第36話 次なる目的地
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不定期投稿ですがよろしくお願いします。
★★☆
「...! 」
...俺は、寝ていたのか....
龍治院から少し離れた草が生い茂る広場で岩龍ログは目を覚ました。
近くには噴水がある、空は青空だ。
心地よい温度でカラッとした風が吹き爽やかな朝のよう。
木のベンチの上で寝ていたようだ。
「ログ! 待たせてごめんね!さっきリペアと会ってきてね、やっぱり知り合いじゃないみたいで」
ログは見慣れた少女が歩いて来るのを見て少しホッとした。
「...リィラ、大丈夫だ、少し寝てたみたいだ ...
そうか...リペアは知り合いではないのか....」
「大丈夫? 少し休む? 」
心配そうな顔をしてリィラはログを見る。
...リィラ...優しいんだな...君は....
「いいや、問題ない....それより、リィラ、聞いてくれ 」
「えっ、どうしたの?」
...俺は話さなければならない
"やっと思い出した"
俺は......
"あれは夢じゃない"
「リィラ、俺は『三重の美芸の1人
"操憶の龍神 "なんだ」
「えっ?」
「つまり、俺は、君の敵なんだ....」
「そんな...いきなり言われても....」
リィラはかなり驚いている様子だ。
...無理もない...
今まで一緒に戦ってきた。
そして、俺はリィラに助けられた。
リィラは"命の恩人"。
俺の爪が反応している。
やはりリィラは"封刃一族"
今思い返せば時炎怒を操る、火龍ラヴァもそうだ。
「俺は、ここを離れる....俺は敵だ、リィラ、君は俺を助けてくれた。その事を俺は決して"忘れない"
だが俺はもう三重の美芸には戻らない。
やらなければならない事がある。」
ログはリィラを尻目に映した後、この場から立ち去ろうと、歩き出した。
....!?
その時ログは手に暖かい感触を感じた。
振り向くとリィラが手を握っていた。
「どうした?」
「ログ! あなたは敵じゃない、三重の美芸だったとしても、今まで何をしてきたのかは分からないけど...
少なくともあなたの話を聞くまで、私はあなたを
信じるわ!
だから...やらなければならない事って?
私にも教えて! 力になりたいの!」
...危険な道程になる...
...リィラは巻き込みたくない
...自分でやらなければ...
「ログ!1人で抱え込まないで...
あなたは私の恩人なのよ!」
「だが、リィラ...命懸けだぞ?」
リィラは意を決したようにログの目を見る。
曇りなき決意と勇気に溢れた目をログは感じた。
「私の恩人を助ける為ならそれくらい"覚悟してる"わ」
...本当にそれでいいのか....
...巻き込まれるぞ、痛い目にたくさん会う
...ダメだ、俺は...頼ってはいけないんだ
...自分の過ちは自分で取り返さなければ...
「リィラ、それでも、俺はリィラに傷付いて欲しくないんだ...たった1つの命、大切にするんだ...」
「...ログだって、自分を大切にしてないじゃない...
もう、私勝手に付いていくわ...」
...仕方ない、こうするしかない
...リィラ、君のことは絶対に忘れない....
...絶対に.....
「リィラ....すまない...もう、俺の事は忘れてくれ....」
「忘岩!」
ログは岩で生成された弓を構え。リィラを狙う。
「ログ!? やめて!」
リィラはログを取り押さえようと飛びかかる。
ログは弓を引き絞り放った。
岩の矢はリィラの左手を掠めた。血が少し流れる
リィラは猛スピードでログに飛びかかったのでログは無防備にリィラの身体を受け止めお互い地面に倒れる。
「うぐッ!」
突然床に倒れた衝撃でログは顔を顰め、目を瞑る。
ポチャン。
ログの目に何か雫の様なものが落ちる。
...あっ、雨か?いや噴水の水か...
ログが目を開ける石畳の上に噴水の水が吹き上がっているのが映った。
しかし、少し遠かったのでそこからではない。
空も快晴である。
ログは横に向いていた顔を正面に向けた。
リィラはログの上に覆い被さる形で仰向けのログを見ていた。
茶髪に赤毛の混ざった少女は涙を流しログを見ていた。
「ログ.....私は......あなたの味方よ!......」
...なぜ....
...リィラの"記憶を奪えていない"...
...確かに手の平を掠めた、"忘岩"は矢を掠めるだけで記憶を完全に奪えるはずだ
「リィラ、俺の事は.....忘れたんじゃ....」
「忘れるわけないじゃない!忘れないわよ!助け合った仲じゃない!」
「...!? リィ...ラ....」
ログは目頭が熱くなっているのが自分でも分かった。
流れ落ちる、雫は止まらない。
...どうしてだ?本当にいいのか...
...リィラ...君という人は.....
「ログ.......私は....大丈夫よ!」
涙を流しながらもリィラは笑う。
過酷な運命が待ち受けているというのに....
そんなリィラの行動にログは心を打たれた。
「リィラ...」
ログは左手を差し出した。
"ありがとう....これからもよろしく"の想いを込めて。
2人は力強く握って和解した。
****
「リィラ、これからは行く所は危険だ、だが安心してくれ、俺が君を死なせない、俺は"操憶の龍神だ、
そして俺は今まで何人もの人や龍の記憶を奪った。
どうやら、その罪の意識に絶えられず
俺は自分の記憶さえ奪ったようだ....不甲斐ない。
だが、俺は今まで奪った記憶を元の持ち主に戻すと約束する。
その記憶を封じている場所まで行く。」
「本当にいいのか、こんな俺と一緒で...」
リィラはログを見た。
改めてログを見ると背の高さを意識させられる。
*ログ、身長240cm
尻尾は床から少し上の方に反らせている。
身体中肌色や茶色いのような鱗で覆われていて、全体的にガッシリとした肉体で。
顔はまるで亀の様な顎になっていて、頭はゴツゴツした岩の突起が綺麗に並んでいて。
その目は細いがしっかりと生き生きさを放っている。
「えぇ、もちろんよ! ログ!」
2人はそれから支度をして、ログの記憶が封じられているという場所。
"色花の都を目指す。
もちろん2人は知る由もなかった。
その場所は現在、三重の美芸が治めている場所だという事を。
次回は、銃の帝国に向かった、少年ソウと稲妻龍ジルと空創竜ウラノスが登場します。




