第29話 決着の滅流刀
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Zzzzzzzzz.....!
開けた視界は天井を見ていたようだ。視線を下げる。
3Fという文字や茶色い木棚が視界に映る。
どうやら、床に眠っていたようだ。
「はて....」
「うーん」
「ここは......どこだったかな?」
「ん??」
--棚がならんであるのう...
--薬草がいっぱい入った瓶よの...
「おおー......そうだった...確かぁ.....んん?」
「はて......私は.....薬草庫に用事でもあったかのぉ?今日の仕事は終えたつもりだったというか、んー...また....眠りに落ちたのかのぉ?」
「....ふむ....用事....用事.......」
---なんちゅうか、窓の外の空が桃色に見えるのぉ、私の目が狂っているのかの......
鱗が生えた指で目を擦った。そのあと顎から生えた白い髭をなでながら窓を再び見る。
---ふむ、こんなものか....空は桃色だったのか....てっきり青色だと思っとった.......
「んー......私は....今までボケていたのかの......」
---それにしても眠いのぉ...またか....うえから音が聞こえるのぉ....
---何の音かのぉ? 何か不気味な低音だのぉ.....この音を聞くと何だか......
Zzzzzzz......
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竜治院4Fで 音毒龍シオンの襲撃を受けた、青龍エンジュとその弟子、少女セレン。
「培音輪・覆消共楽!」
シオンは空中に8本程の赤い弦を発現させ、紫色の音弓で全て弾き今ままでよりも一層不気味な低音を響かせる。
「離れろ!セレン!ここは、私に任せろ! 」
エンジュは腕に力を込め水の刃を発現させた。
「清ェィィ練!!」
エンジュはシオンの音弓に何度も水の刃を弾かせ、清練の強靭度を下げずに振り続ける。
「無駄ね、あなたの竜技は強くなり続ける竜技、私の竜技は弱くし続ける竜技そして....」
「覆消共楽はその力を倍にするの...."猛毒"へとね......」
不気味な低音は鳴り響く。
ーーくそっ!いくら高速で剣を弾き返しても清練
の鋭さが弱まるぞ! このままでは....
エンジュはシオンの音弓を受けるので精一杯だった。
「もう、あなたの体重は5kgくらいかしらね 」
シオンの音弓はついにエンジュの清練をついに弾き飛ばした。
すかざすシオンはエンジュに回し蹴りを繰り出す。
エンジュは軽々と通路の壁に叩き付けられた。壁は衝撃で沢山の亀裂が走る。
「グァァ!」
エンジュはそのまま地面に倒れた、体中から血が流れ落ちる。
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セレンはエンジュがシオンを食い止めてる間に反対側の洗面所の水道を全部開けておいた。
セレンの叢雲は水があればあるほど生成できる刃も増える。
(これなら!)
セレンは通路に出た。
(待ってて!エンジュ!)
セレンは衝撃の光景を目の当たりにした。
血まみれで床に倒れた青龍エンジュを。
その前にいた、紫色の竜が振り返った。
「さあ、次はあなたの番かしら、人間はか弱いから平手打ちにしといてあげようね 」
セレンは言葉にならない叫び声をあげた。
怒りが、涙が、同時に沸く。
「どうしたの? 私の倍音輪の音を聞かないように大声でもあげてるの? 」
シオンは微笑を浮かべる。
セレンはその紫色の竜を見て怒りがさらに湧き起こった。
「違う! あなたには分からない! 分からないわよ!......分かっても欲しくない!」
シオンはこの時セレンは倒れたエンジュを見て叫び声をあげたと理解した。
「まぁ、そうよね、あなた達だって私を倒しても可愛そうだとか同情なんてしないものね?お仲間さんを守ったと......そういう使命を達成したと思うわよね?あなたが、私ならそう思うわ」
(......私は......倒さなくては......こいつを!...エンジュを助けなきゃ!)
「叢雲!」
「また、それ??」
シオンはその時異変に気付いた。セレンが空中に浮かばせた水の刃の数は10数本ある事。そして。
「後ろにもあるのね!?」
シオンの背後にも10数本水の刃が浮かんでいる。
セレンは先程開けた洗面所の水道の水場から叢雲を大量に生成していた。
「はぁぁぁ!!」
(行け!これなら1つは当たる! )
空中に浮かんだ水の刃が次々にシオンに向かっている。
シオンは微笑して言った。
「ねぇ、あなた......離れれば私の"毒"は効かないと思っているのかしら?」
(えっ?)
水の刃をシオンは薙ぎ払うことなく、直立し、受けている。
シオンの体に当たる水の刃は傷1つ付けることなく細かな水しぶきをあげ消えていく。
「私の 培音輪・ 覆消共楽は相手の記憶に"音"の"毒"を"回す"事も出来る、一度聞いたなら、もう、忘れるまで音は....毒は消えないわ......」
ーーそんな....もう叢雲は全く効かない.....
セレンはシオンに首を掴まれ宙に浮かされた。
-苦しい! 息が.........
