第80 源染竜への追跡
不定期投稿ですがよろしくお願いします。
「嵐翠」
ソヨカが右手の風の槍を突き出しながら飛び込んだ。槍は 六模流場を掠めたが、纏っている風の風圧に寄ってパイソンの体から離れ宙を漂う。
――また……動いた!? どうして? パイソンは倒した……なのに……
ソヨカの視線の先でパイソンのファーストウェポンは一周の弧を描いた後カチャリと音をしっかりたててパイソンをしっかり狙っている。
「こいつを止めればいいんだな!」
火龍ラヴァは狙いを定め能力を打ち消す炎の刃を右手に構え左下に斬り下ろした。
叩きつけられた銃……六模流場は跳ねあがり、そのあと2.3回跳ねると動かなくなった。
「もう、大丈夫だよな……」
火龍ラヴァはしばらく銃が動かなくなるのを確認してから時炎怒を解除する。
「ああ、これで大丈夫だ」
岩龍ログが岩の刃、砕練刀を銃に当て微弱な衝撃を銃に与え続けた。
「竜技の記憶を奪っておいた、念の為10回奪った……もっとやった方がいいのだろうか?」
「敵は6つの能力を持っているとは聞いてたんですけど、嘘の可能性もあります、もっとやるべきです!」
「そうじゃな……竜技が6つある能力だとして、竜力1つ、竜能1つ、真化竜技1つと考えると9つになるから、もう充分だと思うんじゃが……体力があるなら、やるのもありだのう。」
「うん。」
ソウ、ギア、ソヨカと順序よく答えていく。
「分かった、続ける」
「これで大丈夫だ……」
それから更に10回程記憶を奪い、一行は一室を後にする。
***
火龍ラヴァ達はスレイプニル、リィラ達を探し様々な部屋が不規則に繋がれたような通路を更に奥へと進んでいた、ログは目、足、腕などの傷が少し深くラヴァが肩を貸し、その前方をギア、ソヨカ、ソウが見張っている。
「それにしても"操憶"の龍神よ、何故お主は三重の美芸を抜けたんじゃ? あの中で一番封刃一族を無力化していたと聞いていたが……」
ギアはログの隣に歩行を緩め話しかける。
「……あぁ……確かに最初は封刃一族全ての記憶を奪えばいいと思っていた……しかし努力しても"封刃の意思"の記憶だけを奪えなかった……一族の反応が全く消えなかったんだ……全てを奪わなければ……俺は……悔しいのだろうか、悲しいのだろうか……だが……」
ログは自分の胸に手を当てて言う。
「何も知らない人や龍の記憶を奪う度、痛くなる……」
「そうか……そうじゃよな……正直わしもそうだ……今まで1度だって、封刃一族を殺す事が出来なかった……まぁ、他の皆は封刃一族に同胞を殺された奴もいる……気持ちに躊躇いがあっても迷わず闘っている……じゃが、わしは他に方法があってもいいと思うんじゃ……我儘だと思うが封刃一族と三重の美芸がお互いに静かに暮らせればいいのじゃと思っている……もう、無駄な復讐や闘いは嫌じゃ……」
ギアをログを温かい目で見て言う。
「まぁ、こんなわしは 三重の美芸から異端と思われて当然じゃが……うむ……お主は仲間じゃな"操憶"......いや……ログでいいかの?」
「あぁ、大丈夫だ…………ギアと呼んでいいのか?」
「もちろんじゃよ……本当はわしゲオルギアスと言うんじゃが、長いのでギアで略しとくれ」
「分かった」
「そうなんですか? 知らなかったです? でもそっちも良い名前じゃないですか。」
「別に普通じゃけど……そこ褒めるところかの?」
ギアはソウの着眼点に意表を突かれたようで笑った。
「へへ、良かったぜ、早くリィラや他の皆に合流しねぇとな。」
「ねぇあそこ何か落ちてる?」
ソヨカは床に落ちた物を拾う。そこにはこう書かれていた。----ー--------------------
リィラとセレンは無事。みんなを探している
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「良かった……早く合流しねぇとな」
――頼むぜリィラ、信じてるからな
「すまない、ラヴァ……走っても構わない……」
「いや、無理すんなよログ……怪我がまだ完璧に治ってねぇんだ」
「そうですよログさん、焦ったらダメですよ……」
「あぁ、わしらが先を見てこようか?」
「任せて……私達、足は早いから」
「すみません、お願いします」
「ありがとう……助かる……」
「すまねぇ、任せる!」
ギアとソヨカの2人は先に偵察に行った。
***
「見つけたぞ!スレイプニル!」
虎の様な形相で睨め付けている稲妻龍ジルの目線の先にいたのは黒い鱗で覆われた龍。
三重の美芸 源染竜スレイプニル。
足を引きずってやがる、悪いが手加減する気はないぞ……!
「そなたも……余を殺しに来たのか……黄色の髪の小僧に引き続き、嵐槍の龍神にしろ……忌々しい邪魔者共めが!」
「ただの小僧じゃねぇ……ソウって言う名前があるんだよ……そして"稲妻龍"の一番弟子だぞ!……結構効いただろ?俺の弟子の"雷降がよ?」
銃が散らばる少し薄暗い通路の中ジルは空気を震わせる音を発し雷光の刃をその右手に発現させ右手を左手の脇の間に挟む様な形で膝を少し下げ姿勢を屈める。
「治薬慈 怒雷武!」
雷の音は更に激しくなる、空気を轟かせ弾けるような爆裂音を発し、青い稲光をその刃に纏わせる様にする。
稲妻龍ジルが使う治薬慈はソウの治療とは異なり、雷力を上げる事に特化した竜能である。しかし、治薬慈を使うと普段より力の制御が効かなくなる為、周りへの感電を考慮し、使うのを本人は控えていた。
――これぐらいでいいか……ウラノス、ソウ、ピア……俺が奴を討ち取るからな!
「竜染化」
スレイプニルは緑色の煙を自身の近くに発生させた。
――これが、奴の竜技か……
目の前に複数体の無心竜が現れる。
「無心竜よ、余を守れ。」
「ギャァァァァア!」
鋭い鉤爪を向けてジルに飛びかかってきた。
「何!?」
鋭い轟音が響いたと思えば青い雷閃が次々に無心竜を一刀両断する。
一閃、二閃、三閃。
四閃、五閃、そしてスレイプニルへ一直線の凄まじい落雷は迫る。
「くっ!」
スレイプニルは両腕を交差し防御姿勢に入る。
その時夕日の様な円状の輪が間に入った。
ジルの雷の刃は突然現れた朱色に光る刃で弾かれた。
――なんだ!? これは!?
「あなた、また、会ったわね……良い"輝き"じゃないの……」
「おお、ジュア! よくやってくれた……ロビンはいないか?」
「申し訳ありません、スレイプニル様、ロビンとははぐれました……お逃げ下さい」
「任せたぞ」
スレイプニルは奥へと逃げる……
「くっ、まずはお前を倒さないといけねぇなぁ」
「"闇劇家"の頭、"陽竜"ジュア……さぁ、お前と私どっちが"輝ける"か勝負よ……参来刀」
朱色の竜は夕日に光る様な刃を手に下げ持ち太陽の紋様が入った目で相手を見据える。




