第52話 〜色花の都にて〜
不定期投稿ですがよろしくお願いします。
回想 〜色花の都にて
「これで記憶は全て戻った...」
岩龍ログは崩れ落ちる木だった岩の砂を見てそう言った。
...思い出した、全て...
...そうだ!俺の忘岩には...あの時!
...この気配は! まずい!
ログは手にしていた岩の弓を地面に置く。
「砕練刀!」
「ログ!? 一体何をする気?」
ログは岩で生成された刃を岩の弓に振り下ろそうとする。
「おい、ログ!? それがどうかしたのか?」
その時 忘岩から、青白い魂の様なものが突如出てくる様に外に出た。
「くっ!逃した」
「えっ何、タマシイ!?」
「魂って見えるもんだっけか?」
青白い魂はログ達から少し離れた奥で留まるかと思いきや人型の形に大きさが変わっていく。そして、水色、藍色、紫色の様々な青調の色の鱗で覆われた漢龍が現れた。頭からは鬼火の様な蒼い炎が不気味に燃え細い目を覗かせている。
*漢龍 性別 男性の龍
「...まさかバレるなんて、恐ろしや」
「君は"霊幻の龍神"か!?」
ログは目の前の竜に問いただす。
「覚えていてくれるなんて、恐ろしい...そう、わたしは霊霧竜ストーラル...」
「何故俺の忘岩に君が!? 」
「そ、それは...今さっき思い出した所...わたしはログのお目付けとしてウェルディートに頼まれた...そしてわたしの"竜技保留魂素機流で忘岩に取り憑いていた。」
「そうか...ウェルディートが...」
...ウェルディートはここまで予測していたのか。
「しかし、わたしは取り憑いていたがログはその後自分の記憶をこの場所に封印した、わたしは近くにいた為巻き添えになった...思い出しただけで恐ろしい...わたしは無意識にログの忘岩で関係ない人の記憶を奪って来たのだと思うと...身が竦む...」
三重の美芸霊霧竜 ストーラル
竜技 保留魂素機流
1 竜技、竜力、竜能のどれかに取り憑く事が出来る。
2 取り憑けばその能力の効果を呪いとして、他者に影響を与えることができる
今回はログの忘岩に取り憑いていた。本来なら任意で"記憶奪取"の呪いをかけられるのだが、ログの記憶を封印するときにストーラル自身も受けていた為、記憶は無くしたが...役目は本能的に覚えており、無意識に"記憶奪取"の呪いを周囲にかけていた。
リィラがリペアの事を忘れていたのも、ラヴァの竜能を忘れさせていたのもこの為である。
「だが、ログ、わたしが思い出したという事はみんな元に戻ったって事なのか?」
「あぁ、問題ない...奪った記憶は全て元の持ち主に戻った」
「そうなのか....それは恐ろしいことだ...」
「ログが奪った封刃一族の記憶が全て戻ったって事だろう...また、敵が増えるという事...絶対絶命では?...ログ...最初からやり直すのか?」
...俺は覚悟していた
...今まで奪って来ていた封刃一族の記憶は数えきれないほど...
...当然俺を恨んでいる者、殺そうと思う者はいるだろう
思い出すまでの失った時間は誰にも取り戻す事は出来ない...
...それでも俺は成し遂げたい。
「ログ...」
ん? リィラか?
リィラはログのゴツゴツした腕を掴む。
...ああ、そうだ...今は1人じゃない
「ストーラル...俺は封刃一族を救おうと思うんだ...記憶を奪わずに...」
「...ウェルディートから聞いていたが...本気なのか? ログ...無理じゃないのか?」
ストーラルは首を傾げている。
「本気だと思うぜ、ログは」
火龍ラヴァはログの横に並びそう言った。
「ああ、良ければストーラルも...」
「わたしは無理だと思う...そんなやり方、恐ろしい..."封刃の意思"はそんな簡単に御せるはずがない!」
「...!?ストーラル?」
ストーラルの様子が変わった。目を見開かせ殺意ある目に変わった。
「やはり、ログ...あなたはここでわたしが止める...同志を殺めるのは恐ろしいことだが、致し方ない!」
「過燃群照楽」
ストーラルは身体中の鱗から紫色の煙を周囲に充満させた。
「ゲホッ、これを吸うなリィラ!ラヴァ!」
ログは鼻を抑えている。
リィラは頷き手で鼻を抑え近くの木の陰に隠れる。
その後ろをラヴァが庇う。
ラヴァの身体の赤い鱗は紅く輝き...薄暗い森の中で少し目立っていた。
遠くから見ればそれは赤光りする、細胞のように見える。
「ラヴァ、お願いがあるの」
「おい!リィラ!今喋るな!吸うだろ!」
リィラは鈴をラヴァに見せる。
ラヴァは頷いた。
次第に煙が消えた。
「忘岩!」
ログは岩の弓を構えストーラルに放とうとする。
...何だ...これは矢が撃てない
...足がすくんでいるのか...撃つ気はあるのに!
...身体が身震いしている...何でだ
「恐ろしいだろう、わたしの"恐怖を吸い込んだ"からだ
わたしの"恐怖は攻撃をさせない"その意思があったとしてもだ」
...俺は奴の能力に完全にハマってしまったのか...
「ログ! 」
「だめだ!リィラ!君は逃げるんだ!」
ログはリィラを見た。
...リィラも震えている...まさかリィラも
リィラはそのまま腰をぬかした様に崩れ落ちた。
「ログ!どうしよう?、体が上手く動かない!これは"毒"なの?」
「違うよ!お嬢さん、"恐怖だよ"恐怖は攻撃の意思をもたせない、もちろん逃げ回るという事も封じるのさ..」
「くっ! ストーラル! リィラには手を出さないでくれ!」
「難しい話だな、リィラとかいう少女ともう1人の赤い龍は『封刃』一族だろう? わたしはその2人からは違う特有の"恐怖"を感じている...無力化しなければ 」
その時ストーラルは何か気配を感じたのか横に飛び避ける。
何も無かったと思ったそこには燃える炎の刃、 時炎怒を持つ。火龍ラヴァが現れた。
「なっ!何で避けられたんだ!完全に隠せていたはずだぜ!?」
...なんで!? 私は 来利空音透でラヴァの 時炎怒を透明化し、砕練刀でラヴァから発される音を消したのに...
あいつは分かっていたかの様に避けた!
「予死回避がいきなり発動するとは、恐ろしい!その赤い龍は姿も音も消せるとは! 先に片付けておかなくてはわたしは死んでしまう。」
「過燃群照楽!」
ストーラルは再び紫色の煙を鱗から発する。
「ラヴァ、絶対吸わないで!」
「分かってる!」
ラヴァは煙から距離を取る。
...何処に行きやがったあいつ...
その時後ろに気配を感じた!
「後ろか!」
ラヴァは後ろに横一線に炎の刃を振るが
空振り。
「いねぇ!...うわ!」
その時ラヴァは背中を力強く押された。たまらず地面に転げ落ちる。
そこは紫色の煙が充満していた。
「ゲホッ、やべぇ!」
「1度で全員吸わせるのは難しかった、やはり『封刃』一族は恐ろしく強いねぇ」
...ラヴァも吸ってしまった!ログも、私も
闘えるものが1人も居ないなんて...




