第64話 三重の美芸 vs心持竜ラメア
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……はっ!
ここは何処?
リィラは気づけば椅子に座っていた、食卓のようだ。白いクロスが敷かれたテーブルに果物が集まったバスケット。何かの肉料理、黄色く香ばしいスープ、グラスに注がれた紅い飲み物などが置かれていた。
……セレンが隣にいた。
「セレン!大丈夫?」
「リィラ、あなたも来てしまったの!?」
「これは!?あいつの仕業よね?」
「そうなのよ、リィラ聞いて」
その時リィラの目の前に突如謎のぬいぐるみが現れ声が聞こえた。
「いらっしゃいリィラ、セレン。」
その声は!
横からセレンが言う。
「リィラ絶対攻撃したらだめよ?」
えっ? 何かあるの?
「そうよ、ラメアよ!これからゲームを始めるわ、ルールは簡単……そこにご馳走があるでしょ?その中のいくつかに毒が入ってるの」
ど、毒!
「大丈夫、死にはしないわ、ただ毒を1つ食べる度に感情が奪われるからね」
か、感情!?
「そう……どの感情が奪われるかは私にも分からないんだけどねぇ」
「ふざけないで! 何がしたいの!あなたを探し出して倒す!」
「引っ掛かったわね、残念、攻撃的な意思もダメなのよ。」
その時リィラが見える視界は奥に渦を巻いて吸い込まれるように縮んでいく。視界の隅にセレンが映る。
「そんな!リィラぁぁ!」
セレンは手を伸ばすがリィラは後ろの方向に沈んでいくようだ。何処かも分からない真っ暗闇の底に。
……わたし……どうなるの?
その時視界が開けた。
気づけばリィラは真っ白な景色を空中から勢いよく下に急降下していた。
冷たい感覚が体中に伝わる。が麻痺しているのかさほど寒いとは思わなかった。
これは……雪?
その時下の景色が少しずつ見えて来た。最初は辺り一面雪が積もっているだけかと思ったが、周りを見れば家が何軒か並んでいる様子が確認できた。
遠くには巨大な城のような建物も確認出来た。
リィラは恐怖を感じた。なぜなら。
眼下に見えるのは針の剣山だったからだ。降り積もる雪があっても目立つくらいそれは赤黒い針を表している。
「砕練刀」
リィラは岩の刃を発現し衝撃で針を壊そうと試みる。
リィラは荒れ狂う空気の中刃を振るう。
リィラが着地する前に針を壊す事に成功した。リィラはそのまま降り積もる雪の山に落下する。
「はぁ、はぁ、良かった……何とかなった……」
ここは一体何処?私は敵の能力で何処か別の場所に飛ばされたの?
体が痛いけど!何とか立ち上がらないと!
「いいえ、飛ばしてないわよ。」
近くに、来ていたのは白い衣を纏った桜色の鱗が生えた竜。
「ラメア!」
「あなたは閉ざされたのよ残念ながら死の場面にね」
「......!!」
声を上げる暇も無かった。気づいたらそれはあった。
……さっき、壊したはずなの……に。
意識がまた薄れていく。
「諦めた方がいいわねぇ、私の場面旅行にかかったものは自力では脱せない……私と戦うなら、強い精神力がなけりゃだめよ、強靭な運動能力、筋力なんて私の竜力の前では、ただの赤子なんだから」
「諦めて、たまるもんです……か」
ラメアはリィラの根性に驚いたようだ。
「あら、すごいのねぇ、"感心"するわぁ、その"状況"でよくそんな事言えたものねぇ、ただの無謀っていうのにね。」
「まぁ、いいわよ……さぁ」
ラメアはリィラを哀れむ目で見つめて言った。
「心逝くまで、死になさい」
リィラは地面から生える何本もの剣山に体中を串刺しにされ、遂に目の前が真っ暗になった。




