第57〜銃の帝国〜 vs銃帝六射 ソレイユ&ウィル
不定期投稿ですが、よろしくお願いします。
「射導!」
逆填竜ウィルはラヴァの背後の建物の影から銃弾を作りだした。
何処だ何処から来る!?
ラヴァは耳を済ませた...気配を研ぎ澄ました、周囲をくまなく探した。
...!
...危ねぇ!後ろからか!
炎の刃で薙ぎ払う。
「...今度は撃てた!撃てたっす!」
敵のウィルは何処かほっとした様に見えた。
...あいつの攻撃は後ろからやるってのが決まりなのか...まじで厄介な相手だぜ。
ソレイユって奴も自分から仕掛ける気はねぇ様だな...
俺が隙を見せるのを待ってるみてぇだ...
どうにかして2人同時に倒さねぇとな...
ラヴァは 時炎怒を構え相手を警戒しながら周りを見ていた。
後ろの方向には当分先まで行かなければ曲がれそうな角はない...右と左側には飛び越える事の出来ない建物が並んでいる。
砂利の砂が広がる一本道。使えそうな障害物は近くにはない。
ちっ、こうなったら一か八か!
ラヴァはウィルの方に詰め寄る。
...こいつから先だ!
ラヴァは腕に脈を通わせ炎の刃をウィルの近くで地面に叩きつけた、ありったけの力を込めて。
「うおおぉ!」
砂利は勢いよく跳ねた...爆発が起きたとでもいう様なくらいの石礫が広がり、それはほんの少しの間だったが、2人の視界を遮るほどには充分な石の螺旋を描く。
今だ!今の内に倒す!
太陽が照る昼間の帝国内でラヴァは炎の刃を構え、ウィルに狙いを定める、横一線に振ろうと迫っていた。
石礫が宙に舞う中でラヴァは必死に相手の懐に詰め寄った。
「...そこに影があればいいっす」
ウィルは怯まずしっかり構えていた。 射導を。
「...!?」
ラヴァは背中に衝撃を感じその勢いに逆らえず体勢を崩してしまい倒れた。
ウィルはラヴァが走る背後の人型の影から銃弾を作りだし背中を狙っていた。
くそ!一歩遅かった!あと一息なのに!
「ソレイユ! 今っす!」
「えぇ、 放眠口!」
体勢を立て直しかけるラヴァの肩にソレイユの催眠弾が当たる。
しまった...やべぇ...眠い...敵の...攻撃か。
ラヴァは意識が現実から遠のいていくのを感じた。時炎怒を握ったまま倒れ....
....!!
途端にラヴァは意識がハッキリ戻った...地面に倒れる寸前だったので手で支え立ち上がる視界を戻すと...相手は予想外の表情を浮かべていた。
...そうか、煙を吸えば起きれんだな!
「なんで!すぐ目覚めたの!?」
ラヴァは体勢を取り戻し瞬時にウィルに攻撃をしかける。
「ちっ、機を逃したっすか!」
ウィルは後ろに飛び退き避けようとする。
「時炎渡!」
「伸びるんすか!?」
「ああ、とどめだぁ!」
ウィルは炎の刃を受け砂利に倒れる。
そして再びソレイユを狙う...ソレイユは避けようとしたが、ラヴァの圧倒的反射速度はその回避先に対応した。
「くっ!」
ソレイユもまた直撃を受け吹き飛ばされた。
***
強い、相手は1人だというのに...
...相棒...生きてるよね...まだ...
私達は2人で最高なんだ...合戦を...勝ち残ったんだ...
あの時とは違う!不特定多数の相手じゃない!たった1人のあいてなのよ!そして、私達から攻撃を仕掛けた圧倒的有利状況!
...のはずなのに!
ソレイユは側面の石礫を握る。
...いいえ、まだだ、まだ勝機がある。
私のセカンドウェポンで!
利労同を最大チャージ!
銃帝六射ソレイユのセカンドウェポンは 利労同を最大チャージする事で使える。しかし、発動している間は 利労同が使えない。
「盲点呼応路!」
虹色の眼帯が外れた...少女の右目から赤い瞳が一瞬煌めき。静まった。白いツインテールの髪を首元まで下げた黒い服装でドレスを身につけた少女は一層冷たい威圧感を放ち立ち上がった。
「まだ、立ち上がんのか!」
ラヴァは炎の刃を構える。
「えぇ、侵入者1人に負けるほど私達は弱くないわ!」
...こいつ、雰囲気が変わった!?なんつーか本気を出したような、そんな感じだぜ!
