第14話 不穏
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「いいか? リィラ、時炎怒は怒りをどれだけ強く放つ事ができるのかっていうのがキモなんだ。」
龍治院から少し離れた崖の上の森で火龍ラヴァはその弟子リィラに竜技を、教えていた。
「私は何かに怒らないといけない?」
リィラはラヴァに聞いた。
「いぃや、 "怒り"っていうのはイメージっていうか、気持ちっていうか、まぁ.......ここに木があるだろ? 来てみろよ」
木はラヴァ3人分の高さだ。
*ラヴァ 235cm
ラヴァは両手を構えた。
「時炎怒ォ! 」
ラヴァは発現した炎で包まれた刃を木に横一文字に振るう。
木は燃える事なく真っ二つに切れる。
ドシンっと激しい音が森中に響き渡る。森の木に止まる小鳥が驚いたのか一斉に空を飛ぶ。
リィラは改めてラヴァの事を凄いと思った。
「リィラもやってみろよ。 」
「ふぅ......」
リィラは深呼吸した。両手を構える。炎の刃が徐々に刃の形になってきた。
.......怒りの....気持ち......イメージ......
リィラは近くのラヴァ2人分の木に近づいた。
炎の刃は少し揺らめく炎で、ラヴァより形は安定していなかったが、はっきり発現していた。
「おっ! 昨日より長くなったじゃねぇか! 」
よし.....今なら!
「時炎怒!」
リィラは木に横一閃に刃を振るった。
木は燃える事はなく真っ二つ......には切れず半分切れたところで止まった。
「真っ二つには......ハァ......ならないわね 」
時炎怒を振り終えた時にはすでに竜技は解除されていた。
「リィラ! やるな! 昨日は2秒くらいしか出せてなかったが今日は7秒くらいは出せたんじゃねか?」
「俺も時炎怒をずっと維持し続けられる訳じゃねぇ、疲れるからな。ここだって思う時に使わねぇとな。 」
昨日朝から夕方までラヴァに教えてもらった時、ラヴァは時炎怒を維持し続けていた。
.....私には体力がないのかな
目の前で時炎怒を素振りしているラヴァを見ながらリィラは思った。
「リィラ、どうした? 続きやらねーの?」
「えっ?」
「修行だよ」
……そうだ、修行を続けなきゃ、くよくよしたって何も始まらない。
「もちろん……ラヴァ! 竜技の組手今日もやってみてもいい?」
「あぁ、いいぜ?」
2人は向かい合い得物を構えた。
「砕練刀」リィラは岩の刃を構える。
「おっ、またそれか? ログの竜技だよな? "真似"やすいのか?」
「うん、時炎怒よりは維持しやすいわ!」
私は幼少の頃から竜技を真似する事が出来た。私の育て親の竜であるリペアの白く輝く刃を私が発現させた時に私は気付いた。
威力や効果は使用者本人よりは劣るが基本的な力は真似する事が出来る。
真似するには両者が承認する必要がある。
「よっしゃ行くぜ! 」
ラヴァは踏み込み時炎怒を垂直に振り下ろす。リィラはそれを砕練刀で受ける。
激しく剣がぶつかり合う音が響く。その後ラヴァの左足に下段蹴りを繰り出す。
ラヴァはそれを見てジャンプでかわし再び垂直に炎の刃を振り下ろす。
リィラはそれを受けずに左に身体を素早く反らしそのまま横に身体を1回転しながら砕練刀を横一閃に振るう。
ラヴァはそれを時炎怒で受け、力で弾きかえす。
弾かれ、後ろに押され気味だったリィラは上半身を後ろにそらしながら砕練刀を解除しその反動を利用して両手を地面につき後方回転を行い体勢を回復し、再び砕練刀を構えた......が
「......!」
リィラの首元寸前に時炎怒が向けられ。組手はそのまま終わりを迎えた。
「......やっぱり、ラヴァは強いね 」
ラヴァは少し頰を緩めて答える。
「リィラに負ける用じゃ、俺は竜技の師にはなれねぇからな」
「また修行に付き合ってね? 」
「おう!いつでもいいぜ! 」
「それにしてもラヴァの竜技って......炎の剣なのに全然熱くないよね?草や 木も燃えないし、間違えて触れたときもやけどするかと思ったけど、熱が出た時のおでこの熱さと一緒くらいだわ」
「まぁ、そりゃ、怒りを竜技に出してるだけだからなぁ、俺の時炎は燃やす剣じゃなくて力がある剣なんだぜ」
(そうかな……力があるのはラヴァの腕力だと思うんだけどなぁ)
リィラは疑問に思っていた。ラヴァと竜技の組手をした時、砕練刀の音を消す力、衝撃を発生させる力、その両方が全く発動しなかったことを。
頭の片隅でリィラは思った。
ラヴァ自身も知らない力があるんじゃないかと。
2人はその後少しだけ修行を続け龍治院に戻った。
龍治院に入って行く2人を紫色の龍が見ていた。
(近くの森で物音がして何かと思えば、とんだ"収穫"だわ、『時炎怒』確かにそういった!そして....)
「部落扉跡何令寸。」
紫色の龍は能力を発現させた。
水状の紫色の雫が激しく震え反応している。
「そうか、岩龍もこの中に、いいわねぇ......」
……龍治院っていうのねぇ、ここは。




