第87話 バロウのサードウェポン
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ーー貴様の、負けだ……スレイプニル……
スレイプニルの体は同体を真っ二つに切られ清練による水圧で宙に跳ねる。その様をしっかり確認した。
エンジュはまぶたが重かった、意識がうすれていた、息苦しかった、体の感覚が薄い感じがした。
バロウを見た、少し離れたところで血を流して倒れている……動く様子が無い……
「バロウ、おい」
少し枯れたような声でエンジュは呼びかける。
「……何だよエンジュ」
小さいが声が聞こえた。
「よくやったな」
エンジュは聞こえた……ガハハと微かな笑い声が聞こえた、そして黄色と赤の鱗が混ざる拳をあげガッツポーズを取った。
そしてゆっくりバロウは拳を下ろす。
ーーバロウ、やっぱり君はいい奴だな。
「誰だ? お前? ていうかここ何処だ?」
何か弱そうな人間だな……こいつちゃんと食ってんのかな?
バロウは周りを見渡した、真っ白な世界が広がっていた……
どうやらここにいるのは俺とこのヒョロそうな人間だけだな。
「なぁ、俺この場所から出るつもりでなぁ、出口とか知らねぇか?」
ーーずっと歩いてたけど、俺も分からないなぁ
「ずっとってどれくらいだよ」
ーーさぁ? バロウが来るまでは少なくとも立ち止まる事はなかったかも
「はぁ?なんだそりゃ」
何だ?この気持ちは?この人間妙に懐かしい気がするな……こんな奴いたっけなぁ?
バロウは頭を巡らせて記憶を遡る。ついさっきまで何をしていたのかと。
そうだ!確か俺は銃の帝国にいたはずだ……だけどここはなんだぁ?真っ白で何も見えねぇなぁ、寒くもないし、暑くもない、静かだし、考えれば考えるほど分からん。
「俺の名前が知られてるって事はちょっと俺は暴れすぎたのかなぁ、ガハハ」
ーーそれは違うよ、バロウ
「違うか、じゃあお前は俺の知り合い?」
待てよ、この人間、見たことがあるな、いやこんな痩せこけていただろうか?
「お前、ユーズか?」
ーーどうやら思い出してくれたみたいだね
「あぁ、覚えてるぞ……お前は合戦で命を……」
ーーうん、銃帝六射には結局なれなかったね……
「あの時俺は……本当はお前と一緒に闘えば良かった……」
銃帝六射ソレイユとウィルのように協力してなった物もいたからな……
ーーそうか、バロウもそう思ったんだね……俺も考えたさ、でもお互い話し合ったろう?各々の力で生き残ろうってさ。
「あぁ、こうやってな」
バロウは握り拳を作った、ユーズも握り拳を作る。そして合わせた。
が、お互いの拳は実体がないようですり抜けた。バロウはそれをさも知っていたかのように溜息をついた。
「あぁ、そうかやっぱり俺も死んでたのか」
まぁ何となくそんな気がしていたが……死んだユーズに会えるとなったらそれは、俺が死んだ時に決まってる。
「じゃあ何だ? ここはあの世か?」
ーーそんな感じだけど、ちょっとややこしくて……
ここは意死の世界だって
「意死?なんじゃそりゃ?」
ーーさぁ、頭に流れ込んでくるんだ……この世界の事が難しすぎて理解するのは少しずつかかるけど
「そうか……なんか眠くなってきたな……」
バロウは少しウトウトしてきた……
ーーうん、ゆっくりお休み。
「起きたら、ユーズもっと詳しく教えてくれよ……後悪かったな、俺は銃の帝国で死んだお前を弔ってやれなかった……」
ーー別にいいさ、バロウが生き残ってくれて良かった
「おいおい、もっと厳しい事言えよ、簡単に許されてもなぁ」
ーーそうだな、俺がちょっと甘いな、だから死んだのか俺は……でもこれだけは言わせてくれバロウ
「ん……?」
ーー君は最後戦友の為に闘っていた……ただ闘いたいだけじゃなくて、君がそう思っていなくても。俺の目にはそう映っていたよ……君と一緒に闘っていた時にそう思ったんだ、エンジュと共に闘いスレイプニルを倒した、とても良かった。
「待てよユーズ、なんで分かるんだよ!お前……」
ーー君のサードウェポンは幽猛火漢、僕の意思はそこにいた」
*サードウェポン……竜能の事。
「嘘だろ?俺のサードウェポンがユーズ!?俺には無かったはずだそんなの」
ーー幽猛火漢は死んだ瞬間に発動するサードウェポン。死んでも少しの間行動出来るという能力なんだよ……君はその間にスレイプニルに爆図火をあててエンジュの滅流刀まで吹き飛ばしたんだ。
「そうか、やったのか俺、死んだから分からんかった」
今頃あいつらはどうしているんだろうなセレンは死なせないといったが俺が先に死んじまった……エンジュにどやされそうだな全く。
まぁ、出会ってわずかで浅い関わりだったが俺に出来る事は1つだけだ。
バロウは何も見えない真っ白な空に握り拳を上げ見上げた。
「頑張れよ!セレン!エンジュ!俺の戦友よ!ガハハ、お前らならきっと大丈夫だ!2度と負けるなよ!」
その言葉を最後にバロウは眠りに落ちた。倒れゆくバロウにユーズが付き添う。
ーー立派だよバロウ、銃帝六射として戦友として。そして君は俺達にとって勇猛果敢な爆攻竜だ。




