Sequence36:主将たちは断言する
レッドブレイズ高等学院の二人がやって来たことによって円卓の席が全て埋まった。これで無事、各校から招集されたメンバーが揃ったようだ。
ウィリアムは、自身が同じ席に着いていることも忘れて、その光景の壮観さに感動する。
正直な話をすれば、去年までキングスフィールド高等学院の黄金世代と呼ばれていた五人の内、四人が他の学院へ転入してしまったと聞いた時は、内心で残念に思ったのは事実である。
幼馴染のアレクシウスにすら「デュアルフット狂い」と言われるウィリアムにとって、五人にそれぞれ得意分野の教えを請えることもあるのではないかと期待していなかったと言えば確実に嘘と言えるのだから。
だが、いま改めて彼らが異なる高等学院の主将を務める形で一堂に会する姿も、これはこれで見応えのある光景に違いない。
「どうした、ウィリアム?」
そんな感慨に耽っていたウィリアムに、隣に座っていたジョルジオが声を掛ける。
「あ、いや、何か凄いメンバーだな、って。」
「そうか?」
「そうですよ。だって、こう言っては失礼かもしれませんけど、去年のキングスフィールド高等学院の二年は注目の的でしたから。同じ学院でじゃあ勝負することは出来ないって諦めていましたけど、正直、仮に別々のチームにいて戦ったら五人の中で誰が一番になるか、デュアルフットのファンで考えたことがない人間はいないと思います。そんなもしもが、いま目の前で実現してるなんて、夢みたいで……」
「あー! それ、俺らもよくやったよね! 先輩たちがそれぞれ別チームにいたら、ってさ!」
話を聞いていたらしいヨシュアが大きく頷きながら同調した。
やはり、たられば話は何処でも共通で行われるものらしい。
「ありましたね、そんなことも。」
マイヤーが、昔を懐かしむような顔で呟く。
「そういえば、先輩で思い出したが、キングスフィールドでテズニア先輩を招致したらしいな。」
「ああ、そうだ。卒業後は領地で忙しい先輩方が殆どだが、テズニア先輩は時間的な余裕があるという話だったからな。それに出来れば、他の先輩たちも可能になり次第、順次呼びたいと思っている。」
ジョルジオが、イザークの問いを肯定し、補足を加える。
「はああ。ズルいよなあ、卒業生だから先輩たち呼び放題って、ウチも後輩に紹介したいのにさあ。」
ヨシュアが大きな溜息を吐きながら愚痴を溢す。
「いや、先輩たちは、後輩たちから呼ばれれば区別せずに協力すると仰っていたぞ。それに、学院によっては、領土が近くて呼びやすい先輩もそれぞれ違うだろう。ウチはたまたま、それがテズニア先輩だったというだけのことだ。」
「まあ、それもそっか。」
ジョルジオの反論にあっさりと引き下がるヨシュア。実際のところは、特に文句があった訳でもないのだろう。
単に雑談の中で軽口を叩いただけ。お喋り好きで、非常にフランクな選手。
初対面ながら、ヨシュアは非常に分かりやすい性格をしているとウィリアムは思った。
そして、それは他の部長たちも同様だった。
例えばイザークは世話焼きで正統派な兄貴分。マイヤーは冷静で真面目な分析家。キアーノフは無口にどっしり構えた親分気質。
そして、それぞれの性格は、そのままプレーのスタイルにも違いを生み、個々が特色のあるスタイルを持っていたからこそ、この世代は人気を集めていたのだろう。
それが、黄金世代で誰が最も強いのか、議論が絶えなかった理由とも言える。
デュアルフットのファンであれば、やはり自分の中で理想とするスタイルを思い描いているものだ。
それに最も近いと思われる選手を応援したくなるのが人情というものだろう。
「ところで、質問しても良いっすか。」
そこでふと、アレンが挙手と共に発言した。
「何だ、アレン。」
いきなり隣で手を挙げたアレンに、直属の先輩であるイザークが質問を受ける。
「さっき、先輩たちも、去年の三年生たちの中で誰が最も上手かったか議論していたって仰ってましたけど」
そのまま続きを促されたアレンが、何の気もなく投げ掛けた質問は、しかし、場にいきなり投げ込むには余りにも率直に過ぎるものであった。
「じゃあ、先輩たちの世代では、先輩たちの中で誰が勝つって話になったんすか?」
「俺だ。」
「自分だ。」
「僕でしょ。」
「私ですね。」
「……我」
即答が重なる。
その五重奏によって、先程まで和やかだった部屋の空気を一気に引き締めた。
「──変わらないな、皆。」
「ハハッ、そうだな。」
「そりゃ、変わる訳ないし。」
「その通りですね。」
「うむ。」
再び先輩たちが口を開くものの、それぞれの間にはバチバチと火花が散っているかのように感じる。
「なるほどお、分っかりました!」
その光景を見て、質問したアレンが笑顔で頷く。
「じゃあ、今年の試合は、それを実際に決めるためなんすね!」
返答は無い。
だが、それが事実であることを、アレンだけでなく、ウィリアムや、他の一年生たちも肌で感じ取っていた。




