主人公になりたい。
月曜日のこと
今日は晴れた。久しぶりの強い日差しに目が眩んだ。僕は学校へ向かい、窓際の席で授業を受ける。
君は一時間ほど遅刻してくると、僕の隣の席に座った。仄かに苦い香りが漂う。
昼休みになると君は、当たり前のように姿を消した。
水曜日のこと
君は珍しく、昼休みが終わる前に教室に帰ってくると、本を読み始めた。
本の名前は、恥ずかしいからと教えてくれなかった。
少しだけ、トランプをした。やり方がわからないという君をみんなが笑った。一からババ抜きを教えて、二人で飽きるまでしていた。
木曜日のこと
放課後、教室にいる僕に、ぽたぽた、と雨が降った。顔を上げると、びしょ濡れの君がいた。僕がハンカチを差し出すと、それを無言で受け取り、ずっと握りしめていた。
雨は降り続け、土砂降りの中を、君は帰っていった。
最後の月曜日のこと
君は学校に来なかった。教室がやけに静かに感じた。
終焉
この人生が、読み終わって少しでも面白いと思えるものならいい。本が好きだった君は、きっとそう思いながら目を閉じたのだろう。
でも、できるならば、
主人公になりたい。
そう言っていたことを僕は忘れない。
ずっと君は、僕の主人公だったよ。
この本の中では永遠に君が主人公でいてね。