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竜技の師と弟子  作者: 鷹城
第1章 龍縁
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第3話vs 迷宮竜

 出口の日差しから薄暗く照らされた洞窟内で、

 岩龍(がんりゅう)ログと迷宮竜(めいきゅうりゅう)は刃を交えていた。

(くっ......何故(なぜ)だ? 奴に砕練刀(サイレント)

 全く届かない?)


 刃は迷宮竜の直角に何度も曲げられたような歪な剣とぶつかり合う瞬間に"不自然"に剣の軌道を曲げられている。


 互いに剣を弾き後ろに2.3歩距離をとり剣を構えた。


ログは疑問に思う。


(剣の軌道が曲げられていたとしても砕練刀から発している

 衝撃は効いているはずだが……)


 しかし、迷宮龍は衝撃を受けた様子ではないようだ。


「君、粘るんだね、おとなしくしてればいいのに」


 迷宮龍は螺琵輪州(ラビリンス)を構え走ってくる。

 そしてログを横一閃に斬りかかってくる。

 ログは襲いかかる刃を素早く膝を曲げしゃがみ(かわ)しそのまま迷宮竜の足に下段蹴りを繰り出す。


「なっ!?」


 下段蹴りを受けた迷宮竜は体制を崩し仰向けに倒れる。

 倒れたところをログは首に目掛けて砕練刀(サイレント)を振り下ろす。


「......!?」


 しかし、振り下ろした刃は首を切れていないようだ、迷宮龍の首の近くの地面に、突き刺さっている。


「危ないなぁ、岩龍(がんりゅう)、殺す気か?」


(これは!? 刃が曲げられている! 迷宮竜(めいきゅうりゅう)竜技(りゅうぎ)の力か!)


 ログはすぐに刃を抜き取り、再び振り下ろそうとした……


「なに!?」


 次の瞬間ログは洞窟の壁に吹っ飛び叩きつけられた。砂埃が宙に舞った。


 仰向けに倒れていた迷宮竜は体制を立て直した。砂埃が舞うログが吹っ飛ばされた方向にゆっくり近づいていた。


「今の衝撃は僕の竜技ではない……君の竜技は何か別の力があるね? 僕の竜技とぶつかった時あんなに火花が散っていたのに、音もしなかったから()()()()()()()()思ったんだけど違ったね……今の衝撃かな? だとしたら 僕がその衝撃を迷宮化しなければ僕が吹き飛ばされる所だったのか……」


(本当、危なっかしい竜技(りゅうぎ)を持っているな……岩龍(がんりゅう)の奴は)


 砂埃が舞い終わり始めた頃迷宮竜は螺琵輪州(ラビリンス)を構え警戒した。


「……!?」


 迷宮竜は大きく目を開き動揺した。


 岩龍(がんりゅう)ログは体中に傷を負いボロボロになりながらも壁に打ち付けられた体制のまま岩で生成した弓を構え迷宮竜が近づいてくるのを待ち構えていた。


忘岩(ボウガン)!!」


 ログは弓を力強く引き絞り放った。凄まじい速さで矢は迷宮竜に迫る。


(まずい、この竜力(りゅうりき)に当たったら記憶が奪われる!)


螺琵輪州(ラビリンス)!!」


 迷宮化で矢の動きを避けようとするが矢はすでに迷宮竜の心臓に突き刺さっていた。


「ぼ……僕が……こんな! ……」


 ドサッと音を立て迷宮竜は仰向けに倒れた。


「ハァッ……ハァ……ハァ……」


 ログはフラフラになりながらもリィラを探す、左手で脇腹を抑え、足を引きずっている。


「ログ!!」

 少し奥からリィラの声がする。


(リィラも無事か……良かった……)


「ログ?」

 ログは体勢を崩し左手を地面に着き(かが)み込んでいた。


 リィラはログに肩を貸し出口まで向かう。


「ごめんね、ログ......私......何も出来なかった。」

 岩龍(がんりゅう)は彼女から震えを感じとった。


「……リィラ……気にしなくていい……もともとは俺が.......奴に狙われていたんだ……俺は……君を巻き込んでしまった」


 リィラは横目でログを見た。亀のような風貌に似た岩龍(がんりゅう)は申し訳なさそうな顔をしている。


「そんなことないわ!ログ……私は絶対あなたを"龍治院"に連れて行くわ。あなたは私の命の恩人だから……」


(私がログを助ける)


 彼女は心にそう誓った。必ず成し遂げてみせると。


「ロビン!ここにいたのね?」


(誰だろう? 今の声は?)


 洞窟の奥から若めの女声(じょせい)が聞こえてきた。

 リィラはゾッとして後ろを振り返る。

 迷宮竜が倒れた場所が夕日のように照らされている、朱色(しゅいろ)の龍がそこに(かが)みこんでいた。


(もしかして!? 仲間!?)


「近くに岩龍がいたのね...何処だ?」


 朱色(しゅいろ)の龍は立ち上がり、

 手の平を下にして肩まであげた。

 すると朱色の龍の背後から

 円状の光る夕日の色のような輪が発現し朱色の龍とその周り5歩程度の距離を照らしていた。その輪が朱色の龍から離れログとリィラがいる方向へ照らしながらゆっくり近付いてくる。


(ヤバイ! どうしよう!? このままじゃ見つかる!)


「リィラ...君の透明になれる...鈴の力を使うんだ...

 俺の....砕練刀(サイレント)は触れれば........音を消せる」


 リィラはログを見てうなずいた。


「ごめんねログ......お願い!」

 リィラは鈴の音を鳴らす、その音を砕練刀(サイレント)で消していく。



来利空音透(クリアネス)......」



 リィラは囁いた。瞬間ログとリィラは透明状態になり洞窟の風景と同化していく。ログは自身とリィラの足に砕練刀(サイレント)を触れさせ足音を消した。


(やった! 出来た! さっき岩場にいた時は出来なかったけど……)



「ログ、出口までもう少し.……もう少しでつくからね......」









「妙だわ、今あそこから音が聞こえたような……」


 朱色の龍は出口の方に向かっていった。










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