タマの日常
ようこそこの作品にへ!
いーっぱいコメントしていってくれよな!
今回もよろしくお願いします。
前作と世界線が同じです。前作もよければどうぞ。
ある休日の昼下がり。今日も私はリビングの絨毯の上で昼寝をしていた。ちょうど昼ご飯を食べたばかりでこのままいい眠りにつけそうだ。
そこへご飯を食べ終わったばかりのエリカがやってきて
「タマってよく寝てるよねー」
と言いながら腹をくすぐってきた。
―おいおい、今眠りにつくところだったのに…
恨みを込めた目でジトっとにらむと、エリカは「ブサイクな顔だねー」とさらに腹をくすぐってきた。
―眠気も飛んでしまったな
私は絨毯から起き上がり、昼寝場所を移動することにした。
それにしてもさっきエリカが言っていたように、よく猫は寝ている、という印象を抱かれがちだ。だがここで言わせてもらおう、人が疲れをとるために眠るように、猫も日ごろの疲れからリフレッシュするために寝ているのだと!
―何、そんなに働いているところを見たことがない?それはな、君たち人間の知らないところで働いているのだよ!猫だってちゃんと仕事があるのだから!
その日の夜…
「おやすみー」バタン。
10時を過ぎてエリカが自分の部屋に戻った。おそらくこのまま寝る用意をしてベッドに入るだろう。
「それじゃあ僕らもそろそろ寝ようか」「そうね、そろそろそんな時間ね」
エリカの親はあまり夜更かしをしない。いつもエリカが寝てから30分ぐらいで寝る用意をし始める。
テッテレーテッテレー…
そして時計が11時を示すころに両親が寝室に行き、私の寝床があるリビングは真っ暗になった。
―今夜もそろそろか
私は寝床から出て体を思いきり伸ばした。いつだかテレビで見た「ラジオ体操」とやらを参考に体を曲げ念入りに柔軟をして今から始まるであろう仕事に向けて準備をする。
―こちらの準備は整った
そうして相手の出方を待つこと30分。
カサ、コソ、カサコソ…
―今日も来たか。
今から始まる仕事に向け武者震いが走る。
ーさあ、いくぞ!
ところで人間の諸君は不思議に思ったことはないだろうか。
「1匹見たら30匹いるっていうけど、全然見なくね?」と。何のことかって? もちろん奴に決まっているだろう。
闇に溶け込む黒装束。どこにでも現れる機動力。どんなものも食料にしてしまう貪欲さ。天然痘なる病を地球上から完全に葬り去った人間にすら駆逐しきれない繁殖力。その強さから真の強者にしか与えられない称号「コードネームG」を命名された。
そう、ゴキブリだ。
その行動範囲の広さは尋常ではなく、この家もそれは例外ではない。主に人が寝て敵がいない夜中に大軍で押し寄せ、エリカがこぼしたポテトチップスのかけらや机の上に置きっぱなしのおせんべいなどを奪い去ってゆくのだ。
もうお分かりだろう、そう、私の仕事とはこの闇の軍勢からこの家を守ることなのだ!
―今日はずいぶん数が多いな…昨日は小型が3匹だったから難なく倒せたが、今日のは少してこずりそうだ。
敵は5匹ほど。まずは食料をあさるようで、アジトのテレビ裏からまっすぐ台所やダイニングテーブルに向かって進んでいる。
当然この家の警備隊(私のことだ)の存在も知っているので、隊列をきちんと組み、襲撃を仕掛けてくるものに対処できるようにしている。
―このままでは隙が無いな…
そんなことを考えながら寝床から見張っていると、急にGの様子がおかしくなった。あわただしく動き回り、何かの準備をしているようだ。
―集会でも開くつもりか?これは一網打尽のチャンスだぞ。
しかし、Gたちが行うものは集会などではなかった。
アジトから巨大なGが姿を見せたのだ。おそらく連中のボスレベル相当のサイズだ。おそらくこの家のすべてを今夜掌握するつもりで現れたのだろう。このままいくと明日の朝は家じゅうが阿鼻叫喚図と化すに違いない。
―これは面倒だな。圧倒的に戦力が足りない…
敵は人間の猛攻を幾度となく退けた歴戦の猛者たちの集団だ。私1匹で立ち向かえばその機動力であっという間に包囲され、二度と立ち上がれないぐらいにぶちのめされるだろう。
―唯一の救いはボスレベルの個体がいるところか…
Gたちの集団は個々の武力がものをいう。強くなければ生き残れない過酷な環境で強者が群れを率いるのは当然の結果であり、そこには強固なタテ社会が出来上がる。
このようなタテ社会の欠点の一つに「トップがやられる」=「集団が崩壊する」という構図が成り立つ、というものがある。正々堂々でも奇襲でも、頭が欠けると集団は統率能力を失い、瓦解する。
―今回はその点を突かせてもらおう。狙うは大型ただ1匹!
