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Sequence37:夢渡りは選択する

「はああ、そんなところに居合わせたら、僕だったら寿命が縮まっちゃうなあ。」


 昼食時、裏庭の東屋にて、総会での出来事をウィリアムが説明すると、大きな溜息を吐きながらエリオットはそう言った。


 その周囲ではアレクシウス、ダンデリオン、サフィアス、そしてフレデリックとゲオルギアスも同じように聞き入っている。いや、双子に関しては、そこまで興味を示していないかもしれない。


 最近、ウィリアムはこのメンバーで一緒に昼食を食べることが増えた。

 ダンデリオンとサフィアスは元々、昼食には食堂を利用しようと考えていたらしのだが、流石は第一王子、周囲からの視線のみならず様々なアプローチが男女問わず余りにも激しすぎたため、なるべく人目に付かない場所を探す内、サフィアスと同じデュアルフット初心者組で仲の良いエリオットがウィリアムたちの利用している東屋を紹介した流れで三人が合流。

 双子は、さながら猫が居心地の良い場所を探すようにして、いつの間にかここに居ついていた。


 結果的には、一年生同士、チームの結束を固める意味ではちょうど良いことだとウィリアムは思っている。まあ、他にも一年生はいるので、もっと増えるようならまた考えなければならなくなるかもしれないが、まだダンデリオンに対して緊張せず話し掛けられる一年生メンバーは少ないため、そこまで喫緊の問題というほどでもない。


「確かにな。しかし、一方で燃える話でもある。だって、このキングスフィールド高等学院史上で最高の黄金世代を期待されていた人たちが、誰が一番かを争うために別々のチームに別れて競うなんて、ロマンにも程があるだろう。」


 そう言ったのは、アレクシウス。

 ウィリアムは、いつも自分のことを「デュアルフット狂い(オタク)」とイジるけれど、アレクシウスだって充分にその類の人間だろうと思う。まあ、それを言っても「お前のせいでそうなったんだろう。」という答えしか返ってこないのだけれど。


「とは言え、それだけで転校したとも考えにくいですね。王の名を頂くキングスフィールド高等学校は、やはり国内でも最高学府であるのは事実。それを捨ててまでとなれば、何か他にも思惑がなければ割には合いませんよ。」


 今度は、サフィアスが考察を述べる。


「そこのところは言及がなかったのですか?」


「うーん、さっき話したやり取りの後は、形式的な開会に向けての宣誓とかしかなかったんですよね。」


 サフィアスの問いに、ウィリアムが答える。


「……王子は何か知ってるんじゃあないの。」


 意外にも、それまでは聞いているのか聞いていないのか、よく分からない微妙に興味の無さそうな顔で机を囲んでいた双子の内、フレデリックがダンデリオンに訊ねる。


「いや、私は何も知らないよ。部長とは、臣籍降下してからはそこまで付き合いがなかったからね。」


 ダンデリオンは、その問いに対して、笑顔でそう答えた。


「ふーん……まあ、そういうことにしておきますよ。どうせ、何かあるならその内に分かるんだろうし。あっ、これ美味っ。」


 そんなダンデリオンに対して、そう言って興味を失ったように昼食を再び摘まみ出したのは双子のもう一方である、ゲオルギアス。

 王子に対してここまで不躾な対応が出来る人間はそうそうこの学院内で見当たらないだろうなと、特に意味もない感心をしてしまうウィリアム。


「まあ、でも、実際その通りだな。それより、今は優先順位的に、もっと考えなくちゃあならないことがあるもんな。」


 アレクシウスが再び議論を戻す。


「うん。という訳で、これが例の手紙。」


 そう言って、ウィリアムは懐から色の異なる四枚の手紙を机の上に出した。


「それが、会の終わりに、各校の一年生から手渡されたっていう?」


 その手紙を見つめながら、エリオットが問う。


「そうだね。」


 ウィリアムは頷く。

 いま、ウィリアムが机に出した手紙はエリオットが言った通り、典礼堂での会合後、他チームの一年生たちから渡されたものである。

 そして、レッドブレイズ高等学校、グリーンウッド高等学校、マリンブルー高等学校、アンバーロック高等学校からそれぞれ渡された手紙には、しかし奇しくも同じ内容が記されていたのだった。


 練習試合の誘い。


 それが、別々の手紙に、同じく記載されていた内容。


「で、どうする。受けるのか。」


 アレクシウスがウィリアムに問う。そのことに、誰も異議を唱えない。

 それは、一年生の間では、既にチームのリーダーとして信頼が置かれている現れだろう。


「一応、これまで通りの練習を行う手だってあるんだぜ。テズニア先輩のコーチングは適格だしキングスフィールドデュアルフットクラブとの合同練習だってベテランたちの技を盗むにはピッタリだ。わざわざこちらの手の内を相手に見せることもないって考え方だっておかしくはない。」


 勿論、全てウィリアムがワンマンで決定する訳ではないため、アレクシウスが注釈を入れる。


「……うん、でも」


 しかし、僅かに間を空けた後、ウィリアムが決心したように口を開いた。


「やっぱり、受けようと思う。ウチは、いまグラウンド使用も再開が出来ない状態だし、充実した環境でプレイすることは一年生、特にデュアルフット初心者には必要だと思うから。部長も、存分にやって良いという風に言ってくれていたし。」


「なるほどな、一理ある。」


 アレクシウスが頷き、そして。


「で、本音は、知らないデュアルフッターとやりたい、ってところか。」


 すかさず余計な一言を放り込んだ。


「いや! そんなこと……なくはない、けど」


 第一声こそ大きな声を出したものの、尻すぼみになっていくウィリアム。


「悪い悪い、冗談だって。皆だって理解しているさ。」


 そう言ってアレクシウスが周囲を見渡すと、皆が苦笑しながらウィリアムのことを見ていた。


「あ、ありがとうございます……。」


 その光景に、恥ずかしくて小さくなるウィリアム。


「それで、とりあえず最初の相手は何処にするのか、決まってるんですか?」


 サフィアスが、興味深そうに尋ねる。


「ああ、うん。それは、決まってる。」


 ウィリアムは迷うことなく頷いた。


「最初にやるのは」


 ウィリアムがそう言いながら手を伸ばした先、机に置かれたレッドブレイズ、グリーンウッド、マリンブルー、アンバーロックからそれぞれ渡された手紙の中から選ばれたのは────。

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