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つちのこうやのラブコメ (それぞれ別々にお読みいただけます)

クラスのイケメンを次々と瞬時に振って有名になったクラスの冷淡な美少女が、初雪の日に歌を歌いながら雪だるまを作っていたので話しかけた結果


 クラスがどんよりとした雰囲気になっている。


 クラスの中心人物が暗いだけでこうなるのか。


 クラスの中心人物すげー。


 僕なんか欠席しても気づかれなかったぞ。


 それで出欠確認の雑な先生の授業に出席したことになってたわ。


 おかげで未だに無遅刻無欠席なことになってるぜ。


 いや今その変な自慢はいらないか。


 暗い雰囲気の教室に場面を戻そう。


 クラスでいつも陽キャパワーを球形の波として放っているイケメンたちが、みんな寝ている。


 寝てるというか呆然としている。


 どうやらみんな同じ人を好きになって、みんなで告白してみんなで振られたらしい。


 いや、いつもつるんで同じ行動パターンとってるから同じ人を好きになるんじゃないのかな。


 普通もうちょいそれぞれの恋愛するだろ。


 と、恋愛をほぼしたことがない僕が言ってみましたごめんね。


 

 と、その時、教室の前方のドアが開いた。


 入ってきたのは一人の女の子。金山花乃かなやまはなのである。


 大人びた歩き方。姿勢が良く、スタイルの良さがわかる。あと目が冷静。未来予知でも常時行ってそうな目である。


 そんな彼女は、総合すると綺麗だ。


 しかし、なぜか妙に観察力がある僕は、どこか幼さも感じた。


 まあそれはいいとして、あの金山さんこそが、イケメンたちを振って、教室を暗くするのに貢献した人だ。


 こっそり告白現場に行った人のしゃべり声を聞く限り、かなりあっさり振ったらしい。


「ごめん興味ないわ」×3って感じで。


 まあ興味ないならないでしょうがないんだけどね……。


 いや偉いよでもイケメンたち。僕は告白したことないからね。勝負しただけ本当に偉い。


 と尊敬の念を送っても、イケメンは元気になるはずもなく、なんとなくさらに寒くなった。


 と思ったら本当に気温が低くなってきたみたいだ。


 天気予報だとたしか雪もワンチャン降るんじゃなかったかな。今夜あたりに。


 家の前の雪かきやらされるのはどうせ僕だろうなあ。と嘆きつつ、僕は静かな曇り空の午後をすごした。


 

 

 そしてそれから家に帰って、夜。


 ふと外を見れば、街灯に照らされて光っている雪が舞っていた。


 おお。本当に降ったか。


 僕は思わず冷たい窓ガラスに手を当てて、外を眺めた。


 明日には積もりそうだな。頼むからうっすらくらいにしてくれ。


 



 次の日の朝。


 きたー! と僕は喜んでいた。うっすらだった。


 雪かきの必要はないだろう。


 だけど雪の世界にはちゃんとなってる。


 これくらいがいいんだよこれくらいが。もう昼には溶けちゃうかもしれないけどね。


 僕はいつもよりも少し早めに、登校の準備を進めた。


 欠席しても気づかれないくらいなのに、雪だからちょっと早めに出るの偉いでしょ。完璧だね。


 


 家を出てしばらく歩くと、公園の前までやってきた。


 公園も真っ白だわ。


 おおー。


 雪だるまつくってるこどもがいる。

 

 いやこどもって言っても結構背は高い。小六くらいだろうか。


 と思ってよく見たら、なんと、金山さんだった。


 え、金山さんって雪だるまつくるの?


