第20話 稲妻竜と弟子の反撃
ここは外への出口を閉じ込められた龍治院2F、藍色の髪の毛に金髪の混ざった少年ソウとその師である稲妻竜ジルは、1Fで茜色の竜、初恋竜ピアとの交戦に入ったが、ピアが持つ竜能、傷心再生の能力に苦戦し、ピアから逃れようと龍治院2Fへと登って来ていた。
「ジル! あそこに治療室があるよ! 」
階段を登ってすぐ奥の左側に治療室があった。
「あぁ、いくぞ!ソウ! 」
ー水系治療室ー
と書かれた部屋にソウとジルは入った。
ソウはドアを閉めると、ドアに背を持たれるようにして座り込んだ。
「ハァ……ハァ……早く薬草を探さないと 」
ソウは治療室を見渡した。
中央には患者を寝かせるような台がある。
その側には治療器具が並べられている鉄製の台があった。
奥には薬品が入ってるような棚が2ー3列並んでいる。
「ジル、これじゃねーか?薬草 」
ジルがさっき使った薬草と同じものを手に持ちソウに見せた。
「良かった、あった! 」
ソウは、早速『治薬磁』をジルと自分に使い傷を癒した。
「ふぅ、これで血も完全に止まった」
ソウは無事治療を終え、安堵した。
(とりあえず、薬草はもう少し持っておこ......)
「さて、ソウ! そろそろあいつが、ここに来ると思うんだが.......」
「うん、その事なんだけど、ジルさん、もしかしたらだけどあいつにダメージを与える事が出来るかもしれないんだ! 」
ジルは少し嬉しそうな顔をした。黄色い棘が生えた尻尾を少し振っている。
「本当かぁ? どうやるんだよ? あいつ斬っても斬っても斬れねぇからイライラしてたんだよ ……」
ソウは少し呼吸をおいて話す。
「あいつは、"好き"になることでダメージを回復していた。僕の"雷降の"雷"を、ジルさんの怒雷武の"斬撃"を……でも、それを同時に当てる事が出来たら回復は弱まるんじゃないかって、2つ同時には"好き"になれないんじゃないかって 」
「そうか! 効くかはわからないが、やってやるか! 」
ソウは少し心配そうな表情になる。
「でも、ジルさんも雷の巻き添えに.....」
ソウはジルに肩を叩かれた。
「ソウ! 何を言ってる! 俺は稲妻龍だぞ! "雷"なんて効かないぞ 」
ジルはニヤリとして続けた。
「それに……ソウ、お前には"治薬磁"があるんだ!それで俺を治せばいい!」
(やっぱり、雷は効くんだね……でも)
「うん......ごめん、ジルさん……」
「謝る事はないぞ、あいつを倒す! それだけでいい」
突如2人の耳に入ったのは叩かれた激しい破裂音だった。
治療室のドアが爆発によって破壊された。
ジルとソウの2人は爆風で治療室の奥まで吹き飛ばされる。
「やっと見つけたわぁ、何してんのぉ? 傷治してるのぉ? 不便ねぇ、治療室に行かないと治せないなんて 」
破壊されて治療室のドアから見える通路に初恋竜ピアが右裁榴を手に持ち歩いて向かって来る。
「うるさいぞお前、少しは静かに出来ないのか?」
稲妻か《いなづま」竜ジルは虎の様な形相を浮かべ、怒りの眼でピアを睨みつけている。
「あら、ごめんねぇ、"爆発音"は好きじゃないよねぇ」
「そういや、お前、"斬撃"好きなんだよな? 喰らっとけ」
「あらまぁ、軌らてもすぐに治るのに、疲れない?」
「フンッ! ......怒雷武!」
ジルは雷の刃を発現させようとした。
「なっ! でねぇ! 」
ソウは思い出した。
(まさか!)
「あなた、これを"出したかったのぉ"?念のため"好換して置いたわよぉ?」
初恋竜ピアはジルの怒雷武を手にしていた。
「ジル! まずい! 時間差で爆発物がジルの手に!」
「いや、いい! ソウ! あいつを狙え! 」
「でも……」
ジルはピアに走りながら振り返ってソウを見た、ジルの目は確かに言っていた、"信じろ"と。
ソウは、覚悟を決めた。
「雷降!」
ピアの腹部に雷の紋章が命中した。
「また、同じことを? 無駄よぉ、私が"好き"であり続ける限
りどんなダメージもすぐに治るわぁ!」
ピアは向かってくるジルに怒雷武を投げる。
ジルはそれを避けピアに飛びかかり地面に叩きつける。
その時ジルの右手に爆発物である右裁榴が発現。した。
「ウォォォォォ!」
(こいつ、まさか私ごと"爆発"に巻き込むつもりなのぉ!?)
その時、龍治院2Fの通路の壁を雷が砕き、ピアに向かっていった。同時に右裁榴が爆発し2人を激しい痛みが包み込む。激しい衝撃は2Fの床すら砕きジルとピアの2人は1Fへと落ちていった......