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Sequence40:一年生は揉める

「あ、アレンさん!」


 ウィリアムは予想外の人物との再会に思わず大きな声が出る。


「こないだぶりだねー、キングスフィールドの人ー。ウィリアムくん、だっけ?」


 そんなウィリアムに対して、気の抜けたような挨拶を交わすアレン。


「は、はい。ウィリアムです。そんなことより、どうしてアレンさんがここに?」


「ええ? そりゃあ、俺たちも合同練習やりたいからっしょ。夢渡りのデュアルフッターなんて、いままで見たことなかったもん。一日でも早く絶対に逃せない機会だからやりたかったわけ。だから、申し込み送ったでしょ?」


「そ、それは受け取りましたが……」


 そこで口籠るウィリアム。確かに申し込みは受けたものの、既にマリンブルーと合同練習を組んでしまったために後日、改めて誘うと返信を出したはずだった。

 それを先読みしたかのように、アレンが再び口を開く。


「うんうん、でもさ、よくよく考えてみれば、別に合同練習は二校でだけ行うって決まりもないなって気付いたわけ。そうとなったら即行動で、ジャンくんに連絡をしたんだよねえ。」


「な、なるほど。」


 その物怖じしない態度に妙な説得力のあるアレン。

 それに実際、二校でのみ行う必要もないのは事実だった。


「ただ、そっちへ送った連絡が行き違いになってしまったのは、謝罪するよ。本当に申し訳ないと思ってる。実は、レッドブレイズでも、いつも部長から怒られてんだよね。お前は毎度、こうと決めたことに対して突っ走りすぎだ、ってさあ。」


 ほら、こないだの典礼堂の集合でも、走っていくと決めたことを後でめちゃくちゃ説教されたんだ、とアレンがはにかむような表情をしながら苦笑した。


「そ、それであればうちも、マリンブルーへ招待する学校を増やした旨を伝えられなかったのですから、責められる理由があります。ウィリアムさん、申し訳なかった。」


 意外にも頭を下げるアレンは飄々としている割に、常識がない訳でもないらしい。

 そんな彼の姿を見て、ジャンもウィリアムに頭を下げ始めてしまった。


 それを見て寧ろウィリアムこそ慌ててしまう。 


「いえいえ! お二人とも、お気になさらないで下さい。確かにアレンさんの仰る通りですね。どうせなら、二校だけで行うよりも三校で行ってしまうほうがいいかもしれない。それでは、本日は宜しくお願いします、アレンさん、ジャンさん。」


 寧ろ三校で同時に合同練習を行うメリットを考え始めている内に、次第に動転からも立ち直ってきたウィリアムは、改めてアレンと挨拶を交わす。


「さん、はいらないよ。同い年だし、俺も貴族とかじゃあないから。」


 そんなウィリアムに、手をひらひらとさせながら応答するアレン。


 その様子に、話が纏まるかハラハラしながら横で眺めていたジャンがホッと胸を撫で下ろしていた。


「よーし、それじゃあ早速、練習試合と行こうか! 最初に相手をしてくれるのはどっちだ?」


「「え」」


 しかし、アレンの言葉に、二人は一気に固まる。


「いやー、それはまたちょっと話が違うと言いますか」


「そ、そうです。そもそも、我がマリンブルーは合同練習のホストとしてですね」


「うーん、まあ、やっぱそうなるよなあ。ただ、うちもおいそれと譲れない理由もあってなあ。」


 各校における一年生の暫定代表として、各々が主張を重ねていく。

 ウィリアムとしては、今回の合同練習における優先順位はまず、魔術(スキル)の使用に関する経験を補うことを目的としたマリンブルーとの練習試合であった。

 勿論、最初は観察に回るという手もなくはないが、何だかんだ最終的に最も重要になるのは実戦の中で自らの身を以て経験することだとウィリアムは考えているため、譲らずに済むのであれば出来る限り事前プランを貫徹しておきたい。

 しかし当然、他チームには他チームの意図がある訳で、上手く話が纏まるはずもない。


 そうして議論が袋小路に行き詰まろうとしていた、その時だった。


「よし、分かった!」


 唐突に、アレンがポンと手を叩きながら声を上げる。


「な、何です?」


 それに驚いたジャンが彼に尋ねる。


「どちらにせよ、練習試合の前に合同で練習をするんだ。そこで何か、勝負形式のものを行って、その結果で最初に練習試合をするチームを決めないか。」


 ジャンの質問に、アレンはそう提案した。


「勝負形式、ですか。」


「そう、それなら誰も文句を言えないだろ。強かった奴が決めるってことで、公平に行こう。」


「でも、それなら、何で勝負します?」


「それは、マリンブルーとキングスフィールドに任せるよ。何だかんだ、うちは後から入ってきた立場にあるからな。それで負けたとしても、文句は言わないと誓おう。」


 その提案に、ウィリアムとジャンは若干の思考タイムに入った。

 確かに、それであれば、諸々を鑑みた上でのフェアな条件と言えるかもしれない。

 無理を押し通すようでいて、アレンの提案はそれなりに周りのバランスを考えたものだと言える。


 ウィリアムとジャンの目が合う。

 頷く二人。


「「分かりました。それで行きましょう。」」


 こうして、キングスフィールドとマリンブルー、そしてレッドブレイズ三校による練習試合の前哨戦が始まることとなった。

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