第77話 vs三重の美芸 応射竜パイソン その3
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応射竜パイソンが持つ6発装填の銃はその形を変容する。
その今まで黒かった銃身を銀色に変え伸びていく。そして空中に突如発現した金色、赤色、紫色、緑色、白色、銀色の弾丸がパイソンの周りに大量に散らばって、その落ちた箇所から弾6発がパイソンの持つ銃に宿るように溶け込んでいく。
パイソン本人には変わった様子は見られない、今まで通りの銀色の鱗に覆われた竜が持つ右手に構えた銃 の 帝 国だけが異彩を放っているだけだ。
「時 園 土憶 岩!」
岩龍ログは冷静さを欠くと同時に真化竜技を解放する。
「ガァァ!」
ログは激しい咆哮と共に、空中に大量の岩を発現させる、その1つ1つを刃状に変形させパイソンに目掛けて全てを発射する。
「場運土処図」
床目掛けて撃たれた銃弾はまず最初にパイソンに迫っていた、1つの岩に当たり砕け壊した。続いて床をジグザグに跳ね一直線にパイソンの方に向かっている刃状の岩を近くの方向から順序良く砕いて攻撃を防いだ。
ログは再び咆哮をあげ空中に大量の岩を発現させた後、自身は砕練刀を発現させる。
「グルァ!」
ログは足を踏み込み床を蹴った、宙に浮く間に右手を後ろ手に引き垂直に振り下ろす力に力を入れる。
パイソンはそれを見て左足を軸にして右側横回転に飛んで避けた。
地面は音もなく割れ、亀裂を発して砂埃を舞わせる。
パイソンは回転する最中身体を逆さまになった所で反撃の銃弾を撃つ。
「減狙突螺!」
ログは右手に持つ岩の刃は地面に喰い込んだまま反対側の左手の平を広げ腕をあげる。
そして床からログの身長(240cm)程の長方形の岩の壁を4つ重なる様に列に配置し防御する。
しかし岩は一瞬にしてひび割れほぼ同時に4つ穴が空いた。
「グァァ!」
ログは一瞬怯んだが流血する左肩に構わず敵を追い、距離を詰め刃を右下から左斜めに切り掛かる。
「身体弾化 悪波出過」
ーー しかし岩の刃は当たらずパイソンの身体をすり抜けた。
実体が無いようだったまるで霊霧竜ストーラルと闘った時の様だった。
「ガァ!?」
ログは再び反撃に転じようと岩の刃を構え直す。
「いい眺めだ、脳天が丸見えだな」
パイソンはその隙にログの頭目掛けて銃を撃つ。
「悪波出過」
ログは自分の頭を覆う程の大きさの岩を即座に宙に発現させた。
だがパイソンの銃弾は岩にぶつかる事なく、すり抜けた様に現れる。
「グアァアア!」
ログは敵との距離を取る為周囲の床から2m程の岩の壁を発現させその先端を針の様に尖らせた。
パイソンはそれを見て距離を取る。
ログの真化竜技が解ける……
……ハァ……ハァ……ま……ずい……
意識を取り戻した。ログは右目から流れる鮮血を抑えていた。
……何処……だ……敵は今……何処に居るっ……!
危ない……何とか頭を動かさなければ……死んでいたかもしれない……
目の前の岩の壁で膝をついたログ……体が重く、ひどく疲れていた……
突如、天井から弾け飛ぶ音がした。
ジンジンする痛みがログの右肩を襲う。
「ぐうぅ!」
ログは必死の想いで岩の刃を発現させるが……今は只身体が上手くいう事を聞かない。少し手を引きずって移動することしか出来ない。
ーーもう1度だ!……もう1度真化竜技を……
「時 園……!?」
腕に数発弾丸を受ける。パイソンが岩の壁と壁の隙間から狙ってきていた。
「させねぇ!」
ログは膝を落としたまま右腕を抑え……片目でパイソンを見た、パイソンは周囲に散らばっていた様々な色の銃弾を集めるように銃に宿しながらログの方向に近づき、再びその手を下ろす。
ログは傷を抑えた手を離し、左手で岩の刃、砕練刀を発現させるとログの周りを囲んでいた岩の一つに振り抜き音もなく砕いていく。
「うぉぉぉ!」
ログは痛みを堪え無理矢理両腕で砕練刀を握りしめ、更に周りの岩を破壊し、砕いていく。
パイソンは後ろに跳び退いた……だが幾つか飛び散る鋭い岩の破片がパイソンの身体を少し掠った。
パイソンは刃を振り終わった直後のログに対して銃弾を撃ちこもうと再び反撃にでる。
「減狙……?」
「悪波……?」
「記憶が!? ちっ! 炎舞練六火灯!」
ログの頭上で赤色の紋章が3つ浮かびあがる。そしてそのあとログの体を包むには充分なほど燃え盛る炎が降り注ぐ様に落ちていく。
「くっ!」
ログは砕練刀の衝撃で炎に立ち向かった……炎はゴオッという音を立てる事なく息を吹かれたロウソクの火のように押し返された。
その隙にログは地面に2撃目を振り当て衝撃を発生させ、自身を炎が届かない場所まで吹き飛ばした。
……攻撃が止まない……隙がない……どうすれば……奴の能力をいくつか忘れさせたが、まだ強力な技が残っている……
「もう、終わりだ ログ」
ログが吹き飛ばされた先で顔をあげればパイソンはすでに銃を撃っていた。
……くそっ! 間に合わない!
ーーー突然激しい黄光がまばやく一室を照らした。
ログは突然の強烈な光に目を閉じた。
「……ログさん! 間に合って良かった!」
ログは目を開ける……見知った少年が雷の猟銃を持ちログの前に頼もしい背を向けている。
「……すまない……助……かった」
「おい、大丈夫かよ!ログ!」
ログは倒れる、誰かに支えられた。うっすらあける目からは赤い鱗の腕が視界に映る。
「ラヴァ……か……」
「それだけじゃねぇぜ……まだ仲間がいるんだ」
「何故じゃ!? 何故三重の美芸同士が闘りあってるんじゃ!?」
後ろを見れば自身の顎に手を添え疑わしそうな目で見る緑色の龍……
……確か"嵐槍"の龍神……だったか
「お主、"操憶"の龍神じゃよな?」
「……あぁ」
「まじ……」
「ギア爺……話は後にしよ。」
その後ろから涼しげの少女がギアと呼ばれた龍の肩を叩いてログの前方に歩いていった。
「おいおい、勢揃いかよ、裏切り者が2人目も来るとは……なぁ、"嵐槍"の龍神さん……後は知らんが……」
パイソンは突然の乱入に距離を取り銃 の 帝 国を構え警戒している。
「僕はログさんを治療しますね!」
「分かった、ギア、ソヨカ……俺達で奴を倒すぞ!」
「仕方ないのう……おい、"操憶の龍神"後で話し聞かせるんじゃよ!」
風龍ギアはログと目を合わせた後敵の方を振り返り向かっていった。
「嵐翠!/嵐翠。」
「時炎怒」
「3人も来るかい……全く!……いい眺めじゃねぇか」
「それも今だけじゃよ。存分に眺めとくんじゃ」
ギアは皮肉たっぷりに言葉を返す。




