第42話 怒雷武雷降(ドライブライフル)
不定期投稿ですがよろしくお願いします。
「ジルさん! 」
...ジルさん! いた!
稲妻龍ジルは仰向けに倒れていた。
しかし、その隣で水車を発現させる、金髪の女性がいた。
「雷降!」
「ちっ、新手か!、せっかくトドメが刺せたのに!邪魔ね!」
女性は水車を解除し後ろに跳びソウの雷降を避けた。
...結構動きが早い!
雷は落ちる。しかし、当たらない。
「あなたが、紋章照準の使い手ね!」
「エンブレイム? 何の事だ!」
「知らないの? まぁ、いいわ、侵入者は撃退する決まりだから。」
「爆流貫!」
水車が出現した。即座に水の弾が撃たれる。
隣接する建物の壁から雷が横一直線に落ちる。
それは水の弾全てを薙ぎ払うように砕き弾いた。
「そんな使い方もできるの? 優秀じゃない。
ただの、単発の攻撃のくせに。」
...危ない、雷の紋章を壁に撃ち込んでいて良かった。
...ぼくは、雷降でしか闘えない、ジルさんのように刃を振るう事は出来ない。
だけどジルさんの動きはいつ見ても参考になる。
刃は振るえないけど、僕が撃つ雷降は"一直線に"雷が落ちる。
ジルさんの怒雷武も"一直線"の雷の刃。
全く違う訳じゃない、考えようによっては...一直線が曲がる事は決してない。
なら僕にも僕なりの方法でジルさんの様な動きが出来るはず。
ジルさんは一直線の雷の刃を振るう。
僕は一直線に落ちる雷の紋章を撃ち込む。
僕とジルさんで大きく違うのは"時間差"だ。竜技の性能だけじゃない。
じゃあ僕がやることはひとつだけ。
雷が落ちる"タイミング"を調整するんだ。
...前から出来ると思ってた。僕はいざ戦闘になるとすぐに攻め急ぐ。多分 雷降を撃っている時に引き金を強く握りっぱなしだから、そのまま落ちていくんだ。
...あいつの弾はかなりの数を1度に沢山放つ。
ジルさんが剣で防ぐように。雷をさまざまな角度で一直線になるように紋章を撃ち込む位置を考え無ければ!。
そうだ、やるんだ!僕は今まで撃ったことの無い空に。
雷の紋章を発現させるんだ!
イメージしろ! 何も無い空に紋章が浮かぶのを。
そこに的があるという事を。
僕はジルさんのようには速くない...だから、量を撃たないと奴の攻撃は防げない。
...だけど、ジルさんは? どうするんだ!? 倒れているのに!
ジルさんから離れれば敵はすぐに殺すだろう。
...でも、同じところに留まっていては雷降の軌道が読まれやすい...あいつの水鉄砲に返り討ちだ。
どうすればいいんだ!
「ソウくん!」
「...!ウラノスさん!」
ウラノスさんが来た! やった!あれ? 傷は?
「爆流貫!」
水の弾が勢いよく発射される。
「輪歩」
ジルとウラノスとソウはすぐ近くの建物の上に瞬間移動した。
ジルは気を失っているようだ。
ソウは急いでジルの傷口に 治薬慈を施した。
「ウラノスさん、傷は大丈夫ですか?」
「あぁ、私は大丈夫だ、空論再生の分身体だ!本体はまだ近くまで来ていない。」
...そうか、そういえばウラノスさんには分身能力があったんだ。
「ソウくん、今なら逃げられる、どうする?」
...ぼくは....正直逃げたい....
...でも
「僕は逃げません! ジルさんは戦ったんです、不利な状況ですが、勝機がないわけじゃ無い! ウラノスさん、力を貸してください!」
「分かった!私は本体よりも能力が劣るから、少しの距離しか移動出来ないが助力する。もしもの時は私を盾にしても大丈夫だ!本体には影響はないからな!」
「分かりました!」
...ジルさん、僕達は闘うよ!待ってて、後でちゃんと治療するから
ソウとウラノスは建物の屋上から真下にいる、敵に向かい飛び降りた。
ソウは空中で何度か雷降を撃ち込む。
「また上か! 私の爆流貫の欠点を狙うつもりか!」
今度は私も角度を変える。水車は水平にしない。
私は表裏一体の水車弾を横回転させる!
銃帝六射のマーレアは浮かぶ水車を横回転させ、そのまま水の弾を放つ。
どうだ侵入者! これで私の射撃範囲は!全方位!
「数撃ちゃ!当たるのさぁ!」
....そんな!無茶苦茶な!あいつ、自分も巻き込んでまで!乱れ打ちだって?
「輪歩!」
ウラノスの"連続瞬間移動"でソウ達は水の弾丸の嵐を必死に避ける。
ソウは脇腹に被弾した。脇腹から流れる血は水車に引き寄せられる。
水車は更に赤く濁る。
「くっ!」
痛い! けど、、僕は....倒さないといけないんだ!
2人はついに地面に降り立った。
「あんた達!次の瞬間、蜂の巣だよ!」
爆流貫による、猛攻は止まらない。ひたすら回転を続けている。
マーレア自身も攻撃を受けている、体中血だらけなのに、笑っているその姿はとても常人とは言えない。
水の弾丸がソウ達に襲いかかる、
...やばい! 当たる!
銃が当たる鈍い音が聞こえる。
ドサッ!っと倒れる音が1つ。
銃声は止んだ。
ソウは目を開けた。
ウラノスだった、倒れたのはウラノス。
「ソウくん、すまない、分身も限界だ。何とか逃げるんだ。」
ソウは少し目が潤んでいた。
「ウラノスさん、ありがとう、おかげで僕は....」
「闘えます!まともに! あいつを!倒せます! 」
「そうか...私の本体ももうすぐ来るからな!」
ウラノスの分身は空中に溶け込むように消えた。
「死んだかな? 2人とも? おっと目に血が流れてて良く見えないわ」
マーレアは血を拭い、周りを見た。
「...!?」
マーレアは驚愕した。
黄色い紋章が空中に沢山浮かんでいた。それもかなりの数だ。
まさか...この紋章照準を同時に撃つ気なの!?
「これが!僕の竜技!雷降だ!これが僕の雷の刃だ!」
ソウは引き金を引いた。
空中に多数浮かぶ雷の紋章は紋章と紋章を繋ぎ、一直線に雷が発生していく。
それは、敵の周囲を囲み、レーザーのようにも見える、高威力の切断攻撃。
「ちくしょおお!」
敵は避けることも叶わず。連続で直撃を受ける。雷鳴は何度も鳴り響き決着の時を告げる。
そして、銃帝六射、マーレアは倒れた。
「ソウ! 」
近くの建物の屋上で目を覚ました、稲妻龍ジルは立ち上がってソウに声をかけた。
「ジルさん!」
...良かった目を覚ましてくれて。
ジルさんは建物屋上で右手を掲げ怒雷武を発現させていた。
真昼の太陽に照らされたジルさんの鱗は黄金の様に輝いているようだ。
虎の風貌に似た龍の表情からは嬉しさと敬意と鼓舞を、僕は感じとったような気がする...
ソウも掲げる。雷降を発現させて。
ジルとソウの視線が交じり合う。ソウは自然に笑みがこぼれた。
...やったんだ!僕達は....目的はまだなのは分かっているけど
...絶対に僕達が倒すんだ! スレイプニルを!
これからどれだけの強敵が待ち受けようと。...犠牲があろうと。
僕の村を滅ぼしたスレイプニルは絶対に倒す。