だがそのような欠点は相手方も承知なので、次々にテレビ裏から下っ端が出てきてはボスの周りを取り囲み、警備を厳重にしている。もうすでに20匹はいそうだ。
―だがどうやってあの包囲網を抜けてボスを仕留めようか…あの数だとたぶんこの家中のGが集結していそうだな…
その時、Gたちの動きに変化が現れた。集結した自分たちの戦力を過信したのか、突然隊列を崩し、思い思いに動き始めたのだ。
―これは大きなチャンスだ。敵が自ら隙を作るとは所詮虫レベルの知能ということか。
だがあの機動力は虫のそれではない。いくら個々の質が悪くとも多勢に無勢、策なく突入すればあっという間に蹂躙されてしまうだろう。
―何か使えそうなものは…
とそこに、ある物を発見した。
―ほほう、これは使えそうだが、果たしてうまくいくだろうか…
―いや、何事もうまくいくとは限らない。それにこの身がどうなろうともエリカが住むこの家を守るのがエリカ家最終防衛隊(Last Defense of Erika house LDE)の責務だ。ならば選択肢はただ一つ!
「対G作戦最終フェーズ、実行だ!」
心の中で鬨の声を上げながら私は大群にとびかかった!!
浮かれていても強者の集まり、反応が少し遅れはしたものの、侵入者の存在に気づき即座に迎撃の準備を整えるGたち。だが私の目標はこの集団そのものではない。
ーさすがに日本語はわからないだろう、蛮族どもよ。だが私はこの家の住人とともに暮らしているのだ。どこに何があるかなど知り尽くしている!!
私はGの群れを飛び越え、台所のオイルポットー揚げ物に使った油を入れておく容器だーを足に引っ掛け、床に落とした!
どんな生き物でも予想外・意識外のものには弱い。Gたちは今起こったことを察知し、逃げ出そうとしたが遅かった。
使用前とは違い、一度揚げ物に使っているため普通よりも粘度を増している油が容赦なくGに覆いかぶさる。動くことも羽ばたくこともままならなくなったGたちに私は歩み寄った。
ー無駄な殺しはしない。処理するのはボス一匹で十分だ。
ひときわ大きな図体をもつ一匹に近寄ると、集団の長としてのプライドだろうか、必死に羽をはためかせ、何とか迎撃態勢に入ろうとしている。
だがそれも無駄なこと。もがくうちに羽の内側まで油が達し、動くこともできなくなるだろう。
ーそんなみじめな姿を部下の前にさらすことの無いよう一撃で送ってやる。もうこの家に手を出すことはあきらめるんだな。
そんなことを考えながら私は前足をのばし、静かに、ぷちゅっとボスGを押しつぶした。
ボスを倒した後周りを見渡すと頭を失ったGたちは統率が取れなくなり、てんでバラバラに動き回っている。
そんな彼らに向かって強者の貫禄で一声威嚇すると、目の前の生き物の強大さに気づいたGたちは一目散に逃げていった。
ーやれやれ、今日もこの家の平和を守ることができて良かった。しかし眠いな…今日はもう寝ることにするか。
戦いで消耗した体は休息を欲しがっていたようで、猫ベッドに横になった私はすぐに深い眠りに吸い込まれていった。
―翌日の朝ー
私はエリカの母親の甲高い声で目が覚めた。
「何これ!ゴキブリ!?しかも油まみれ!よくわからないけど朝から処理が大変ね…」
しまった、私としたことが後先のことを忘れていた。ママさんには悪いことをしたな。
朝からしょんぼりしているとエリカの声が聞こえてきた。
「でもゴキブリ退治できたのならよかったんじゃない?」
「またそんな悠長なこと言って…」
「まあでもエリカの言うことも一理あるかもな。」
「お父さんまで…」
ー確かにこの家の平和には貢献したのだし結果的に良かったのではないか?まあとりあえず昨日の熱戦で疲れたし、今日は一日中休んでおこうかな…
そんなことを考えながらゆったり休んでいると視界の端に黒い影が見えた。
ー何!?あれは昨日の残党!
組織に抵抗力がなくなっても鉄砲玉として心中しにくるものが残っていたのだろう、一匹のGが私めがけて一直線に駆けてくる。
ーしまった!昨日の疲れもあって迎撃態勢が整っていない!このままではやらr
「え、何!?またゴキ?ちょっと今日多すぎじゃない?ていっ!」
ぶちゅっ。
「もう朝から最悪~。っていうかちゃんと死んだ?確実に息の根は止めとかないと~」
ぐちゅっ。ぶちゅっ。
「仕上げはスプレーよね!」
しゅわわわ~。
「はい完了!」
…………
昨日私がてこずった相手とは格が違うとはいえ、突っ込んできたGは十秒もたたないうちに息の根を止められていた…
ーま、まぁ人間も少しはやるようだな!だがGとの集団戦においては私に一日の長があるぞ!けっして、そうけっっして私が君たちより劣っているというわけでは…
「どしたのタマ?何か言いたそうな顔してるね。」
こういうときだけ察しがいいエリカが不思議そうにこちらの顔を覗き込んでくる。
ーい、いやなんでも…
とりあえずこれからは不用意にエリカの機嫌を損ねることはやめようと心に刻んだタマだった。
今回のテーマは特にありません。
しいて言うなら「長めだけどだらだらしていない文章を目指した」っていう感じです。
その点についての感想やその他アドバイスなど、どんな内容でもコメントお待ちしています。
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