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妹が私の婚約者と密会してました

作者: 滝川 千利

遠くない昔、夢見る乙女だった頃もあった。結婚した人と愛の道を進むのだと信じて疑わなかった幼いころが懐かしい。


あの頃は良かったと言いたいほど歳もとってないマリアは目の前の光景にため息をつく。


学園の帰り道、たまたま一緒になった幼なじみ男爵家次男アルトと我が家の温室でお茶でもしようと帰ってきた。


温室に近づくと手を取り合う2人の男女の姿があったのである。遠くからでも聞こえる声でふたりは愛を確かめあっていた。


「あぁアルゴ様、なぜ私達は一緒になれない運命の2人なんでしょう。こんなにも愛し合っているのに。お互い婚約者がいる身で引かれ合ってしまったのは、運命のイタズラ…いえ、神の試練なのでしょうか?」


「私の麗しの愛しいリリアよ。私達の真実の愛はきっと神様が見ていてくださる。私達が愛し合っているのがわかれば、きっと婚約者達もわかってくれるだろう」


「そうですわ。わかってくれますよね。私の傲慢な姉は」


「わかってくれるだろう。私のひねくれてる従兄弟は。」


離れていても聞こえてくる会話を聞きながら額に手をあてる。


「傲慢な義姉君、バカな妹がバカなことをいっていますけど。いいんですか?あれ」


後ろから呆れた声のアルトが聞こえる。


「ひねくれてる義弟よ、アホな貴方の従兄弟がアホなことをいってるけどいいの?それにあのバカな妹はアルトの婚約者なんだからね」


「あのアホな従兄弟はマリアの婚約者ですよ」


ふたり揃って目を合わすと大きなため息をつく。私達は振り返って父の書斎に向かった。


父との話が終わって各家に伝達を送り、また温室に戻ってくる。まだバカカップルが茶番劇をしていた。


今度は温室の中に入っていく。

私達に気づくアルゴがリリアを庇うように前にでた。


「なぜ?ここに?」


いや、私の家だからいてもおかしくないだろっと突っ込みたいのを我慢する。


「お姉さま、アルト様、ちょうどいいとろこに。私達は愛し合っているのです。愛し合う私達に嫉妬はしましょう。でも引き裂くなんて傲慢すぎます」


いや、なんで堂々と浮気された私達が悪者みたいになってるの?昔から思い込むと手がつけられなかったけど、ますます酷くなってない。


「リリア、先ほどふたりの婚約解消をお父様に言ってきてわ。アルゴ様の家にも伝言を飛ばしておりますので安心してください。問題なくことは進みますので」



一瞬驚いた顔を見せたが、手を取り合って喜びあった。


「神様はきちんと私達はの愛を見てくれていたのね。アルゴ様」


「あぁ僕たちの愛は海より深くて尊いものだから」


いや、もうそれはいいから…

呆れた顔でふたりの様子を眺めていると、アルトが肘でつついてくる。あまりにも酷い茶番に意識が遠のくところだったわ。


「あぁそうだリリア、婚約解消はしたけどあなた達はまだ愛の試練?だったけ?それはクリアしてないわよ。お父様は今回のことお怒りだから、あなた達が一緒になるなんてできないかもね」


リリアはギョッとしてこっちを見る。


「お姉さま私に婚約者を取られて嫉妬するのは分かります。でもそんな仕打ち酷いじゃありませんか」


「私のせいじゃないわよ。それに嫉妬なんてしてないから安心しなさい。思い込みもここまでくると可愛くないわね…リリア真実の愛の為にお父様を説得してきたら」


リリアは私を睨むとアルゴの手を引き、父の書斎に走っていく。


残された私達は本来の目的であったお茶をすることにした。


「ごめんなさいね、アルトを巻き込んでしまって」


「もともと両親が勝手に決めた婚約だったし、マリアは気にしなくていいよ。こちらとしては従兄弟が迷惑かけたね」


ふたりで謝りあうと、どちらともなく可笑しくて笑いだす。


「大丈夫よ。なんとなくアルゴ様の視線の先を見てたらわかっていたもの」


アルゴ様は始めて会ったときからリリアに恋をしていた。私はこうなる予感はしていたけど、妹はアルトの婚約者なのだからと心の奥に隠していた。


「悲しいの?好きだった?」


心配そうに見つめるアルト。


「悲しいわけじゃいの。ただ大好きなアルトが傷つくのが見たくなかっただけ…」


言ってからハッと気づいく。今私何言った?頬が熱くなるのがわかる。アルトの顔を恐る恐る見ると優しく微笑んでいた。


「嬉しいな、マリアがそんな風に僕のことを考えていたなんて。弟どまりなら近くにいれたらいいと自分に言い聞かせてたけど。危なかった、ほんとに義弟になるところだったよ」


アルトに手を捕まれて手の甲にキスをされる。


「大好きだよ。マリア」


もう一度キスを落とされる。


「お互い婚約者が居なくなったことだし、これで今までの思いの分をマリアに伝える事ができるよ。楽しみにしててね」


真っ赤な顔の私を見てアルトは嬉しそうに笑っていた。その笑顔でもう胸いっぱいの私は、


「…少しづつでおねがいします」


小さな声で伝えるので精一杯だった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 悪いとは思いませんが、アルト以外の身分がハッキリしないのがモヤモヤしてます(笑)
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