第81話 〜銃の帝国〜 稲妻龍ジルvs陽竜ジュア
不定期投稿ですがよろしくお願いします。
稲妻龍ジルは後ろに跳び上がった。跳び上がった所を陽竜ジュアは両手に構えた朱色に輝く刃を振りかざす。
歪に組み立てられた様な一本道の通路で、青雷と陽光の刃は弾き合う。
「やるわね、あなた、私の日速の走についてこれるなんて……」
「だから何だよ!」
ジュアは剣戟を一旦弾くと後退した。ジュアの背後に3つの夕日状に輝く輪が天井から降りる様に現れた。
「まあ、聞きなさい……私は日の光を浴びると"速さ"を増すの……それが私の竜能……でもあなたはついてこれた……だけど」
「私は更に"速さ"を増し輝くの。」
「脅しは効かないぞ!」
ジュアの竜鱗が日光に照らされ、煌びやかに光出す……そして陽光の刃"参来刀を構え姿勢を低くし足を蹴った。
竜が通る道のりには凄まじい風が吹き黄色系統の直線が光りジルに急接近して来た。
陽光の刃はジルの首へ迫る
怒雷武を首元で縦にしギリギリで刃を受ける。その後ジルは弾き返す。
――また消えたぞ!あの浮いてる輪っかみたいな日を消せねぇかな。
後ろで金属音が聞こえた、振り向くと火花が走って来ていた。
ジルは咄嗟に足を蹴り跳び上がる、かかとを掠った。尻尾は反り上げていたので負傷も無い。
――危ない……後一歩遅かったら足が無かった……
再び音が、気配が、痺れる様な殺気がジルの感覚を研ぎ澄まさせる。ジルは自分が着地する前に見えた黄色と赤の混ざった火花で一瞬で照らされる陽光の刃を目に移した後、その斬撃の方向を予測し、徹底防御していく。
「……!!」
着地しても尚攻撃は止まない、ジルの首への一閃、腹への突き、足へのなぎ払い、背後からの急襲。様々な角度から様々な剣閃が不規則に難見に襲いかかる。
だがジルは対応した……ひたすら迫りくる刃を弾き、突きをいなし、なぎ払いに反撃の剣を合わせ、背後からの急襲の気配を感じとった、体の熱が上がっている様だった、心臓の鼓動は早く、寒気は常時感じている。
息をつまらせる猛攻の連続に、疲れを感じる暇さえ無い。
そしてようやくジュアの姿が距離を離れた所で捉えられた。
「更に、"速度"を上げる」
「来い!」
ジュアは手に携える陽光の刃、参来刀を降ろしたまま少し背中を曲げ体勢を取っていた。
「すごいわね、あなた、あそこまで激しく動いておいて、まだ息が上がっていないなんて……さぁ、私の"最大速度"でお相手しましょう。」
ジュアの後ろに浮かぶ3つの夕日の輪っかは1つとなり掌サイズの輪っかに変形しジュアの頭上に引き寄り浮かぶ。
瞬間。ジュアの姿は光すらも無く消えた。
ジルは研ぎ澄ました……感覚を……集中した……目を見張った。
――正面か!
ジルは正面から痺れる様な気配を感じた。怒雷武を構えた。
「くっ……!」
「見事……としか言いようが無いわ……私の最大速度を受け止めたあなたは……確かに輝いている」
突如ジュアは現れた。緊迫した鍔迫り合い、ジルの方が相手を押し退けた。
「そのご褒美と言っては何だけど教えてあげる」
ジュアは朱色の鱗が映える頭頂部の上に浮かぶ輪っかを指して言った。
「残り2つの夕日は下から浮かび上がるわよ、それが私の竜力」
「何だと?」
陽射しが差した下から夕日の輪が出現した。1つはジルの左に1つはジルの右に。
――これは?奴の周りで光ってたアレか。
「太陽花火」
ジュアがそう唱えた途端朱色の夕日はその色を七色の光りの様に輝かせ今にも弾けそうなジェット音の様な音を発している。
――こいつはまずそうだ!
ジルは素早くその輪から距離を取る。悪い予感が当たった通り夕日は七色に爆発するように弾けた。薄暗い通路の周囲を七色の火花が鱗粉の様に舞い散らす。
ジュアの位置を再び確認した。異変にすぐ気付いた
――あいつ!? 頭の輪はどうした?
次の瞬間右の壁から突如輪が現れた。
――もう、こんな所まで!?
ジルが回避する間も与える事無く爆散した。
ジルは両腕で顔を覆い防御姿勢を取る。身体中が熱い無数の釘に撃たれるような刺痛が走る。
「ぐぅぅぅ!」
爆発が止み痛みは感じなくなった……ジルが目を開けて周りの状況を確認する。何が起こったのか強烈な光のせいか良く分からなかった。
「どう?3つ目をまともに受けた気分は?」
少し遠くからジュアの声が聞こえる。
「お前!今何をした!」
「苛立つのも仕方ないわね……だって」
「……!?」
「あなたは今、失明したものね」




