表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

第一話 遥か彼方の異世界で

オレは目黒 馬理雄目黒(めぐろ)馬理雄(まりお)。ひょんなことから事故に巻き込まれて死んでしまい、中世ファンタジー世界ダイエルン王国に転移した男だ。


この世界にはオレのように若くして死に、転移した奴らが多くいる。そいつらは「ギフト」と呼ばれる特殊能力を与えられ、その能力を活かして暮らしている。人々は転移した奴らを「ギフター」と呼んだ。


ギフターであるオレにも同様に「ギフト」が与えられたのだが――


「クスクス…」「笑うなよ…可哀想だろ」「だってあのカッコ…」


星宙間(せいちゅうかん)大戦(たいせん)」というSF映画をご存知だろうか?圧政を敷く悪の宇宙帝国に正義の革命軍が自由を求めて戦う作品だ。

オレに与えられた「ギフト」はその作品に出てくる正義のヒーロー…ではなく、帝国の騎士でもなく…


やられ役である「フリーダム・ファイター」と呼ばれる革命軍の兵士になる能力だ。


もっさりとした灰色のパワードスーツ。バケツのようなヘルメット。敵役の幹部に簡単に弾かれてしまうビームブラスター。原作を見ていない人も一目で分かるようなザ・やられ役だ。


確かにこの映画、大好きだが…なるんだったら主役級のキャラになりたかったな…


冒険者ギルドに所属し仲間を募集しているが、こんな見た目の奴に「一緒にどうですか?」なんて声をかける物好きなんているわけがなく――


冒険者ギルドの掲示板にある「チームメンバー募集」の張り紙を見て面接に行き、落とされる毎日。


こんな日々が1月くらい続いている。ギフターどもはオレのことを「雑魚キャラ」と嘲笑している。異世界の住人たちはそれを見て同じように嘲笑している。


オレについて来る仲間なんていないし、オレを仲間に入れてくれる奴もいない。仲間を集めることは諦めてクエストボードの前に立ち、適当な依頼を探す。すると――


「おい、イモヤローにこなせる依頼なんてあるわけねーだろ?」


絡んできたのはガラの悪そうな茶髪の男だ。後ろには取り巻きが何人か立っている。ギフターのチームか。


「リュージくん、オレ知ってるぜ!コイツ映画のやられ役のカッコしてるぜ!」取り巻きの1人が茶髪の男に言う。


「マジでザコなのかよ!キモっ!」「ギャハハハハハ……」茶髪と取り巻きがオレを嗤う。やられ役とはいえ、好きな映画のキャラクターが何も知らない奴にバカにされているのは不愉快だ。言い返そうとした時――


「古臭えジジイオタクの映画のキャラとかキメぇんだけどw」と茶髪が言いやがった。


たしかに第一作目は80年代に公開されたが、今でも最新作が出ているし、外伝作品も多数発表されている人気コンテンツだ。SF作品では最先端と言っても過言ではない優れた作品だ。こんな奴にバカにされる所以はない。


口で言うよりも先に手が出てしまった。軽く茶髪の頭にゲンコツを入れるつもりだったが――


ドカン!!!!


軽くゲンコツしたつもりだった。だが茶髪はフローリングに頭をめりこませ、ノビていた。取り巻きはその光景を見て絶句した。


――今から思えば当たり前だ。設定上では「フリーダム・ファイター」が着るパワードスーツは人間の力を最大10倍まで強化する装備だ。軽いゲンコツでも生身の人間が耐えうる威力ではないことは確かだ。


「……フリーダム・ファイターってもしかしたら強いんじゃね?」そう思ったオレは一番難易度が高い依頼書をクエストボードから破りとり、一部始終を見て固まっている受付のボーイへ渡した。「岩石ダマシガニの討伐依頼」と書かれてる依頼書だ。このクエストをクリアして嗤っていた奴らを見返してやる。オレはそう決意し、メットを被り、ビームブラスターを腰に差して酒場を出た。



――「ふーん、アイツ強いんだ…」バーカウンターに座っていた金髪の少女は不敵に笑う。「あたしの仲間に相応しいわね、カッコは変だけど」少女はグラスに残っていたミルクを飲み干し、馬理雄のあとを追った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