 二歳くらいから雪だるまなんてくだらないとか言ってそうな雰囲気なのに。


 僕はあまりに驚いたので、こっそり公園に入ってしまった。


 歌が聞こえた。


 金山さんの声。だけどいつもの金山さんのちょっと冷たげな声と比べて、圧倒的に可愛い。


 いやまじか。可愛いな。


 うおおおおおお。


 なんかいい感じにそこらへんの雪を握りしめたくなるくらいだぞ。


 そしてこっそりそれを金山さんに当てたら、可愛いく驚いたりして。


 とか色々と考えたけど、普通に声をかけることにした。


「あ、おはよう」


「ふぃ! あふっ。あ、浜島くん。お、おはよう……」


 そう言いながら、丸くするために撫でていた雪だるまからパッと手を離し、一瞬で冷淡になった。


「……公園の中を通りかかるなんて珍しいのね」


「あー、いや雪だるまつくるの楽しそうだなって思ったから」


「……! こ、これはあれよあれ。近所の子どもたちが公園に来た時に雪だるまがあると喜ぶでしょう? そのために作ってるのよ。仕方なく。社会貢献ね社会貢献」


「なるほど」


 すごいな。クラスの冷淡な美少女の金山さんは、社会貢献もできてしまうのか。


 歌を歌いながら仕方なく雪だるまを作ってたわけだね。可愛いわ。


 だめだ。こういう冷淡なのに実は純粋な女の子好きなんだよね。


 告白してもどうせ振られるのに。


「さ、社会貢献も終わったことだし学校行きましょう。浜島くんも行かないと、雪道だから歩くの時間かかるわよ」


「たしかにな」


 そこについては心の底から納得いたしたので、僕は金山さんと、公園を出て学校に向かい歩き始めた。


 金山さんの手ぶくろには小さな雪がたくさんついていた。雪だるまを作った名残だ。





 金山さんと初めてこんなに話した気がする。


 というのも、ずっと話しながら学校に向かっていたからだ。


 しかしまあ冷淡モードな金山さんなので、ただの日常会話みたいなことしか話していない。


 でも。


 それでも金山さんはやっぱり冷淡じゃないところあるぞと思った。


 なぜなら会話していて、ちゃんと楽しかったから。少なくとも僕は。




 学校についてからはいつも通りで、金山さんとそんなに話すことはなかった。


 そして今日も今日とて放課後。


 僕は帰り道、朝金山さんと会った公園にまた行ってみた。


 すると、雪だるまはまだそこにあった。


 子どもたちにめっちゃいじられていた。


「かなり人気者だな……」


 そうつぶやいて、そして雪だるまの方に歩こうとしたら、ふと後ろに人影が。


 金山さんだった。


 うわすげーにこにこ。イケメンたちを素早く振って落ち込ませたとはとても思えない。


「よかったな。子どもたちが喜んでるな」


「ええ。仕方なく作ってよかったわ」


「仕方なくの割には歌を歌って楽しそうに作ってたじゃんか」


「え……それ聞いてたの?」


「きいてた」


「で、でも朝は言ってなかったじゃんっ」


「朝はな」


「そ、そういうの後出しにするのずるいよ」


 あれ? 意図せずとも僕の方が優勢?


 やったぜ。


「なんていうか……子どもたちが喜んでるのはさ、金山さんが楽しく作ったからなんじゃないかなって思うんだ」


「た、楽しく……? まあそうね。それはそうね。あなた、現代文22点なのにいいこと言うわね」


「な、なんでそれをしってるの?」


「たまたま見えたわ」


 そう冷たく言う金山さん。


 だけどにやけてる。


 よっぽど嬉しいんだな。雪だるまが愛されてるのが。


「ねえ、あなたは、私が雪だるまつくるのが好きでも馬鹿にしないの?」


「しないよ」


「そ、そうなの?」


「うん」


「私、中学生のとき、雪だるま作ってたら、すごく友達に馬鹿にされたから……」


「そうなんだ。いやそいつらひどいな。雪だるま作るの楽しいと思うのに」


「そ、そうだよね? ……お母さん以外に初めて共感された……」


「それはよかった」


「じゃあさ、一緒に雪だるま作ろって言ったら、作ってくれるの?」


「いいよ。作りたいな」


「や、やった。じゃあ溶けないうちに今から」


「おお。じゃあ朝金山が作ったのよりもでかいの作ろうな」


 段々と僕もかなり雪だるまを作りたくなってきた。


 そして金山はもう気づいたら雪を丸め始めてた。


 なので僕も負けないように丸め始める。




 そしてそれから一時間。


 金山さんの身長ほどの雪だるまができて、子どもたちが集まってきていた。


「うわあ。満足ね」


 それを離れたところから見ている金山さんは、もはや子どもだった。


「ねえ、浜島くん」


「うん」


「私ね、最初に彼氏作るなら、雪だるまを作るのを馬鹿にしないような人がいいなって思ってるの」


「なるほど」


「ということで、浜島くんは保留ね」


「ありがとう」


「な、なんであっさりお礼言うの? まだあなた告白してないじゃないの! リズムがおかしいわ」


 可愛いなあ。


 まだ告白こそしてないものの、冷たいのにちゃんと可愛い、そんな雪だるまのような金山さんは素敵な女の子だな、と僕は実感していた。


お読みいただきありがとうございます。

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