エリオットと同じく、先程の試合で初出場を果たしたサフィアスが、ウィリアムに質問を投げ掛けた。
未だ息が整わない状態でもすぐさま情報を整理しようとする姿勢は、確かに次代の宰相候補と言われているだけあると、エリオットは感心する。
「レッドブレイズは……マリンブルーが統制の取れた集団の力で戦うチームだとすれば、圧倒的な個人の力で戦うチーム、ですね。」
「個人の力? チーム競技で、か?」
「ええ。確かに、場合によってはマリンブルーの多彩な戦術以上に、最初は想像が付かないかもしれないですね。でも、恐らく最初のシークエンスから見られると思うので、百聞は一見に如かず。しっかり見ておけば、きっと分かると思います。」
「なるほど。了解した。」
ウィリアムの返答に、質問したサフィアス、そして横で聞いていたエリオットは頷いた。
「礼!」
審判の合図と共にセット・ライン上に並んだ両チームの選手がそれぞれ互いに礼の構えを取り、試合が開始される緊張感が高まる。
「セット!」
セットの声と共に、魔術が展開される。
それを見たエリオットは意外に思う。
何故なら、マリンブルーは、先程と同じく障壁を両サイドのロングに設置する形で盤面を展開したからである。
エリオットは、多彩な戦術を強調されていたマリンブルーだけに、もっと全く別の盤面を展開してくるだろうと予想を立てていた。
「なるほど、こりゃ厄介だな。」
しかし、その近くで、盤面を眺めていたアレクシウスたち経験者は思い当たる節があったのか、何かを納得したような表情で見守っている。
「プレイ!」
その真意をエリオットが問い質す暇もなく、審判の声によって試合開始の幕が切って落とされた。




