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Sequence1:夢渡りは断罪される

web小説、初投稿です。

宜しくお願いします。


(※キーワード「残酷な描写あり」や年齢制限「R15」は保険です)

 語られざる英雄(ヒーロー)の物語。その始まりは、勇者や賢者といった言葉で呼ばれるような、周囲から憧れられる者には決して似合いそうもない場面からスタートすることになる。


「ウィリアム! 貴様の入部届受理を拒否させて貰う!」


 発された大音声の衝撃に、立食パーティーを楽しんでいた生徒たちが手に持っていたグラスの中身が大きく揺れる。王都の中心街に広大な敷地を誇る王立キングスフィールド学院。その敷地内のクラブ・ハウスで行われていた新入部員歓迎パーティーのフロアに雷の如く響き渡ったのは、豪華絢爛に彩られた目出度い席にはそぐわない、ビリビリと肌に衝撃を感じるような荒々しい上級生からの怒号だった。


 ただ、身体に直で大音量の衝撃を受け止めてはいても、いきなり上級生たちに囲まれて混乱しているウィリアムの頭は、いま耳にした言葉の意味まではすぐさま理解することが出来なかった。


 そうでなくとも、何せこれからの学園生活に人一倍の期待をしていたウィリアムにとって、入部が拒否されることなど考えたこともなかった想定外の事態なのだ。


「も、申し訳ありません、自分が何か式典で粗相でもしましたか……?」


 それでも、ウィリアムは如何にも怒り心頭といった様子に見える上級生に向けて、辛うじて絞り出すように質問する。


 思い当たるとすれば、この学院が元々は高位貴族を対象として設立された教育機関であったが故に、特待生枠で入学した自分が把握していない何かしらのルールに反してしまったのかもしれない、ということ。少なくとも、その程度の理由しかウィリアムの脳裏には浮かばなかった。


 しかし、ウィリアムの目前で顔を真っ赤にしている上級生たちは、粗相などというレベルでは済まなそうな剣幕で更に捲し立てる。


「そんな生易しい問題ではない! 貴様をいまここで入部させてしまえば、王の名を冠するこのキングスフィールド学院で最も歴史の長い、伝統あるデュアルフット部に泥を塗ってしまいかねん!」


 上級生たちの言葉で、余計にウィリアムの頭は混乱していく。何故なら、自分たちはつい先程に入学記念式典を終えたばかりの新入生で、学院での生活自体が初日であった。

 式典のマナーなどに問題があったならともかく、それ以外には文字通りまだ何もしていない状況で、果たして何がそれほどに上級生から怒りを買ったと言うのだろう。


 理由が分かるなら謝罪なり反論なりを口にすることも出来たかもしれない。だが、そもそも理由が不明なため、何をどう言っていいのか分からないウィリアムはオロオロと狼狽えるばかり。


 そんな姿を見兼ねて、ようやく一人の生徒がウィリアムと上級生との間に割って入った。


「おい、先輩さん方よ。こちとら校内や部内での上下関係について礼儀を欠くつもりはねえ。だが、だからこそ、そっちだって突然そんな言い草が許される訳もねえよな。」


「あ、アレク……。」


 割って入ったのはウィリアムと同じ新入生で、古くからの馴染みでもあるアレクシウス・ウォールゲイト。アレクシウスは炎のように逆立つ赤髪の下で鋭く輝く碧眼で上級生たちを睨みつけながら、威圧するように震える低い声を発していた。


 通常、アレクシウスにこうして凄まれれば大抵の人間は多少なりとも怖気づいてしまう。実際、先輩たちの大半は僅かにたじろいでいる。

 しかし、そんなアレクシスの乱入にただ一人、上級生の中からまるで予想通りというような顔で焦ることなく、寧ろ待ち構えていたかの如く不敵な笑みを浮かべながら迎え撃つように前に一歩出る者がいた。


「ほう。本当に貴殿が庇うか、アレクシウス・フォン・ウォールゲイト。飛んで火に入る夏の虫とは、このことやもしれないな。」


 一歩前に出た先輩はそう言うと、続けてようやくいまウィリアムが責められている理由を告げる。


「ウィリアム。実は、貴様が何の能力もないにも関わらず、これまで周りの貴族たちに取り入り、無辜の他人を蹴落としてこの学院に特待生枠で入学してきたなどという匿名の告発が、今年度の新入部員監督生である私、フェルディナンド・ディア・ナルシスの元へ事前に届けられていた。」


 フェルディナンドと名乗った上級生は、アレクシウスに負けず劣らず威圧感のある声で淡々と述べていく。


「当初は到底、信じ難い内容だった。しかし、その手紙には、告発すればアレクシス・フォン・ウォールゲイトが擁護にくるはずだと書いてあってな。その通りにこうして予言のような光景を目の前で見せられては、信じざるを得ぬだろうか。」


 しかし、フェルディナンドの告発した罪状に全く身に覚えの無いウィリアム。


 当然、媚びを売られたなどという心当たりの無いアレクシスも、尚更に語気を荒げる。


「ハァ!? 匿名の告発なんて適当な理由でこいつを訴えようってのか!? ここがそんな非常識の罷り通るような学院なんだとすりゃ、入学したのはとんだ間違いだったぜ!!」


 そして、アレクシウスの言葉がどうやら逆鱗に触れたのか、先程まで大人しくなりかけていたフェルディナンド以外の上級生たちも激昂し始めた。


「ッ貴様、誇り高きこの学院を侮辱するか! 如何にウォールゲイト辺境伯子息と言えども、その口の利き方と共に、見過ごせん!!」


「最初に俺らを侮辱してきたのはアンタらだろうが!! それに、こっちがちらつかせてもいない家の名前を勝手に持ち出すんじゃねえ!!」


 未だに混乱中のウィリアムを置き去りにしたまま一触即発といった様子の面々。


 その状況に対して、平民であるウィリアムは勿論、周囲を囲んでいた貴族の生徒たちすらどうして良いのか判断が付かず、口を開くのも躊躇われるようだった。


 だが、そんな混沌とした場を、たった一声で静める者が現れる。


「おやおや、これは一体、何の騒ぎかな?」


 響いてきたのは、柔らかく涼やかだが、何処か超越的で逆らうことの出来ない声。


 その声の元を皆が視線で辿ると、そこに立っていたのは如何にも高貴な印象の顔立ちをした青年だった。


 その姿を見た途端、その場にいた生徒たちが皆、即座に膝を折る。


 ウィリアムも、反射的に周囲と同じようにすぐさま頭を垂れる。実際にその姿を目にしたのは初めてのことであったが、ウィリアムですら、いま目の前にいるのが誰か、知識としてなら知っていた。


 輝くような金髪と全てを見通すように落ち着いた蒼眼という青年の特徴的な姿。それはこの国を治める王族のみが持つもの。


 そこにいたのは、王位継承権筆頭、第一王子のダンデリオン・エルド・キングスフィールドその人だった。


「僕に、ちょっと状況を説明してみないかい? もしかしたら僕なんかでも何か助けになれることがあるかもしれないからさ。」

ある世代の人にとってファンタジーには架空競技が付き物ではないかと思います。

寧ろ、そっちをメインに楽しんだ方も多いのではないでしょうか。

そんな想いを基盤に、試行錯誤しつつ頑張ってみます。

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