遭遇
ある日、1人の少女は走っていた、雨が降る山の中を。
しばらくすると雨は次第に強くなり、少女は仕方なく、
雨宿りする場所を探す事にした。
木々が生い茂る辺りを見回すと洞窟が目に入ったので少女は急ぎ足で入っていった。
少女は明かりが、かすかに届く入り口で待っていたポーチの中身を漁り出す。
「マッチ点くかなぁ……雨降ってたしなぁ……」
少女はマッチを取り出すと擦った……火が点いた。
周りを照らして見る、一本道の空洞が続いているようだ。
近くに、腕の長さほどある木の枝が2本見つかったので、
1つに火をつけて松明にした。
少し見てみよう。少女はそう思った。
しばらく歩くと、少し広い場所に出た。
不意に何かにつまづき、転んだ。
「あいたた……」
少女は砂埃を払いながら下の辺りを照らす。
最初に見えてきたのは、手の形をした岩のようだった。
「えっ!?……」
しかし尻尾があり、うつ伏せに倒れた体全体に鱗が生えている事に気付いた。
「ねえ……大丈夫?」
少女は揺さぶり起こそうとする。体が少し動いた。
(やっぱり、竜だ)
「うう………」
竜は上半身を近くの壁にもたれるように起きた。少し頭を
抱えていたが、すぐに手を下ろし話した。
「ここは……どこだ?」
少し、疲れている様子で、息が少し荒くなっている。
「洞窟の中よ、わたしもさっき入ってきたばかりなの」
竜は立ち上がる、少女の約1.5倍の背丈がある。
「あなた、名前は?私はリィラよ」
「俺はログ……岩龍だ」
竜はそう言うと辺りを見回していた。
「ねえ?ログはここで何をしていたの?
後ケガとかない?」
「あぁ……大丈夫だ問題ない、ただ……今までのことが
思い出せない……」
(本当かなぁ?)
リィラはログに傷がないか見ていた。
(腕は大丈夫だね……お腹も……足……あっ……)
「ちょっとログ、足から血が出てるわ、見せてくれる?」
擦り傷のようだ、傷は深くないが彼女はポーチの中から包帯を取り出した。
「ちょっと巻いておこうね」
「……あぁ」
岩龍はおとなしく応急処置を受けていた。
「後、今までの事が思い出せないって言ってたけど、名前だけなのかな?他に何かわかることはない?」
リィラはログの足に包帯を巻きながら聞く。
「今覚えているのは自分の名前がログで岩龍だという事だけだ……すまない……ありがとう」
さっきよりも荒かった息が少し落ち着いて来ていた。
「……そう……でも大丈夫よ!''龍治院"に行けば原因が何か分かるかもしれないから、私はここには薬草を取りに来てたんだけど、その後に龍治院に行こうと思ってたから一緒にいかない?足の怪我もちゃんと診てもらったほうがいいとおもうし……」
リィラは明るい声でそう言った。
「……いいのか?リィラ?」
リィラは微笑んで頷く
少女は手を差し出した、岩龍は一瞬首を傾げたが同じように手を差し出して少女の方から手を握り握手を交わした。
「とにかく外に出ましょう、外に出れば何か思いだせるかもしれないし」
少女は来た道を戻ろうと振り返った。
「こっちよ、ログ……えっ……?」
「どうかしたのか?」
リィラが通って来たはずの後ろの通路は壁になっていた……
松明の火が消えた。
リィラの身長160cm。岩龍ログ約240cm。