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夢の王様  作者: 鼻息
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男は、特徴的な少し大きめの口を嫌味に吊り上げ、自分よりも大きいハズのウサギを見下すようなのけぞりっぷりで、

「我が国の新国王に、神官、吉川がご挨拶に参った」

と。ウサギの耳はピクピクピク!とせわしなく動いている。俺は、少し怒ったような厳しい声を背中越しに聞いた。

「吉川様、王様は即位したばかりにございます。いくら、王と同位のお立場であろうと、しかるべき手続きを行い出直すが礼儀でございましょう!」

「はん!そう言ったってな、マロ。これが‘6度目’となりゃー俺だって、手続きくらい端折って、見極めたくなるってもんだろ?」

ま、ろ?ウサギの名前ってマロ?俺は、初めて知った事実に驚愕する。このメルヘンって日本仕様なんだ?

激化する言い争いを放置して、男を止めるのを諦め3歩離れた横で控えている化け金魚にそっと近付いた。

「出目さん、出目さん、お名前は?」

「っ!?おお王様?」

「しぃー。あの2人は、ラヴラヴタイムに突入しちまったんだし放って置こうぜ?それより俺、知りたい事山積みでさぁ。俺は、後藤って言うよ」

「…ゴエモンです」

日本仕様、凄いね。出目金って確か、中国出身種の筈なんだけど。

「ゴエモンさん、俺、実は良くわかってないんだけどさ。王様って何するの?ここってどういう所なの?」

淡々と聞く俺に、たじろぎながらもゴエモンは教えてくれた。

此処は、人に焦がれた動物の魂があの世に行けずに留まり、いつしかそんな動物の魂ばかりが集って国が出来た場所なのだという。焦がれたっていうのは、人になりたいということでは無く人間が大好きだってことだ。だから、この国を治めるのは動物では無く人。昔、何故人間がっ!というツンデレ革命が起き(というのも人を憎みし動物の魂はこっちに来ず、さっさと成仏してしまうそうなのだ。そして成仏した先には、人は居ないという一般論があるらしい)一時期ハムスターが王様になった事があるが、皆が皆種族が違うせいで破綻したらしい。

基本的に、ここの奴らは人に毒され飼い慣らされた哀れな動物たちだ(俺の結論)。よって人間のトップの言う事しか聞かない、と。

ふむふむとゴエモンが説明してくれた国事情を頭で咀嚼し、納得したところで、俺はとんでもない事実に気付く。

それでいくと俺、

「なあ、ゴエモン。俺って死人ってこと?」

まあ轢かれたしねぇ。俺。メルヘンじゃ無く、ホラー色が台頭してきた。最初からちぃっと怖い要素はあったがな!

「あいえ、その」

口ごもるゴエモンに、唐突に偉そうな口調が割り込んで来た。吉川である。ラヴタイムは終了したらしい。

「危篤か重体、又は植物人間だ」

「……我々は、人があの世に旅立とうとする道を塞ぐ事ができません。ですから、自然に現世で何かの事情で生きてはいるが魂はさ迷う方々をお招きし、一時的に治世を行って頂いているのです」

あとを次ぐように、マロが言った。そんな申し訳なさそうに言わないで!何故か凄く俺のテンションが上がるから!どうした俺?

「その‘自然’っつうのも最近怪しいがな」

「吉川様!」

そんな俺の心の事情をスルーで、吉川は不穏な事情を暴露した。ゴエモンが声を上げるが、吉川爆弾は止まらない。ゴエモンは、きっと将来心労で成仏してしまうんじゃないか。


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