第78話 三重の美芸 vs応射竜パイソン その4
不定期投稿ですがよろしくお願いします
俺が今使えるのは……場運土処図、炎舞練六火灯、利帰場令所、留風波連飛……4つか……
「はぁっ!」
火龍ラヴァが応射竜パイソンに接近しつつ炎の刃を垂直に落とし込む。
「おっと、危ない!」
パイソンはそれを見て背後に跳び上がる。
「隙槍じゃな……」
「捕らえた!」
「ちっ!? 挟み撃ちか!」
風龍ギア、そしてソヨカの2つの風の槍がパイソンの正面、背面を横一文字に振り抜こうとしている。
「炎舞練六火灯」
パイソンは瞬時に右手で正面のギアに銃 の 帝 国を、そして背面は確認せずに左手に発現させた六模流場でソヨカに撃ち込む。
「何じゃと!」
――こやつ、竜技を2つ同時に扱えるのか!?
「……!?」
――危ない!攻撃はいけない!
パイソンが銃を構える先の背面、正面で赤の紋章照準が発現し炎が荒波の様に襲い掛かる。
ギア、ソヨカは攻撃を引き、風の槍で螺旋を描き自身の身長を包むほどの風の防風壁を前方にのみ発生させ何とか凌いだ。
「危ないのぅ……」
ソヨカは着地した後パイソンから距離を取った。突然動くギアに驚く。
「……!? ギア爺!」
ギアは着地した後地面に膝をつきかけるパイソンに急接近し右肩目掛けて嵐翠を左下に振り下ろす。
「身体弾化 場運土処図」
水中に物が沈む様な音が鳴る。
ギアが振り下ろした風撃は弾力のある物体に触れたような勢いよく攻撃を跳ね返され、体のバランスを崩し懐がガラ空きになる……
――何じゃ!? ゴムか!?
「場運土処……!?」
「時炎怒」
ラヴァは炎の刃を携えギアの横に飛び入りパイソンを押しのける。
「でかしたぞ!ラヴァ!行けぇ!」
「あぁ、任せろ!」
「これは!?」
パイソンは両手に持つ銃で炎の刃を受け止めるが……溶ける様に消えていった。
ラヴァはそのまま、両腕を交差し防御する相手の上から力を籠めた火と斬りで吹き飛ばした。
「くっ!時炎怒か! 厄介だな」
――身体弾化じゃ弾けねぇ……気を付けねぇと……
パイソンは立ち上がり腕を上げ再び2つの銃を構える、腕からは血が流れ、床に赤い水たまりを広げている。銀色の龍鱗は輝きを失いかけたように見える。
「場運土処図」
パイソンは2つの銃を同時発射する。
銃弾は縦横無尽に壁を跳ね返り、2つの変速的な攻撃が行手を阻むように長い間跳ね続けている。
ソヨカはパイソンへの距離を詰めていたが立ち止まり風を発生させ防御体勢を取る。
ギアはパイソンに近づく、弾の軌道を目で追いその跳ね返らない地点を見定め一気に走り抜けた。
再びパイソンに接近し攻撃を仕掛ける。
「身体弾化 場運土処図」
――同じ手は喰わんぞ!
「得空螺衣渡」
ギアは攻撃を中断し、身体を浮かせ飛び上がった……空中で軌道を変えパイソンに向かって走るラヴァに風を与える。
「行け火龍よ」
「おう!」
ギアは手に持つ槍で風を起こしラヴァの走りを加速させる。
顔の辺りに獅子のように生える赤い鱗は風に揺れ、岩の壁の集まりのすぐ横に立つパイソンへの距離を一気に詰める。
「場運土処図」
パイソンはラヴァが近づくタイミングで岩に向けて銃弾を、撃った。
岩の礫がラヴァとその後ろのいるギアに弾け飛んで来た。
「怯むかよ!」
ラヴァは少し腕や頰、腹部などに尖った岩の破片を受けたがお構いなしに刃を構える。
――何だ!
ラヴァは突然の事に驚いた、手にしていた炎の刃がいつのまにか消えていた。
「ラヴァ、一旦引くんじゃ!」
「どういうことだ、時炎怒が消えやがった!」
「わしもじゃ、わしも嵐翠が出ない!」
「ログのおかげだよ」
「何じゃと!?」
「"記憶"を奪ったんだよ……ログが発生させたこの岩は相手に傷を付ければ竜技の記憶を奪えるんだよ……どうやら上手くいったな……あんたらは使い方を忘れたらしい……」
「ふん、馬鹿じゃなわしらにはソヨカもおる、それに闘えないわけじゃないわい」
「ごめん、ギア爺……わたしも使えない……」
「なっ!ソヨカも食らったじゃと!?」
パイソンは2丁の銃を構える。
「炎舞練六火灯」
ラヴァ達の前方に2つの赤い紋章が広がる。
「おい、みんな離れろ、今は止められねぇ!」




