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夢の王様  作者: 鼻息
1/3

いち

過去サイトから雑に持って来ました。古いのですが、ほぼ修正なしに載せてますのでご容赦ください。


俺が大学3年生の頃だった。唐突に、友人が立て続けに車に轢かれた。それぞれ近くに住んで居るも、別次元の友人ら(バイトの友人、大学の友人、サークルの友人、高校の…etc.)の話を聞きながら、「通り魔か」などと首を傾げていたが、ある日俺も車に轢かれた。


危なかったとは峠を越えた後日談。意識不明の重体だった俺は、その時変な夢みたいなモノを観ていた。…なんで三途の川とか爺ちゃんとかじゃ無いんだろう。いや俺の爺ちゃん元気なうえ、家はカトリックだからかもな。しかし、これは無いと思うぜ。


リアルウサギの赤い目がパチリと瞬いて俺をみる。

「どうしたんですか、王様」

そのピーターラビットかなんかに出てきそうなチョッキスタイル、俺の深層心理だったらとてつもなく悲しいねぇ。

「何でも無い」

俺が笑うと兎は、ほっとしたようにヒゲを揺らす。可愛いより俺の顔2倍のリアルウサギは、恐怖が先立つよ。


俺は、リアルメルヘンとでも銘打ちたい動物の国の王様になっていた。自然の敵じゃないの?俺ってさ(昔川にゴミ捨てたの謝りたい。その後ボランティア参加で巡ったゴミ+を拾ったので許して欲しい)。赤いクッションを敷き詰めたその玉座は、とても座り心地が良かった。気が付くとそこで寝ていて、事態はそのまま王様へ。何その破綻した話。

リアルウサギが俺の従者位置に居るのは何となく理解した。

しかし夢の癖に、自然に設定が分かっているミラクル付属が付いて無い。夢だろうこれは。夢じゃなかったらコワいよ。

「なあウサギ」

クッションに持たれながら、護衛のつもりなのか、横で二足立ちしているウサギに声をかける。ピクリと長耳を横にして、はい?と振り向く彼の肩に思わず手を置いて人差し指を伸ばした。素直に彼が首を回したおかげで、俺の指先はウサギの白い頬に埋もれた。

やっ柔らかっ!っかっかわっ

予想外にそれは自分の動揺を誘った。

「あの…」

「ごめんウサギくん、自分の中にある悪戯心を抑えきれなくて」

長耳を入れると全長2メートルはあるだろうか。何故かふわふわな白い毛皮に身を包んだそれが『て』から始まり『し』で終わる奴に見える。目頭を押さえてうなだれながら、俺は昔聞いた話を思い出していた。

『独身男性が兎を飼うと、もう兎無しじゃ生きていけなくなる』

という話である。

まさか実話か。

飼ってはおらず出会ってしまった系だが。

「悪戯なお心ですか?」

頬つんされた事は、彼にとっては些事ならしく、むしろ俺が放った言葉に引っかかりを感じたらしい。

有り得ない上品さで口上変化した自分の台詞に、なんだかちょっと無性に謝りたくなった。地球とかに。

と、そんな有る意味ドキドキコンタクトをしている最中、騒音が近付いて来た。

俺とウサギがいる部屋の入り口にそれらは五月蝿く足を止めるや口論する。

『テメー出目の癖に生意気なんだよ!俺が会いてえつってんだろうが!』

『ご主人!しかし、まだ正式に謁見の申し込みをしておりませぬ!お願いですから、家に帰りましょう!不敬罪で私が縛り首になる前にっっ』

『うるせえ!お前は、黙って俺に付いてくりゃいーんだよ!』

…告白?変に男らしい台詞を吐いて、御簾を蹴るように分け入って来たのは自分と同じように黒い髪に焦げ茶の瞳の日本人である。男に引き摺られるようにして(止めようと背中から男を逆方向に必死に引っ張っている)、出目金魚が入って来た。お祭り屋台で優雅に泳いでいそうな黒。ただし、下は二足歩行。出目金魚の腹は胴を形成するのに伸び、尾鰭は人で言う後頭部に付いている。腕は人でいう顔の横(魚で言う鰭がある所)に付いていた。

此方は大部分化け物風情だが、男に引き摺られ、此方に近付く度に首を駄目駄目と横に全力で振っているせいでなんだか哀れみを覚えて恐怖が湧かない。

とうとう男はクッションにだらんと沈む俺を庇うように前に立つウサギの前に仁王立った。


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