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竜技の師と弟子  作者: 鷹城
第3章 トリガーエンパイア編
82/112

第82話 〜銃の帝国〜稲妻龍ジルvs陽竜ジュア その2

不定期投稿ですが、よろしくお願いします。

ジルの息は荒かった、呼吸が乱れていた。


 何も見えない……すべての視界が(だいだい)色の様に塗り潰された様に、その世界だったかの様に。ジルの眼前にはそれだけが広がっていた。ジルは動かず膝を落とし片手を地面に置く形で屈み込んでいた。


「もう、詰めね……悪いけど奪わせてもらう、"生命(いのち)"の輝きを」


――あぁ、殺気だ。間違いない、確実に刃を振るぞ……落ち着け、見えないんだったらな、気配を探れ、音を聞け、匂い……といいてぇとこだが生憎鼻はよくねぇんだよな……


 背中の黄色の鱗をくすぐる様な感覚が伝わって来た。攻撃の瞬間を吟味する様に風を切る音がジルの周囲で聞こえる。


「おい、稲妻(いなづま)龍に近づいていい事なんて何も無いぞ!」


「強がってるの? それとも脅し? 悪いけど私にも脅しなんて効かないわよ。」


――ちっ、分かってるよ、強がりだよ! 悪いか! ……いや……悪いよな……見栄だけ張る奴なんてよ……


 とりあげ殺気と音だ!これが……これだけが俺の勝機、刃を振るえば必ず切れる!俺の感覚だけが頼りだ。


 耳を澄ましたジルは先程より大きく足音が聞こえた、足早に近づいてくる……


――あいつちゃんと地面を蹴って走ってるのか……1度足を蹴って地面から離れ跳んでいるのかと思ったが、それなら……


 だんだんと近づく、気配が、頰を自身の汗が伝う。ついに殺気が目の前に来ていた。


――今ぁっ!


 ジルはその瞬間腕に構える刃を地面に突き立てた。龍特有の雄叫びを上げる。


「これは!?」


 近くで迫ったジュアは突然の事に焦っていた。


治薬慈(チャージ) 怒雷武(ドライブ)


 ジルの周囲は電撃の轟音が包み込む。


「言っただろ、稲妻龍(いなづまりゅう)()()()()()()()()()()()()()()()()


「これは!? 張り巡らされた電気! 私が接近する瞬間を見切ったのね!?目が見えないはず……なのに……」


「お前の殺気がだだ漏れだからだ!」


「殺気ですって? くっ!」


 足を引きずる様な音が聞こえる。


「どうやら、お前……足が上手く動かせねぇ様だな、何処にいやがる、切ってやる!」


 ジルは手当たり次第に怒雷武(ドライブ)を振り回す。しかし当たる感触は無い。


「ちっ、離れたか」


「えぇ、離れた、お陰であなたへ刃を当てるには投げるしか方法が無かった……こうして喋っている間にさっき上に投げた参来刀(サンライト)がお前の脳天に降りる所だ」


――こいつ!俺が電気を周囲に放った時、投げたのか!?


 「もう、遅い……さぁ、輝きを失え」


 ジルの頭上を貫こうと無慈悲に投げられた刃が一直線に頭に落ちる寸前だった。


 ……ジルの視界が赤く染まった。







 しかし、ただ赤く塗りつぶされた視界という訳では無い……


――これは? なんだ? 何も見えなかったはずだぞ?これは? 


――それに、何でだ……刃が落ちてこない?


 ふとジルの記憶が蘇る。


――そうだ……これは、あの時と一緒だ。


 






 俺の竜力(りゅうりき)は大分前に発現した……幼少の頃……どんな状況だったかは思い出せない……


 もう1つはソウと一緒に銃の帝国から逃げて山岳地帯を渡っている時だった……俺もソウも体力を使い果たし、極限の疲れが溜まっていた……ソウが山の足場が悪い所で足を踏み外した時だ。

 

 俺とソウの距離は離れていて明らかに間に合わないはずだったが……突然視界が変わった……色ある世界ではなく……世界の全てが張り巡らされる稲妻の線のように見えた。そしてその見える世界では全て。


 ゆっくりだったんだ……時が止まっているかのように……

俺の危機を察したかの様にこの力は勝手に発動する。まぁ、おかげで崖から落ちそうになったソウに手が届いてよかったって心底思うが。


 










 バチッと雷を纏う手が陽光(ようこう)の刃を片手で掴み止めた。刃は塵の様に舞い、消える。


「な、何だ、その目は?」


 ジュアは驚いた様に尋ねる。


――私の参来刀(サンライト)を一瞬で掴み受け止めた!? 速すぎて全く見えなかった……それに……


「自分で言うのもなんだが俺の滅多に見られない竜力(りゅうりき)鳴神視(ナルカミ)だ、こんな事言っても信じてもらえるか分からんが、今この世界は()()()()()()()()


――足の痺れが戻った……ゆっくり、見える?失明してる分際で……まあぃぃ……参来刀(サンライト)の最大速度で仕留めるのみ。


「そうね、ハッタリにしか聞こえない……輝かしい事実を見るまでは……」


 ジュアはジルに近づく、ジルは直立不動だった。


――見えた! うなじだ!そこが盲点!


「さよなら、輝くのはやはり私」


 ジュアは最大速度の陽剣を一閃にジルの背後からうなじへ1振りした……




が、弾かれた!



 ジュアの視界に映ったのは四つの青いジグザグが1つの輪を交差する様な印象的な雷の紋様を思わせる瞳だった。


 ジュアの身体に数本斬り傷が浮かび上がる。既に雷の刃、怒雷武(ドライブ)による反撃の剣閃は直撃していた。


「かはっ!」


――弾かれただけじゃない……既に私は斬られている。



 「お前は強かった……だが、俺の勝ちだ!」


「悔しいけど事実……輝いたのはあなた……だわ」


 ジルはジュアを斬り倒した。







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