「平手打ちって言ったけれど、やはりあなたは何か危ない雰囲気があるわね....頭が切れるようだわ....」
シオンはセレンを通路の奥にセレンを投げ飛ばす。
セレンは通路の突き当たりの壁にぶつかり床に倒れた。
その衝撃はすぐ後ろの窓ガラスが割れるほどだった。
ーーこれぐらいやれば、あの子も動けないでしょう。
「さて、あなたもまだやる気なのかしら?」
シオンは後ろに倒れているが、怒りを剥き出しにしてシオンを睨みつけている、エンジュにそう言った。
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ーーーーーポチャン......
......うつ伏せに倒れていたセレンの左手に冷たい感触を感じた。それも不規則に。
ーーこれは....血......なのかな....私はここまでなのかな
---...レン!...おい、セレン!しっかりしろ!
セレンは意識をハッキリ取り戻した。
「はっ!私は.....」
目の前には紫色の竜がいる。その後ろでは倒れたままだがエンジュが清練を握ったままいた。
ーー駄目だよ、エンジュ、そいつには勝てないよ、もうボロボロだよ、お願い、立ちあがらないで.....あなたは頑張ったのに......
「セレン!、雨だ! 雨を使え!!」
ーー雨?......そうだ...これは雨だ
先程感じた冷たい感触は"雨だ"。
そう、割れた窓から降る豪雨。
全身打ち付けられ、身体中所々痛く、ずぶ濡れだったが、彼女の心は晴れていた。
セレンは痛みに耐え、震えながらも立ち上がった。
「何?.....また何かあるの?、それ以上動かないで、動けば抹殺よ 」
紫色の竜はセレンの方を振り返った。
セレンはシオンの言葉を無視し手をシオンの方向に掲げた。
「動かないでといったのに.......」
シオンは紫色の 音弓 培音輪を
構えセレンに迫る。
「叢雲ぉぉ!」
セレンは後ろの窓に降る豪雨を利用して次々に作られる
無数の水の刃をシオンに向けて発射する。
「私言ったわよ、あなたの記憶には毒が回っているの....こんなんじゃ....ただの水遊びね 」
「うぉぉぉぉぉぉ!」
シオンの後ろからエンジュが最後の力を振り絞りエンジュがシオンを追いかける。
ーー少女を始末した後、後ろの龍を片付ける。
シオンはセレンの目前へと迫ってきた。
「いけぇ!!エンジュぅぅぅぅぅう!」
「何ですって?」
シオンはこの時気付いていなかった。滝のような激しい水の音、いや滝の音というよりは海が全てを飲み込むような音といった所だろうか。
ーーまさか!?......狙っていたのは私ではない、正確には私の後ろにいる青い龍の竜技!!
シオンは後ろを振り返る。
この時セレンはシオンを狙ったのではなかった。
セレンが狙ったのは、鋭いものと弾き合うことで"無限大の強靭度"を得ることが出来る竜技、エンジュの清練だ。
清練はこれまでに無い激しい水音を鳴らし、鋭く、長く、強靭な刃となっていた。
「これで! 貴様を討つ! 滅流刀ォ!!」
エンジュは垂直に強靭な水の刃を振り下ろす。
ーこの程度で!私が負けてなるものか!
「培音輪・ 覆消共楽ァ!!」
シオンはありったけの力を込めて竜技を解放した。
しかし、発動するのが遅かったようだ。
清練の強靭度が限りなく増した"滅流刀"による斬撃は、シオンの竜技によって力を弱められていても、シオンが持つ倍音輪の音弓ごと斬り、シオンの身体に深く傷を負わせるには充分だったようだ。
「う、迂闊だったわ....」
腹部を斬りつけられたシオンはその場に倒れた。
滅流刀は解除された、あたりは豪雨がすぎたように静まり帰った。
「ハァ、ハァ、やったぞ!セレ...ン...」
身体中血だらけの青い龍は倒れた。
「やったわね...エンジュ......カッコ...いい....よ」
セレンもその場に倒れる。
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ーーいきなり、大きな音がするかと思えば
ーー血を流して倒れているではないか! 3人も!
ーーどうしたものか、ロウラはいないかのぉ.......
ーーしょうがない....この傷は急ぎだ、早く治してやらないとのぉ
「医恵全 」
身体に白衣を纏った顎から白い髭が伸びている龍は手の平から白調の様々な光の粒を発現させ青い龍と水色の髪の毛に緑色の毛が混ざった少女とあと1人の龍に染み込ませるように癒しの光を注ぎ治していた。
ーー青い龍と少女はここに来ていた患者だな....見覚えあるのぉ
「はて、この竜は誰なのか......」
傷を治していた白衣を纏った龍は、もう1人の見覚えのない、透き通るような白い鱗で覆われた龍を見て思った。
後頭部から水色の頭髪を背中ほどまで伸ばし、片耳に鈴をつけている。
セレン
竜技 叢雲 ムラクモ 竜力 ? 竜能 目模 メモ
エンジュ
竜技 清練 セイレン 竜力 藍擬透 アイギス 竜能 ?




