第61話 〜銃の帝国〜 激戦への幕開け
不定期投稿ですが、よろしくお願いします。
ラヴァが重症だわ!
近くの建物の、壁にラヴァをもたれさせるとリィラは応急処置をした。
「ラヴァ! しっかり!」
リィラはラヴァの傷口に包帯を巻いたが、特に腹の出血がひどく、包帯越しでかなり血が滲んでいる。
...追いつくのが遅れた……
岩龍ログが言った。
「リィラ…俺は近くに、誰かいないか探してくる。あまり、離れないようにする。」
「分かったわ。」
岩龍の腕に巻かれた包帯から見える出血が止まっているのを目視で確認したリィラはログが少し離れると目をラヴァの傷の具合を再び見る。
「わりぃ、リィラ今動けねぇんだ俺……」
「だから、俺をここで……」
「ラヴァ!」
「ん?」
「ちょっと安静にしないと……治せないじゃない!」
「いや、リィラもう俺の事……」
「ラヴァ!」
「ん?」
「先に行くのは貴方の傷が良くなってからだから。」
「……すまねぇ。」
その後ラヴァは静かになった。息遣いも荒く、包帯だけではとても良い処置とは、言えない。
何か、方法があれば!
そうだ、ロウラさんのあれが使えたら……
「零院再生!」
リィラは思い出していた、治療士ロウラが使っていた治療の竜技を。
リィラの手に青く煌めき雨が発現しかけたかように、見えたがその後すぐに消えた。
「治薬慈!」
リィラはソウが使用していた、黄色い火花が飛び散る治療の力をイメージした。リィラの手から少し電撃の音が聞こえ始め、パチパチと黄色い火花が一瞬散った。
が……すぐに消える
ダメだ……見ただけじゃ、私の竜技は使えないわ…
時間もない……ここも安全じゃない……またさっきのように襲われたらどうしよう?
私も今はまともに闘えないし……足を怪我して走る事が出来ないわ……
じゃない!何言ってるのよ!弱気になるなら!私!歩けるでしょ。立てるでしょ。
それより、私より、傷の深いラヴァが心配だわ。
「ごめん、ラヴァ……私、治してあげられないけど
絶対、死なせないからね!」
リィラは、ラヴァに抱きついた。
先程よりも、ラヴァの少し唸っているような龍の息遣いがハッキリ聞こえる。心臓の音も、微弱だ。
「……リィラ」
「スレイプニルを倒したらリペアに会いに行こう」
「そんなの……当たり前だぜ」
「今度こそ夕飯一緒に食べようね。」
「それはいい……たくさん食わせろよ」
「えへへ、もちろんよ!」
「ああ、何だか痛みが引いた気分だ……」
「そう?」
「こんな気持ちは初めてかも知れねぇ……」
リィラはラヴァを見た、少し微笑んでいた。尻尾が少し揺れてる。
「リィラ……ありがとな」
「リィラ!」
その時リィラを呼ぶ声が。
ログ.... あっ!!
ログの後ろにいたのは、黄色い龍と少年。
ソウ、ジル!やった、来てくれたのね……
リィラは安堵したのか、意識を失う。
「わあ!? リィラ!?大丈夫なの!?」
ソウはジルとともに駆けつけて来た。
「よ、よぉ、久しぶりだな……ソウ、ジル……無事で……良かったぜ」
ラヴァは駆けつけて来た2人に声を掛けた。
「大丈夫か!お前ら?大分傷が深いぞ。」
「あなたは、確かリィラの師匠……」
1番傷が深い。早く治療をしないと!
「すまないが……2人を頼めるか? ソウ?」
ログは申し訳なさそうにソウを見て言う。
「大丈夫です!それに、頼れる人がもう1人いるので!とりあえず、今は一旦応急処置をしてそれから合流しましょう。」
***
それから、銃の帝国で数日経った。
リィラ、ログ、ラヴァ、セレン、ジル、ソウ、ウラノス、エンジュ、バロウ、一同は戦闘態勢を整え挑む。
パイソン、スレイプニル、ラメアが居るとされる拠点へと向かって。
***
ここは、拠点。大広間。応射竜パイソン、原染竜スレイプニル、心持竜ラメア、 銃帝六射シュール、マーレア、投爆竜ボマードは対峙していた。
リィラ達9人と。
「すげー……ここまで来たのか!?」
応射竜パイソンは予想外の事にびっくりしていた。
「9対6かぁ、分が悪くねぇかぁ?」
「いいや、そんな事は無いぞパイソン、余には配下が2人いるのだ……さっき呼んだ」
スレイプニルは近くの窓が割れるのを確認した。
リィラは後ろにいた龍に見覚えがあった。
灰色の竜と、ログと洞窟から必死の思いで逃げた時に見た朱色の竜。
「余は待っていたぞ、ロビン、ジュア。これで8人だ。」
夕焼けが照らすこの国で、激しい争いが始まろうとしている。