後ろの竜はもう、動かねぇよな? かなり力を込めてやったから、もう立ち上がれねぇはずだが...とりあえず今はこいつに集中しねぇと
ラヴァは接近し刃を縦に振る。
「見えてるよ...あんたの『盲点』」
「...なんだ!」
ラヴァは連続で剣を振り払う、振るたびに燃え爆ぜる音が鳴り響き、空を斬る。
なんだ!? こいつ!? こんなに攻撃してるのに!
...もう何回も何回も相手を狙って攻撃していたが、
ラヴァの剣閃は1つも当たらず。
相手は全てを避けた。
「残念だったね...今の私に攻撃を当てる事は出来ないよ...なぜなら...」
少女は不敵な笑みを浮かべる。
「私には見えてるから、あんたの攻撃の『盲点』そして、隙の『盲点』...相棒!左肩、右脚、腹よ!」
「任...せろっす!」
ガチャッと後ろで音がした。
...やはり、立ち上がってきやがるか!
ラヴァはソレイユに炎の刃を横一線に振り後退させ、ウィルの方に振り向き攻撃を受けようとする。
「処図丸!」
それは、先程ラヴァに向けて撃っていたものとは違った、銃身が長く大きい得物だった。
銃帝六射逆填竜ウィルのセカンドウェポンは1度に沢山の弾を発射できる、火力の高い銃弾。影が無くても発射できる。装填数は 射導と共有する。5発以上弾が残っていないと発射出来ない。
ウィルは残弾残り5発に決着を賭けた。そしてその場に崩れ落ちた。体力の限界のようだ。
「ぐぁぁ!」
弾はラヴァの左肩、右脚、腹に命中した。近くの壁で2発の金属音が鳴り響く。堪らず倒れそうになり近くの建物にもたれかかり、しゃがみ込んだ。
ハァ...ハァ...痛ぇ、肩が、腹が、足が。
傷口から鮮血がドクドクと流れている...意識が朦朧としてきた。
...死ぬのか...俺...ここで...だめだ...しっかりしろ俺。リィラとログが危ねえじゃねぇか
リィラに俺の竜技をまだ教えられてねぇ!
リペアにもあの時の礼が言えてねぇんだ!
スレイプニルって奴も倒さねぇといけないんだぜ!
ここでやられてんじゃねぇよ俺!
すぐ近くで声が聞こえる
「相棒! とどめを!」
「だめっす、ソレイユ!弾切れだ!利労同を!」
「ごめん、今セカンドウェポンを解除している途中なの今は無理だわ...」
...何とか...しろ、俺、何とか!
やるしかねぇ、今ここで!
「こうなったら、殴り殺すわよ!弱っている今なら!」
「ソレイユ、だめだ、下手に近づくと反撃を受けるかもしれないっすよ!?」
こいつらは、殺る気だ!本気だ!あぁ、そうだ!リィラも傷付けられた、ログが俺達を助けてくれなかったら、俺達は即死だったんだ...
俺には油断があったんだ、気を抜いていたから...仲間も守れず...
あぁ!考え出すと腹が立ってきたぜ!自分に!もういい、ただ俺は"怒るだけだ"。それだけが俺の力の源!
充分だ!リィラとログを傷付けたこいつらへの"怒り"と守れなかった俺自身への"怒り"があれば!
"身に纏えるぜ!"
「分かった、相棒!今解除が終わったから 利労同するわよ」
「頼むっす!」
その時とてつも無い爆発音が聞こえた。
「なに!?」
「何すか!?」
そこに立ち上がったのは赤い龍だった。全身 紅に染まった鱗は溶岩の様に鱗の繋ぎ、繋ぎを明るく輝かせ顔に生えてる赤髭を獅子のタテガミの様に逆立て頭頂部から炎を線の様に灯し生えさせていた。そして、しっかりと形どった炎の刃を右手に構え壮大な熱気を放っていた。
「時炎怒王」
ラヴァは、竜技 時炎怒と 竜力 時炎渡の力を合わせる事が出来る。その時にこの姿を保つ事が出来る、究極の諸刃の剣である。
しかし、使用した後の反動は大きく、本人はあまり使いたがらない...しばらく体の調子がおかしくなるからである。
「処図丸!」
ウィルはソレイユによって補充された、最大装填15発全てを撃ち込んだ。
「やっぱ熱すぎんだよ...この炎はよ....」
「うそっすよね!?」
「そんな!?」
ウィルが撃った筈の弾はラヴァに近づく前に"溶けるように消えた"
ラヴァは足を蹴ってソレイユ、ウィルに炎の刃を一閃ずつ間髪入れずに切り抜ける。
ソレイユとウィルが最後に聞いたのは絶望の 火と言。
「終わりだぜ。」
「あ、相...棒...」
「ソレ...イユ」
2人はラヴァの 時炎怒王になすすべもなく倒れた。




