第67話 三重の美芸 心持竜ラメア その4
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リィラは駆ける。ラメアを討つ為に。
水の刃、清練の"強靭度"は滝が落ちる様な音を発している。
「はぁぁ!」
リィラは水の刃でラメアに攻撃を仕掛ける。
「どうせ、そのあと砕練刀でしょ?」
……!?やっぱりバレてる!
「当たり前よ!心の声がだだ漏れだから」
ラメアは難なく水の刃を回避し、続けて繰り出したリィラの砕練刀をも回避した。
-あー、でも危ないわね、砕練刀はやっぱり危険だわ、衝撃の範囲までは私には読めない。
厄介なのは特にこのリィラとかいう小娘ね。さすが、封刃一族と言ったところだわ、後ろにいるセレンは特に脅威ではないかしら、というか、何だろう? あの子から何か懐かしい様な感じがするのは気のせいかしら。
おっと危ないわね、セレンが私を攻撃し始めるわ。
「叢雲」
セレンが後ろから空中に浮かばせた3本の水の刃で追撃する。
ラメアは後ろに飛び退き避ける。
「だめ……私の叢雲の軌道も読まれてる。」
リィラは再び岩の刃、砕練刀を発現させ構える。冷や汗を掻いていた。息も上がって来ている。ラメアに投げられた時のダメージも相まって疲れを加速させている。
攻撃は読まれる、心は読まれる。どうしよう?考えるんだ私……あっ!考えてもダメだ!でも、やみくもに攻撃したって当たるわけないわ!
どうすれば、こんな化け物に勝てるのよ!
「せめて、貴方が私と同じ能力が使えたら良かったけどね」
私の解等過時呼比は互いの承認がないと使えない。
「そう……残念ねもちろん私は承認しない」
「くっ!」
知ってるわよ!それくらい!
リィラは部屋を見渡した。
……そうだ!
それから、砕練刀を部屋中所構わず振り当てた。
「何をするかと思えば当てずっぽうで刃を振ることを考えたの?」
セレンはリィラの動きを見て気づいた。
違う!あれは……ダメだ!考えたらラメアにも情報は共有される!考えるな!
感じて、私もその作戦に応じるんだ!
「へぇ? 何か思いついたの? 阻止させてもらうわ。」
リィラの岩の刃は空中を切ることも有れば地面を叩きつける事もあった。
地面に叩きつけた時それは砕けて石の瓦礫が部屋中に飛び散る。
「そんなに瓦礫を飛ばして、目眩しのつもり?」
瓦礫はラメアに向かって飛び交うが鱗に傷をつける事は一切なかった。
突然ラメアが刃を、所構わず振り回すリィラの手を掴んだ。
「遊びはおしまいよ」
「解等過時呼比 叢雲!」
リィラはラメアに掴まれたまま自身の背後に水の刃を生成し、飛ばす。
「ちっ!」
ラメアはリィラに攻撃を加えようとしたが中断し手を離して身体を捻って避ける。
……そういえば……今の攻撃読まれて無かったのかな?私が叢雲を撃つと分かっていたなら今ので確実に攻撃を入れられてたはず!
もしかして今使えない時間だったりしたら!
どうなのラメア答えて!
「……へぇ?まさかこのタイミングでセレンの能力使うなんてね?」
……今のは私の心に対する返事じゃなかった……わざと演じているのかもしれない……でももしかしたら今は使えないのかも
清練の強靭度を上げたセレンがラメアを狙おうとしていた。
しかし、セレンはラメアを狙わず地面に叩きつける。
「何!?」
……やっぱりそうかも!読めてたら何らかの方法で止めに来るはず!
「リィラ、今だよ!」
激しい水しぶきが起きる、それはほんの僅かな時間だった。
リィラは咄嗟に鈴を鳴らした。
「来利空音透」
そして岩の刃。砕練刀を発現させ透明化させる。そして水しぶきの壁が落ちる寸前リィラは一直線に透明の岩の刃を投げた。
「はぁ!」
ラメアは両腕を交差し防御体勢を取った。……が目の前にいきなり透明状態が切れた岩の刃が向かって来るのを見たラメアは青ざめた。
「嘘でしょ!」
岩の刃はラメアの両腕の丁度中央に刺さった。
「受けなさい!無音の衝撃を!そして、能力を忘れてもらう。その、心が聞こえる能力を!」
「ギャァ!」
直撃した岩の刃から受けた無音の衝撃でラメアは部屋の壁に叩きつけられた。
***
くっ!まいったわ、闘いの中で私の動きについて来られるなんて……
だけど、私がこんな所で負けるわけには行かない。
私の同志を殺した封刃一族が暴れない為にも……
解放するしかない!力を!
ラメアはグラッとする身体を何とか持ちこたえさせた。腕には岩の刃が刺ささったままだ。
「あんたのさっきの一撃、中々だったわ」
「トドメを刺させてもらう!」
リィラとセレンは互いに構える。時炎怒、清練を発現させて。
「それは、こっちのセリフよ!」
……何?雰囲気が変わった?
三重の美芸には竜技、竜力、竜能とは別に、違う特殊能力を持っている。
それは……竜技を超えた力、真化竜技と呼ばれる。
「瞑 想 郷!」
その瞬間ラメアの体を纏う白の衣が桜色の衣に変わった。
体中の鱗と鱗を繋ぐ繋ぎ目からは白い光の筋が発光し、ラメアの目に一瞬赤い残像の眼光が灯った。
「波解派部"鋼の精神よ"我が心に在れ。」
ラメアがそう唱えた瞬間腕に刺さった岩の刃が砕け散った。
ラメアの手が自由になり、窮屈だった手をふらつかせる。
砕練刀が……
「魅せてあげる、感創の龍神の力を」
セレンとリィラの2人はその眼差しから初めて感じる悪寒に不安が脳裏によぎるのを感じた。




