第72話 双璧の風
不定期投稿ですがよろしくお願いします。、
いてて……
身動きが取れない、瓦礫の下敷きに……
「ラヴァさん、大丈夫?」
ラヴァさんは僕の後ろにいるみたい。今僕が動かせるのは両手位だ、足は全く動かせない。
「あぁ、問題ねぇ。そっちは?」
「はい、僕も大丈夫です」
大丈夫じゃないのはこの状況だ、どうしよう。敵の爆弾が投げ込まれたら。
「紅蓮練土」
僕の目の前に積もっていた瓦礫が爆弾で吹き飛ばされた。爆風がソウの髪を激しくゆらし、その衝撃に思わず目を細める。
僕の視界にトサカの竜が映る。
くっ! もう、次は直撃だ!
「雷降!」
僕はかろうじて動かせる手に雷の猟銃を発現させると敵を狙い撃った。
だが、敵は通路の角の近くにいたようで、すぐさま回避行動に移る。
雷は問題なく落ちるものの肝心の敵には当たらなかった。
「ダメだ、これじゃ!」
僕の動きを止めてる瓦礫を先に撃つか? でもそんな事してる内に敵がまた攻撃してきたら? それに雷撃で瓦礫が思わぬ所にいって道を塞ぐ可能性は? ラヴァさんに危険な目を合わせてしまったら?
……僕に出来るのは待つ事しかないのか? でも……そうしないと……今、敵の攻撃に対応出来るのは僕だけなんだ……
こうなったら、やるしかない。僕の雷降ならいけるはず。
敵の攻撃は全て撃ち落す。できれば倒す! それ以外道がないと言う事だけを意識すれば僕は!
何だってやってやろうって思えるんだ!
ソウは雷の猟銃を構えた。隠れる敵が出る瞬間を待ち構えていた。
……奴は壁で隠れてそこから爆弾を投げてくるに違いない。なら僕はその手が見える内に雷を落とす!
あたりは静寂。だがしばらくすると火花が散るような音が聞こえてくる。
そしてついに敵が爆弾を投げ込んで来た。
……!!
それは複数あった、5〜6個以上だろうか。
僕は無我夢中で雷降を出来るだけ数多く撃つ。
「うおぉ!」
数撃ったのが功を奏したのか、バラバラに投げ込まれた爆弾の内1つに当たり爆発を起こした後連鎖的に爆発し攻撃を凌が事が出来た。
爆煙が立ち込める中、ソウのすぐ目の前でいくつかの爆弾が跳ね向かって来た。
うそ!
すでに、ソウが雷降を撃つ前に、ソウの視界から消え、後ろの方まで跳んでいる。
その瞬間ソウはあまりもの衝撃に目を瞑るしか無かった。
身体を突き抜けるそれはとても涼やかなものだった。
石が流れ落ちる様な音が通路に響き渡り、背中は軽くなっていた。
ソウは目を開けた。何か気配を感じて左の方を見た。
体が自由に動かせる。もう自分を動けなくしていた瓦礫は何処にもない。
そこにいたのは身体中様々な緑色の鱗で覆われ、頭からは真っ白の毛が生え口は結構細く長い。
そして鼻の上は赤い色の鱗が縞模様しまもように綺麗に整って並んでいる、そんな龍だった。
「お主、大丈夫か?もしかしてわし、傷付けた?」
その龍は心配そうにソウの顔を覗き込んでいる。
「いえ! そんな事無いです!」
突然の事だったので放心していたソウは慌てて否定する。
「ギア爺……私達、あいつら、逃した。」
奥から更に知らない女性が現れ、声をかけて来た。
「私ソヨカ、あなたは?」
「ぼ、僕は」
「紅蓮練土!」
「あ、危ない!」
その時、敵が爆弾を投げて来た。
「嵐翠」
ギア爺と呼ばれた龍が両手を構え風で生成された槍の様なものを発現させた。
そして空を横斬る。
「危ないってこれの事か?」
爆弾は突如宙に停止したと思えばすぐさま相手の場所まで跳ね返された。
「大方飛び道具で攻撃してくるタイプの竜技じゃな……まあ、わし"風"じゃし。」
「風ダト!?」
敵は跳ね返った爆弾の爆発をまともに受けた。
「ねぇ、ソウ、リィラって知らない?」
倒れる敵を放ってソヨカはソウに尋ねる。
「あっ、はい知ってます。」
「もしや、後ろにいる赤い龍はリィラと共に居たものではないか?」
倒れる敵をチラッと見た後ギアがソウに聞いた。
「あっ、はいそうです。」
後ろを見たらラヴァさんが丁度衝撃で少なくなった瓦礫を掻き分けて来ていた。
「ソウ、何があったんだ?……て……誰?」
「わしは風龍ギア、こっちはソヨカじゃ、わしらはリペアと共にリィラを助ける為に来た、そしてスレイプニルを今追いかけて来た所じゃ。」
「何か、逃げられたみたい。」
「そうなんじゃよなぁ……」




