世界一強力なブラスター(後編)
「かかってこい!カニ鍋にしてやるぜ!」
重機の様なハサミを持つ奴に、オレたちは武器を構える。
先に仕掛けたのはアリアだ。自身を車輪の様に回転させながら太刀を甲羅を斬りつける!
「喰らえ!雷断龍刃!」
アリアの斬撃は甲羅に深い傷を負わせたものの、岩石ダマシガニの血肉に達する一撃ではなかった。
そればかりか斬りつけた太刀が甲羅に食い込み、抜けなくなってしまった。
「抜けろぉぉぉぉぉ!!!」
歯を食いしばりながら引き抜こうとするも叶わず、アリアは振り落とされてしまった。背中から落ち、むせながらもアリアは懐刀を出し、逆手で構えた。
「不覚…!こいつ普通のダマシガニよりもかなり硬い!刀を取り返さないと……」
「心配するな、取り返してやるから」
オレは左手でアリアを静止し右手でビームブラスターを山脈カラッパに向けた。
アリアの強烈な一撃も効かない様な相手だ。ビームブラスターが効くかどうかもわからない。だが、この場でオレだけが奴に対抗できるのだ。
巨大なハサミを軋ませながら岩石ダマシガニはゆっくりとこちらに歩み寄る。オレは腹をくくり、両手でブラスターを構えた。
「かかってこいよ、臨むところだ」
オレは襲いかかる巨蟹にゆっくりと引き金を引いた……!
その時、轟音と共に強力なビームがブラスターから放たれた!ビームは岩盤の様な岩石ダマシガニの甲羅を貫通し、風穴を開けた!
生命力の強い岩石ダマシガニといえど、甲羅を熱線で貫かれ、周りの細胞が沸騰する一撃を耐えれるわけもなく、ひっくり返って泡を吹いたのち、絶命した!!
―――
「アンタ、なんなのその武器は…?」
岩石ダマシガニの亡骸から斬馬刀を引き抜きながらアリアは言った。
「これはビームブラスターだ。熱線を照射してターゲットを貫く鉄砲だよ」オレは答える。
「ネッセン?テッポー?とにかく強い武器なのね。ホントアンタが雑魚呼ばわりされてたのを疑問に思うわ。冒険者ギルドに集まってたギフターどもよりもうんと強いじゃない」
オレだって疑問に思っている。今のブラスターの威力を見るに、明らかに「原作よりも強すぎる」のだ。設定ではビームブラスターの威力はリミッターによって抑えられている。
「フリーダム・ファイター」は超能力も特殊な戦闘スキルも持たない一般兵士であり、訓練は受けているが百発百中で的に当てることはできない。そのため、彼らが装備するビームブラスターは数撃ちゃ当たるの精神で出力を抑えて球数を増やした。というものが設定である。
「あんなビーム、出せるわけねーんだよな…どーなってんだ?」
オレは銃身を弄びながらつぶやいた。